親ロシア派がウクライナ軍装甲車を手中に 政府は東部の事態を掌握しきれず

親ロシア派勢力による行政庁舎などの占拠が続くウクライナ東部で16日、スラビャンスクでウクライナ軍の装甲車6台が分離派の手に落ちた。
Reuters

親ロシア派勢力による行政庁舎などの占拠が続くウクライナ東部で16日、スラビャンスクでウクライナ軍の装甲車6台が分離派の手に落ちた。

ウクライナ政府は前日から軍を投入して強制排除に乗り出しているが、政府側が事態を掌握しきれていないことが浮き彫りとなっている。

装甲車にはロシア国旗が掲げられ、群集の「ロシア、ロシア」との掛け声のなか、スラビャンスク市内に入った。これらの装甲車が親ロシア派勢力により強制的に奪取されたのか、ウクライナ軍の兵士が自主的に明け渡したのかは、現時点では不明。

ウクライナ政府は配備した装甲車のうち6台が分離派の手に落ちたことを確認。車体に記された番号から、これらの装甲車がウクライナ政府がクラマトルスクの奪取に向け配備したものであることが、写真で確認された。

装甲車は16日早朝、ウクライナの国旗を掲げ東部のクラマトルスク市内に入ったが、その後、これらの装甲車のうち数台がロシア国旗を掲げて、クラマトルスクから約15キロの距離にあるスラビャンスクに入るのが目撃された。

6台の装甲車のうち1台を警備していた兵士はロイターに対し、ウクライナ軍の第25落下傘部隊に所属していたと明らかにした。同部隊はウクライナ政府がスラビャンスクとクラマトルスクを占拠している親ロシア派勢力の強制排除に向け配備した部隊。この兵士は「われわれは自国民に対し銃を向けない」と話しているという。

分離派の広報担当者、および地元住民は、ウクライナ軍の兵士は分離派との話し合いの後、自主的に装甲車を明け渡したとしている。

ウクライナのヤツェニュク首相はこの日、ロシアが秘密裏にウクライナで独立派を組織しているとの認識を示し、「ウクライナにテロリズムを輸出」していると非難。

北大西洋条約機構(NATO)は、ロシアはウクライナとの国境付近に4万人規模の兵力を配備しており、数日以内にウクライナ東部を占領することができるとしている。

ただ16日はウクライナ東部で目立った騒乱はなかった。

緊張が高まるなか、ロシア、ウクライナ、米国、欧州連合(EU)は17日にジュネーブで外相級会合を開き、事態妥結に向けた糸口を探る。危機発生後にウクライナとロシアの外相が顔を合わせるのは、今回が初めてとなる。

17日にはロシアのプーチン大統領が1年に1度の国民との対話を図る記者会見を実施。ロシア政府がウクライナにどの程度干渉する意向を持っているのか手掛かりが示される可能性もある。

[スラビャンスク/クラマトルスク(ウクライナ) 16日 ロイター]

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