イスラム国が1日で3億円稼げる理由 「史上最も裕福なテロ集団」の実態とは

アメリカの情報当局者はイスラム過激派組織「イスラム国」が1日で300万ドルもの収益を上げており、同団体が史上最も裕福なテロリスト集団となっていることを明らかにした。
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アメリカの情報当局者はイスラム過激派組織「イスラム国」が1日で300万ドル(約3億2000万円)もの収益を上げており、史上最も裕福なテロリスト集団となっていることを明らかにした。

「カリフの地位を保持するには金がかかる」。ある当局者がアメリカの放送局「NBC」の取材に答えたように、イスラム国は何が何でも金を必要としているという。イスラム国は、武装集団に資金提供し、武器と食糧を供給しなくてはならない。また、同集団は殺害された民兵の遺族に恩給を与えており、奪取した領地の支配にかかる費用も負担しなくてはならない。

イスラム国の収入源は、次の通りである。

1. 裕福な寄進者

シリアのアサド大統領に反乱したスンニ派武装集団に強力な支援を行ったのは裕福な支持者たちであったが、シリアで戦っている他の過激派同様、イスラム国も当初は彼らからの資金を頼りにしていた。

シリアの過激派への資金提供の大半が、湾岸のアラブ諸国である。裕福な個人の寄進者によって集められた何百万ドルもの資金がトルコ・シリア国境にいる反政府派の武装集団の手に渡っている。サウジアラビア、カタールとクウェートの政府もまた、アサド政権と戦うスンニ派武装集団への支援として極秘に何百万ドルも提供している。

カタールの英国王立防衛研究所長官マイケル・スティーブンズはBBCのインタビューに答え、イスラム国に直接資金を提供する個人寄進者とは異なり、湾岸諸国の政府はヌスラ戦線、タウヒード旅団、アーラル・アル・シャム、そして ジャイシュ・アル・イスラムなど、イスラム国以外のグループを支援しているという。

しかし、ここ最近こうした武装集団にいた兵士の一部がイスラム国に合流しており、中にはイスラム国に組み込まれた武装集団もあるという。つまり、湾岸諸国からの資金は間接的にイスラム国に渡っていることになる。それでも、こうした献金は今やイスラム国が保有する資産のごく一部にすぎないとスティーブンズ氏は言う。過激派は、その収益のほとんどを支配下の領地から得ている。

2007年3月7日撮影。クウェート市のシンボルとなっている「解放タワー」の背後に地平線へ沈む太陽を写している (ROMEO GACAD/AFP/Getty Images)

2. 略奪

6月に大規模な攻勢に出て以降、イスラム国はイラクとシリアでほぼイギリスと同じ範囲の領土を占領した。AP通信によれば、過激派は銀行や軍事施設から何百万ドルもの現金やその他の金品を略奪したという。

「イスラム国の現金収集活動は、まるでマフィアのようだ」。先週、あるアメリカの情報当局者はAP通信に対してこのように述べた。「イスラム国は組織化・体系化されており、脅迫と暴力による強制力がある」。

3. 密輸と税金

イスラム国は、制圧した地域から税金も取り立てている。アメリカの超党派組織「外交問題評議会」は、イスラム国が6月にイラク第2の都市モスルを占拠する前から、大小の企業に対し1月あたり800万ドル以上の税金を徴収していたと推定している。

また、イスラム国は不正な古物取引によって何百万ドルも稼いでいる模様だ。イギリスの新聞「ガーディアン」は6月、イスラム国がシリアのある地域で、最も古いもので8000年前の骨董品を販売し、少なくとも3600万ドルを得ていたと報じた。ニューヨークタイムズの論説によると、過激派が現地住民に古代遺跡の発掘現場で品物を掘り起こさせて取引し、収益を上げているという。

4. 石油

現在のイスラム国にとって、最大の収入源は石油のようである。イスラム国は、シリアとイラクで占領した12カ所の油田から原油を汲み上げている。彼らは、その原油を直接販売するか、低品質の燃料を生産するために小型精製所へと送る。これがその後、何十年も利用されてきた密輸ルートを介して国境の先へと運ばれ、トルコの闇市場で低価格で販売されるか、シリア政権に販売される。

カタールにあるブルッキングス研究所ドーハセンターで客員研究員を務めるルアイ・アル・カティーブはニューヨークタイムズに対し、現在イスラム国の支配領域内で日に 25000 から 40000 バレルを生産していると述べた。これは闇市場に約120万ドルの利益をもたらす。

2013年10月20日に撮影。豊富な石油を抱えるラムラン市近郊の油田にある石油精製所の残骸から、煙が上がっている様子。シリアクルド系の都市デリック近郊 (FABIO BUCCIARELLI/AFP/Getty Images)

5. 誘拐と人身売買

イスラム国は、人身売買と身代金の強要によっても数百万ドルの利益を上げているようだ。 AP 通信によると、誘拐した女性や子供の一部を同グループが奴隷として売り飛ばしていると伝えた。

過激派は、一部の人質の親族や政府から数百万ドルの身代金を受け取っている。アメリカとイギリスが、市民を解放させるために身代金を支払うことはないと公言する一方で、ヨーロッパのなかには、莫大な身代金を誘拐犯に支払っている国もある。アメリカのある当局者はNBCに対して、ヨーロッパの国が身代金として支払った金額は、おそらく数百万ドルだろうと述べた。

English Translated by Gengo

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