ウクライナ情勢緊迫、ヨーロッパを脅かす新たな冷戦の影

ウクライナ南部のクリミア半島をロシア軍が事実上掌握し、同地域のロシア編入に向けて準備が進められる中、冷戦の再来とも懸念されるロシアと欧米の対立で、欧州はベルリンの壁崩壊以降、最も厄介な事態に直面している。
Reuters

ウクライナ南部のクリミア半島をロシア軍が事実上掌握し、同地域のロシア編入に向けて準備が進められる中、冷戦の再来とも懸念されるロシアと欧米の対立で、欧州はベルリンの壁崩壊以降、最も厄介な事態に直面している。

ウクライナ情勢をめぐる東西の綱引きは既に、制裁と外交のバランスという複雑な問題を投げかけ、同盟国同士の絆を試し、他国への影響拡大や代理戦争突入のリスクを高めた。

カーネギー国際平和財団のロシア担当アナリスト、ドミトリ・テレニン氏はフォーリン・ポリシー誌の中でこの対立を「第2の冷戦」と表現した。

ウクライナをめぐる綱引きが、欧州の安全保障という点で、1991年のソ連崩壊後最大の転換点になると指摘するのはテレニン氏だけではない。

核戦争まで一触即発という緊張状態に陥る、あるいは各陣営で戦力を蓄積させるということを誰も想像はしていないが、安全保障上の問題や世界経済という点で示唆されることは重大だ。

例えばドイツの懸念は、イランの核開発問題、シリアの内戦、アフガニスタンや北朝鮮問題でロシアが欧米諸国との協力を拒む、というものだ。

<大き過ぎるウクライナ>

欧州の中核国であるドイツがロシアに対する外交上の特別な影響力を持たず、双方の言語を解するメルケル独首相とロシアのプーチン大統領の間でも調整が上手くいかないと分かったことは注目を集めた。

2008年のロシアによるグルジア侵攻では、グルジア側が先に攻撃を仕掛けただけでなく、状況にほとんど変化がなかったこともあり、世界的な影響は軽微だった。

ドイツ・マーシャル基金の大西洋担当シニア・フェロー、ConstanzeStelzenmueller氏は「ウクライナは違う。境界線上にあり、大き過ぎる」と指摘。

約6200社のドイツ企業がロシアで事業を展開し、天然ガス供給の40%をロシア産に依存しているため、経済上の結び付きは強いものの、Stelzenmueller氏は「断固とした姿勢で臨むことで、(ドイツにとって)予想外に前向きな結果が得られる」との見方を示した。

ロシアはドイツにとって11番目の貿易相手で、順位はポーランドよりも下だ。ドイツの通商関連団体は先週、2国間の通商対立はドイツにとって、企業に悪影響が及ぶ程度だが、ロシア経済にとっては根幹を揺るがす問題だと指摘した。

(Paul Taylor記者;翻訳 青山敦子;編集 宮崎亜巳)

[ベルリン 17日 ロイター]

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