アートと金魚の競演−−。東京・池袋で金魚をテーマにした「金魚絵師・深堀隆介×サンシャイン水族館 アートと生き物の金魚展」が開かれている。金魚絵師として知られるアーティスト、深堀隆介さんの作品とともに、体長30センチに及ぶ巨大なオランダジャンボシシガシラや伝統的な美しい金魚たちがゆったりと泳ぐ姿を堪能できる。日本の美の結晶ともいえる金魚を描いてきた深堀さんが、生きた金魚と“コラボ”するのは初めてで、大きな池で遊ぶ真っ赤な金魚の背景に、想像上の金魚の作品が浮かび上がる白い空間は幻想的だ。
■生ける「日本の美」金魚と空想上の金魚が泳ぐ空間
日本有数の金魚産地、奈良県大和郡山市のサイトによると、金魚は約2000年前、中国南部地方で発見された赤色の野生のフナを原種に、変種の選別淘汰がされて現在の姿になったという。日本には室町時代の文亀2(1502)年、中国から渡来したというのが定説。当初は貴族などの愛玩動物だったが、明治時代には庶民の間でも流行するようになった。
水族館ならではの展示として、会場は金魚が誕生した歴史や人間との関係を意識した構成になっている。例えば、「チョウテンガン」という金魚は、目が上を向いているのが特徴で、ガラスの水槽がない時代、水瓶などで飼われていた金魚が水面からのぞくように愛でられていたことがわかる。この他、体長30センチに及ぶ「ジャンボオランダシシガシラ」という巨大金魚も展示され、人気コーナーになっている。
今回、生きた金魚たちとコラボしているのが、金魚を描いてきたアーティスト、深堀さんだ。2000年、スランプに陥っていた時に飼っていた「和金」という種類の金魚に癒され、その姿を描き始めたことが「金魚絵師」と呼ばれるようになるきっかけだった。
8月4日に会場のサンシャイン水族館で行われたトークイベントで、深堀さんは「真っ赤な背中がなんとも言えず美しく見えた」と語っている。長い歴史を持つ金魚の職人達たちの手が見えたような不思議な感覚だったという。以来、深堀さんは金魚に魅せられ、器の中に樹脂を流し込んでその上に直接、金魚を描くという独自の表現などによる作品を国内外で発表してきた。
「金魚絵師」としての名をはせる深堀さんだが、実在の金魚をそのまま描写しているわけではない。自分自身の内に飼っている空想上の金魚を描いているのだという。会場では、そんな深堀さんの金魚たちが器の中や掛け軸の上で自在に泳ぎまわり、生ける日本の美ともいえる金魚たちと見事な対比を見せている。白い大きな池が配された「白の間」では、深堀さんの作品「雫」と池に放たれた金魚たちが幻想的な空間を生み出し、訪れた人たちを別世界へと誘っている。
「金魚絵師・深堀隆介×サンシャイン水族館 アートと生き物の金魚展」は8月25日まで。
水族館・展望台・プラネタリウム・ナンジャタウン・J-WORLD TOKYO・博物館・展示ホールイベント(有料)のいずれかを利用の場合のみ300円で入場できる(本イベントのみの入場は不可)。