葬列が通る時、モハメド・アリが少年時代を過ごしたグランド・アベニューの家の前の垂れ幕の前を歩く人たち
ケンタッキー州のルイビルで6月10日、世界がボクシング界の伝説モハメド・アリに最後の別れを告げた。アリの故郷ケンタッキー州ルイビルで行われた追悼式典には1万5000人が集まり、さまざまな宗教の様式を取り入れた素晴らしいものとなった。
ルイビルの道に並んだ人たちは、アリ自身が構想した遺体が埋葬されるまでの公開の追悼式典の中、アリの名前を呼び続けた。
「父は若かった時、『ルイビルのダウンタウンのブロードウェイを走っていると、たくさんの人が道に集まって私に手を振ったり、拍手したり、俺の名前を呼ぶシーンをよく夢見ていた。そして俺も手を振ると、突然俺は空を飛んでしまった。俺はずっとこんな夢を見ていた』と言っていました」モハメド・アリ氏の娘、ハナ・アリさんは10日、Twitterにこう投稿した。
子供たちや家族は、ボクシングと公民権運動のチャンピオンを喝采し、アリ氏の葬列は街の中を巡った。その途中ではアリが子供の頃に住んでいた家の前も通った。ハフポストUS版のトラビス・ウォルドロン記者がこの葬儀の模様をTwitterに投稿した。
近所のパークランド・ボーイズ&ガールズクラブの子供たちがアリの名前を呼ぶ。このクラブはアリが子供の時に住んでいた家から1ブロック先にある。
その華麗なフットワークと並外れた知性、そして最後まで社会活動を貫いたことでで知られるモハメド・アリは、6月3日に74歳で他界した。9日の夜にはボクシング界の伝説を悼むために多くの人が集まり、イスラム教に則った告別式が行われた。
10日の追悼式典には、2001年にアリ氏に大統領市民勲章を授与したビル・クリントン元大統領、コメディアンのビリー・クリスタル、ニュースアンカーのブライアント・ガンベルの姿もあった。
「私たちの誰もが、アリにまつわる物語があります」と、クリントン元大統領はアリの思い出と、彼が世界に教えたことを思い出しながら語った。「私たちはアリがそうしたように、自分が与えられたものを世界に伝えることで、アリを称えるべきです」
KFC Yum!センターで行われたボクシングの伝説、モハメド・アリの追悼式典でスピーチするビル・クリントン元大統領
アリの娘マリアム・アリさん、ラシェダ・アリ-ウォルシュさんも参列した。ラシェダさんは、スピーチの最後をこう締めくくった。
「お父さん、愛しています。蝶よ舞え、また会う日まで」
ラシェダ・アリ-ウォルシュさん
その他の参列者の中には、ババレリー・ジャネット大統領補佐官の姿があった。ジャネット補佐官は、娘マリアさんの卒業式で葬儀に参列できなかったオバマ大統領とミシェル・オバマ夫人の代理で声明を読み上げた。その中でアリのことを、「ジム・クロウ制度(アメリカ合衆国南部で、人種ごとに物理的な隔離を行った黒人差別の法律)の世界で、声高で誇り高く、気後れすることのない黒人たちの声となった」と賞賛した。
公民権運動の活動家マルコムXの娘アタラ・シャバズさんは、涙をこらえながらアリと父親の関係、またアリが自分自身に与えた影響について力強く話した。
「私の父は、いつか別れが来たら「理解の光の下でまた会おう」とアリによく言っていました。そして私もアリに言わせて下さい。何としても、同じ光の中でまたお会いしましょう」
マルコムX氏の娘アタラ・シャバズさん
モハメド・アリと30年近く連れ添った妻のロニー・アリさんは、自らが尊敬するキング牧師やネルソン・マンデラ氏が信念の下に凶弾に倒れ、捕えられた時に、アリがどのように耐えていたかを話した。またロニーさんは、アリが残した素晴らしい業績を世界に思い起こさせた。
「モハメドの場合は、国家権力と対峙したことです」とロニー・アリ氏は話した。「彼は自分の主義と価値を捨ててまで、国家権力におもねるようなことはしませんでした」
また、ロニーさんはこう付け加えた。
「モハメドはルールが気に入らなかったら、自分でルールを書き換えたのです」
アリの追悼式典では、ステージ上、観衆のどちらにも美しい多様性が見られた。イマム・ハムザ・アブドゥル・マリク師によるコーランの朗読で始まり、そしてユダヤ教ラビのマイケル・ラーナー氏の力強いスピーチ、先住民族権利活動家オレン・R・リヨンズ氏、キリスト教牧師のケビン・W・コスビー氏と続いた。誰もがアリを称賛し、宗教の壁を超えることの重要性を際立たせていた。
コスビー氏は「ジェームス・ブラウンが『自分が黒人であることを誇りに思う』という前に、アリは『自分は黒人で、美しい』と言っていました」と述べ、アリが黒人と、黒人である自分を強く愛したことの重要性について聴衆に語った。コスビー氏は、アリがアメリカの人種差別の問題をどれだけ熱心に広め、また世界中の黒人に伝えたかったことについて話した。
「アリはあえて黒人の美しさを認めようとしました」とコスビー氏は話した。「アリは、アフリカ系アメリカ人の力と能力を認めようとしました。彼は、アメリカで最も愛されていない人種を愛したのです」
ザ・グレーテストよ、安らかに。
ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。
▼画像集が開きます
【関連記事】