南シナ海で中国が主張する管轄権を仲裁裁判所が否定した裁定について、岸田文雄外相は7月12日、「当事国は今回の仲裁判断に従う必要がある。わが国としては当事国がこの判断に従うことにより、今後南シナ海における紛争の平和的解決につながっていくことを強く期待する」との談話を発表した。産経ニュースなどが報じた。
朝日新聞デジタルによると、この談話に対して中国外務省は「日本は中日関係と地域の平和と安定の大局から出発し、南シナ海問題に介入し騒ぎ立てるをやめるよう望む」と日本を批判するコメントを出した。
また、中国メディアの人民網日本語版は、習近平国家主席が12日、トゥスク欧州理事会議長(EU大統領)らとの会談で、「南中国海諸島(南シナ海の南沙(スプラトリー)諸島など)は古来中国の領土。中国はこの裁定に基づくいかなる主張や行動も受け入れない」と主張したと報じている。
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オランダ・ハーグの仲裁裁判所は12日、中国が「歴史的に権利がある」と主張してきた南シナ海で同国の管轄権が及ぶ境界線「九段線」について、法的根拠がないとする判決を下した。南シナ海での中国の主張を巡って、国際法に基づく判断が出されたのは初めて。フィリピンが2013年に仲裁裁判を申し立て、審理が行われていた。
判決骨子は以下のとおり。
仲裁裁判所の判決骨子
・中国が歴史的権利を主張する「九段線」の法的根拠はない
・南沙諸島に、排他的経済水域(EEZ)が設定できる「島」はない
・岩礁埋め立てと人工島造成は環境に悪影響を及ぼし、国連海洋法条約に違反
(南シナ海:仲裁裁判決 「九段線」中国の権益認めず 法的根拠なし - 毎日新聞より 2016年7月13日)
コトバンクなどによると南シナ海は海上交通の要衝で、石油・天然ガス資源の存在も指摘されている。中国は南シナ海域にある南沙諸島の7つの岩礁で人工島造成を行い、滑走路などを建設。軍事拠点化を進めていると批判されてきた。
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