韓国のソウル市は、市役所本庁舎や区役所など、公共機関の庁舎や地下鉄の駅などに設置された自動販売機で、炭酸飲料の販売を段階的に禁止することを決めた。炭酸飲料を販売する自販機には「健康への危険性」を知らせるステッカーを貼り、炭酸飲料を販売しない自販機には「健康自販機」ステッカーが貼られる。
ソウル市のキム・チャンホ市民健康局長は10月19日「炭酸飲料が肥満、糖尿病、骨粗鬆症を誘発するなど、市民の健康を害すると判断した」と述べた。「子供や青少年の炭酸飲料摂取率は高く、成人の慢性疾患の原因になりうる。今後、炭酸飲料を提供する飲食店にも積極的に同調を呼びかけ、官民一体で市民の健康増進に寄与する契機となることを期待している」とも話している。
とはいえ、唐突な施策には様々な疑問もある。
■実効性は?
ソウル市は、炭酸飲料を公共機関の自動販売機だけで制限するもので、売店やコンビニエンスストアなどでの販売まで禁止するわけではない。
スーパーやコンビニなどでいくらでも炭酸飲料を購入することができるため、政策の実際の効果というより、「ソウル市がこのような政策を(韓国で初めて)施行する」という象徴的な意味合いが強い。
中央日報によると、今回の措置は、市役所と区役所、出張所などソウル市内の公共機関に設置された自動販売機549台に適用される。
そのうち、ソウル市が直営で運営する自動販売機は58%の320台。残りの民間委託の自販機の場合、ソウル市は契約更新の時点から販売を制限する計画だ。
ソウル市内を走る地下鉄1〜8号線に設置された自動販売機434台にも2016年から適用されるが、民間企業が運営する9号線に設置された自動販売機93台は「勧告」対象で「強制」対象ではない。
■選択権の侵害か?
炭酸飲料の販売禁止が「個人の選択の権利を過度に侵害する」という批判も避けがたい。
似たような議論は、アメリカでも起きたことがある。
ニューヨーク市は2013年、市内の劇場や映画館、劇場などで16オンス以上の炭酸飲料の販売を禁止しようとした。しかし、施行前日、ニューヨーク州の裁判所が「禁止は越権行為」と禁止措置の差し止めを命じた。当時のマイケル・ブルームバーグ市長は控訴したが、判決は覆らなかった。「法が定めた権限を超えている」という理由からだ。
■そもそも、その根拠は?
一般的に「炭酸飲料は健康に悪い」とよく言われるが、健康にどのように悪く、販売禁止までしなければならないほど深刻な水準なのか。
韓国紙ハンギョレは「ソウル市が提示した根拠は、世界保健機関(WHO)が2004年に発表した『炭酸飲料の過剰摂取が糖分を過剰摂取につながり、肥満の原因になり、慢性疾患の危険性を高める可能性がある』という警告だけだ。ソウル市民が他の都市の住民よりどれだけ炭酸飲料を多く摂取しているかの調査はされていない。水のように炭酸飲料を飲むアメリカと韓国の食文化の違いも大きい」と指摘している。
この記事はハフポスト韓国版に掲載されたものを翻訳しました。
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