同性婚「許可証」発行を拒否した役人を収監 本当の狙いは何か

デービス氏は、同性婚を認めない保守的なキリスト教の一派の熱心な信者だ。
This Thursday, Aug. 3, 2015 photo made available by the Carter County Detention Center shows Kim Davis. The Rowan County, Ky. clerk went to jail Thursday for refusing to issue marriage licenses to gay couples, but five of her deputies agreed to comply with the law, ending a two-month standoff. (Carter County Detention Center via AP)
ASSOCIATED PRESS
This Thursday, Aug. 3, 2015 photo made available by the Carter County Detention Center shows Kim Davis. The Rowan County, Ky. clerk went to jail Thursday for refusing to issue marriage licenses to gay couples, but five of her deputies agreed to comply with the law, ending a two-month standoff. (Carter County Detention Center via AP)

同性婚に反対する宗教観を持つことを理由に「結婚許可証」の発行を拒否していた、アメリカ南部ケンタッキー州ローワン群のキム・デービス書記官が9月3日、法廷侮辱罪で収監された。同性カップル4組がデービス氏を同罪に問うよう、連邦地裁に申し立てていた。ロイターなどが報じた。

デービス氏は、同性婚を認めない保守的なキリスト教の一派の熱心な信者。連邦最高裁判所の判決に従わず、結婚許可証の発行を拒むデイビス氏が上告したことを受けて、裁判所はデービス氏の職場への滞在を拒否した。だが、デービス氏は、職場にとどまりカップルたちを追い払い続けた。

デービス氏は1日、地裁の法廷で、誰の許可の下でこのようなことをしているのかと聞かれたとき「神の権限で拒否する」と主張。弁護士を通して「神の定義に反する結婚の許可証に、私の名前が、あらためて記されるのは私の道義心に反する」と声明を発表するなど、命令に従わない姿勢を示したため収監が決定した。4日、副官によって同性カップルらに結婚許可証が発行された。

ハフポストUS版のゲイ・ボイス編集長ミケランジェロ・シニョリは、今回の騒動について「過激な宗教論者のわざとらしい演出に、いちいち人質をとられるわけにはいかない」としながらも、「しかし、デービス氏と彼女の代理を務める反同性愛を掲げる法律団体の弁護士を止めることはできないだろう」とブログを寄せた。デービス氏の狙いは何か。以下に、シニョリのブログを抜粋して紹介する。

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デービス氏は、自分と仕事が危険にさらされることへの覚悟ができている。彼女を支持している同僚も大儀のために「死ぬ」覚悟ができているのだ。(中略)彼女たちはアメリカ全土の宗教的保守派(彼女が負う罰金のために支援を募ることを厭わない人間たち)を刺激することを目的にしている。これらは、福音主義の有権者の活動を活発にさせる要素を共和党に与えるだろう。

ケンタッキー州の大統領候補である共和党のマット・ベヴィン氏は、すでにデービス氏の擁護にまわり、対抗相手である民主党に対し「自分と同じ行動を取っていない」と攻撃している。共和党の大統領候補は、マイク・ハッカビー氏から、テッド・クルーズ氏、ジェブ・ブッシュ氏、スコット・ウォーカー氏にいたるまで、デービス氏のような個人が「宗教の自由」を掲げて戦うことに支援を表明してきた。

今、すべてのアメリカ人が、LGBTへの憎悪や、そう考える人たちが何を意気込んでいるのか知る時がきたのだ。

私の友人は、職場を退去させられたデービス氏に対する「世間の目」が、 LGBT を支援する側にとってあまり良い状況ではないと語った。同性カップルが座り込みを行い、その場で逮捕されることで、本当に迫害されている人々が誰かを示したほうが良かった、と。

また公民権運動のときは、軽食用カウンターに座り込んで逮捕された人々が、差別される側の人間であったことを指摘。あの座り込みは、差別をさらに世間に知らしめることになり、レストランのオーナーら事業主の同情を呼ぶことになった。

公民権運動の前に、人種と宗教の少数派のために起きた運動のすべてが、1964年の公民権法につながった。今では、国が同性婚を認めているのだ。だから、アメリカ人がデービス氏の存在を知ることで、(反同性愛の)世論の巻き返しを招くのではないかと懸念するべきではない。たとえ彼女の支持者が活動したとしても、世論が逆転することはないだろう。

私たちがひるんでしまうことは、偏見を持った頑固者たちをさらに勇気づけ、さらなる組織力を持つことにつながる。私たちが弱みを見せると、彼らは足がかりを掴んでいく。アメリカ人の多くは、これが差別であると知っているし、彼らはLGBTの人たちと心をともにしている。私たちは足場を強く固めて、あらゆる場所で、完全なる平等を求めていかなければならない。

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