2016年03月31日 23時00分 JST | 更新 2016年04月08日 14時09分 JST

負の感情をポジティブに変えると"運命も変わる" 〜マタハラNet代表・小酒部さやかさん

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働く女性が出産や妊娠をきっかけに、職場で嫌がらせをされたり、解雇や降格などの不当な扱いを受けたりする「マタニティ・ハラスメント」(マタハラ)問題。

この問題に向き合い、解決することですべての人の働き方の改善を目指す「マタハラNet」の代表を務めるのが、小酒部(おさかべ)さやかさんだ。日本の女性たちが直面している問題に果敢に取り組み、2015年3月に、米国務省の「世界の勇気ある女性賞」を受賞した。

今回、スキンケアブランド「SK-Ⅱ」が展開する、人生を前向きに切り開く全ての女性たちを応援する新キャンペーン『運命を、変えよう。〜#changedestiny〜』の動画に登場する小酒部さやかさんに、インタビューをする機会を得た。彼女の人生を変えた「運命」とはなんだったのだろう?

自らが経験した壮絶なマタハラ被害を糧に、日本ではマタハラの「マ」の字も聞き慣れなかった2014年にマタハラNetを設立。現在に至るまで、自分の運命を切り開いていった彼女の強さを探る。

激務の中、2度の流産…。業務改善はされず


彼女がマタハラを受けたのは、契約社員として雑誌編集業務をしていた前職時代。激務だったという職場では、彼女しかその業務を把握しておらず、彼女が休めば他の誰かにしわ寄せがくる。フォローをした人に相応の評価や対価の分配もない。「仕事を続けていく上では妊娠という“問題”は起こせない……」そう思い込まされる職場の環境だったという。

一度目の流産は妊娠していることさえ、会社に告げることができなかった。さらにその報告をすると、ねぎらいの言葉ではなく「あと2〜3年は妊娠なんて考えなくていいんじゃないの。今は仕事が忙しいのだし」と言われた。

そして、小酒部さんは2度目の流産を経験することに。上司に業務改善を求めたが聞き入れてもらえず、返ってきた言葉は「業務の改善をしなくても、お前ひとりで仕事ができているじゃないか。周りが不安がることを言うな」というものだった。

「当時浴びせられた上司の言葉に毎日泣いてばかりいました。そもそも流産をしたことで命をなくしてしまった喪失感から自分を責めていたので、本当に辛かったです」。

法律よりも、古い慣例が優先されると悟った


小酒部さんは「『なぜこんな目に遭わなければいけないんだろう』と、悲しみから、激しい怒りに変わっていきました」と当時を振り返る。そして自身が受けたマタハラ問題の解決の糸口を探そうと、厚生労働省の労働局雇用均等室へと相談、そして最終的には弁護士に相談し労働審判へと至った。

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しかし労働審判の中でも理不尽なことや、さらなるセカンドハラスメントが待っていた。

「当時、日本では常識や法律よりも慣例が優先されていることをまざまざと見せつけられました。働きながらも子どもを持ちたいという女性たちから、なかなか声が上がらない体制が当たり前になっているということに気付きました」。

日本では妊娠を理由にした解雇は違法であるにも関わらず、違法行為の罰則がなく、懲罰的慰謝料もない。労働審判が終わって低い解決金を受け取っても、心と体に傷を負った小酒部さんの中でわだかまりはしっかりと残っていた。

「ふたつの命に感謝」、負の感情をポジティブに


しかし小酒部さんは、負の感情は自分でしか取り除けないという結論に行き着いたのだという。「怒りで眠れなかったですし、頭にも心にも怨念のようなものがありました。でも、相手を攻撃しようと思ったら自分に罪悪感が向いたんです。『私は今、なんて酷いことを考えたんだろう。自分にこんなおどろおどろしい感情があるなんて』と。そうなった時に、まず嫌なことは考えないで、自分のゴールや目標をイメージし、なりたい自分に向かうしかないと気づきました」。

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さらに、お腹に宿った幼い命たちも、彼女に目に見えない力を与えてくれた。

「人は自分ひとりでは難しいことも、誰かのため、何かのためだと物凄い力を発揮すると思うんです。私にとっては、なくした二つの命がそうでした。あの時、私の体には確実に子どもたちがいました。あの子たちの存在を無駄にするなんて耐えられなかった。絶対にポジティブな方向に持って行こうと思いました。昔は思い出すことさえとても辛かったのですが、今ならあの流産には意味があったと自信を持って言えます。あの子たちにちゃんと感謝できるんです」。

