地球に希望をもたらすコスタリカ。グリーンエネルギーの先導役

グリーンエネルギーの先導役は世界中で出現している。再生可能エネルギーへの転換に向けた、教訓やひらめきが、開発途上の1つの中米国から得られたことは少し意外な事実だ。
ESTEBAN BERMUDEZ FORN

グリーンエネルギーの先導役は世界中で出現している。スカンジナビアの小島から日本のリゾートタウンバーモント州バーリントンのような先進国の飛び地までだ。しかし、再生可能エネルギーへの転換に向けた、教訓やひらめきが、開発途上の1つの中米国から得られたことは少し意外な事実だ。

200近い国家が12月初め、パリで地球の気候を破壊する化石燃料から脱却すると誓った時に、一部の専門家によると、コスタリカには壊滅的な気候変動を避けるための主要な対策があり、その実現性と実用性を証明する道を既に着々と進んでいた。

2015年にコスタリカで生産されたエネルギーのほぼ全て(12月17日現在で99%)が再生可能資源から得られたものだ。公式データによると、そのうちの285日間は、完全にこの中米の小国でのエネルギー生産で、化石燃料の使用はゼロだった。(同国の道路は、世界の多くの国同様、未だに化石燃料を大量に費やす自動車で溢れている)。

3月には、電力供給を再生可能エネルギーのみで賄う世界最長の記録を破った。実に75日間だ。コスタリカ住民にとっては電気代が下がるという効果もあった。

「最近採択された気候に関するパリ協定は強いメッセージを発信した。つまり、今世紀中に気候安全保障を実現するつもりなら、世界は化石燃料から脱却する必要があるということだ」。コスタリカに拠点を置く環境団体ニベラの事務局長モニカ・アラヤ氏はハフポストUS版へのメールでこう述べた。「コスタリカはクリーンエネルギーへの転換において先駆者となれる立場にある」。

アメリカエネルギー省に属する国立再生可能エネルギー研究所のアンドレア・ワトソン課長も、これが世界の進むべき正しい道の可能性を示した「断固たるメッセージ」であるという点で賛同した。

同氏はまた、コスタリカの取り組みは、パリ協定に含まれる重要な要素を説明する良い例だと指摘した。すなわち、国ごとの能力や事情に基づく「差異ある責任」だ。結局、そこが決定的なポイントとなり、第21回締約国会議(COP21)に参加した195カ国全ての同意をもたらすことになった。

「協定の狙いは、全ての国がここまで排出を削減しようというものではない。また、全ての国が再生可能エネルギーに転換しなければならないというものでもない」。ワトソン氏はこう話した。「むしろ、全ての国がそれぞれに即したやり方(自国と自国の開発目標にとって最も効果的なやり方)で再生エネルギーに関する意欲的な目標に向かいましょうということだ」

「その考えとしては、道はあるということだ。コスタリカがそれを実証してきた」。同氏はこう付け加えた。

コスタリカの個別の取り組みは、何十年も前に豊富な再生可能エネルギー源への投資から始まった。

同国の大規模な河川の水系と大雨は、水力発電がエネルギーを生成する上で確固たる基盤になることを意味していた。地熱と、勢いを増している風力も、今では重要なエネルギー源となっている。

川は流れ続けるものなので、水力発電は、再生可能エネルギー源の中でも予測可能なものとなっている。風は常に吹くとは限らないし、太陽は常に輝くとも限らない。しかし、気候変動自体が洪水と干ばつの繰り返しで、水力発電への信頼を傷付けてしまう恐れがある。チリのような近隣国では、氷河の融解も将来の水力発電の脅威となっている。

「中南米諸国のほとんどは依然として電力使用が増えている」。世界銀行グループの国際金融公社で中南米のインフラ担当地区長のガブリエル・ゴールドシュミット氏はこう述べた。

こうした国では開発が連続しているため難しい判断を迫られている、と同氏は話した。長年需要に応じ、電力不足を補うために水力発電を拡大することは、例えば、水の流れが少ない時、環境を破壊したり、野生動物に影響を及ぼしたりする恐れがある。ゴールドシュミット氏は「大規模な水力発電所を設置できるような場所は既にない」と指摘、「新しい場所への設置は環境面と費用面でより難しくなっている」。

他の再生可能エネルギー源を導入することが不可欠だ。この数年だけでも、風力やソーラーといった代替エネルギーの費用対効果が向上した。コスタリカとアメリカなどを含む他の国々が(気候に関するパリ協定に基づいて)炭素排出量の削減計画の見直しを続けているが、エネルギー貯蔵などの技術革新や安価になった再生エネルギー、そして今やパリからのもうひと押しのお蔭で、選択肢がさらに広がった。

コスタリカの水力発電同様、アメリカでは風力とソーラーが大きな可能性を示している(特に中部と南部の州)。「ユタ州とネバダ州の一角を使えば太陽光発電で全米に電力を供給出来る可能性がある」。テスラのイーロン・マスク氏が先週のカンファレンス中に述べたと伝えられている。

「未来はとても期待が持てそうに思える」。ゴールドシュミット氏はこう述べた。

もちろん、ほぼ化石燃料を使用しない発電を達成しながらも、コスタリカでは依然として環境を汚染するエネルギーを大量に使用している。コスタリカの車やトラックの大部分が石油燃料で走っている。これが次の課題だとアラヤ氏は指摘した。

「政府は、公共バスと一体化できる電車の建造を約束している。また、新しい法案の一部として、ガソリン車から電気自動車への切り替えをスタートさせる提案が議会に出された。その狙いは、電気自動車の価格を下げるための奨励金を消費者に提供することにある。この提案には、空気の質が改善することを含め、さまざまなメリットがある」。アラヤ氏は述べた。

2014年の世論調査によると、きれいな空気はコスタリカ人の環境上の優先事項の第1位だ。また、同調査ではコスタリカ人の大多数が、風力や地熱、水力といった再生可能エネルギープロジェクトを支持していることがわかった。

実際、コスタリカで風力に反対する勢力が先進国に比べて少ないのは、おそらく高くそびえる風力タービンが、アラヤ氏の想像では、「近代化の象徴」だからだ。

この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。

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