心も体も傷つき疲弊した小酒部さんの運命を変えたのは、怒りや憎しみ、辛い経験といった負のエネルギーもすべて人生の糧に変えること。そして目を背けず、自分自身を肯定してあげることだったという。

同じ境遇で苦しんでいる女性たちを救い、全ての人の働き方を見直したい。こうして自分を覆っていた真っ黒い殻を自らの力で破った小酒部さんは、マタハラNetの代表として新しい運命を切り開いていく。

「怒らない」をモットーに、自分がサンドバッグになると決意

マタハラNetを立ち上げた当初、女性からのバッシングがとても強かったのだそうだ。

「専業主婦の方からは『子供を預けて働きたいなんて子どもが可哀想。親失格だから流産したんだろう』といった声が寄せられました。一方で、結婚・出産をせずに働く女性たちからは『結婚や妊娠を諦めて働いている女性もいる。あなたのせいで女性が全員ワガママだと思われて迷惑』といった批判がありました。産休や育休だけでなく、介護休や彼らをフォローする人たちすべての働き方改善に繋げるつもりなのに、自分たちの権利を求めているだけと思われてしまっていたんです」。

そうしたバッシングを受けても、小酒部さんはメディアに出続け、マタハラ問題を訴求していくために自分がサンドバッグになろうと決意した。

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被害を怒りまかせで糾弾することで逆にこちらが加害者になることを自身の経験で理解していた。そのためマタハラNetは「怒らない」をモットーに、バッシングも貴重な意見として参考にし、論理的に話して手を取ってくれる人を広げているのだという。

「怒りは我を忘れさせるし、正論を言っていたとしても怒っている人には誰も寄り添えない。そんなことが上司と戦ったあの辛い経験で勉強になったんです」。

誰にも怒らず誰をも僻まず、冷静に出来事や経験を糧にする。そんな小酒部さんの姿勢が実った出来事もあった。

「以前、メディアで私が『妊娠は女性にとってハッピーなこと』と言ったら『世の中には妊娠できない女性もいるから配慮しろ』という怒りのメールがきたんです。『貴重な意見をありがとうございます』と対応したらその後、私に子どもがいないことを知ってその方からお詫びのメールをいただきました。理解してくれる人はいる。頑張ってきて良かったなと思いましたね」

人生に無駄はない。運命を変えるのは自分次第

マタハラNetを立ち上げた数か月後には、妊娠を理由に降格されたことは男女雇用機会均等法に反するとして、広島県の病院に勤務していた女性が最高裁で逆転勝訴した。

この一件で「マタハラ」問題は一気に顕在化。その年の12月にはユーキャン新語・流行語大賞TOP10に「マタハラ」がランクインし、昨年3月には米国務省の「世界の勇気ある女性賞」を日本人として初めて受賞。日本政府のみならず、世界中が注目する女性へと飛躍した。

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「広島の女性との出会いと、全国から寄せられる被害相談、応援などで『私は一人じゃないんだ』と思えたことはとても大きかったですね。上司や会社を正しい方向に持って行こうとして、一対一で闘っていた前職時代が一番どん底でした。自分で責任が取れてやりたいことをやっている今が一番楽しいです」

2度目の流産を3年前に経験した小酒部さんは現在、妊娠に向けて不妊治療に励んでいる。あの時、怒りや負のエネルギーをポジティブに転換できたことは大きいと語る。そうでなければ、2度の流産経験がただ苦しいだけの出来事になってしまうからだ。

彼女は「いつも心配しながら、応援してくれた主人には本当に感謝しています」と家族への思いを語った。そして涼し気な笑顔で「本当に人生に無駄ってないですし、無駄にするかしないか、運命を変えるかどうかは自分次第なんですよね」と続けた。

どんなに怒りに満ちて苦しく辛いことも、自分次第で運命を変えるための糧になる。小酒部さんが人生をもって教えてくれるのは、そんな明るい希望だ。

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スキンケアブランドSK-Ⅱは「変わりたい」と願う女性たちに勇気を与え応援していく新キャンペーン『運命を、変えよう。〜#changedestiny〜』をスタートさせた。ここで紹介した小酒部さやかさんを含む、自ら運命を変えた12人の女性たちのストーリーと女優・綾瀬はるかが「自分で決めた道を、信じて進もう」と呼びかけるメッセージ動画を公開中。

きっと運命を変えるヒントが得られるはずだ。女性たちの「運命を変えたストーリー」はこちら

(執筆:石狩ジュンコ)

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