囲碁プロ棋士が日本製AIに初めて負ける「人間が気がつかない手を打つ」

チェスや将棋に比べても、手順が複雑な囲碁は「人間の最後の砦」だ…。
時事通信社

日本で開発中の囲碁の人工知能「DeepZenGo」とトッププロ棋士の趙治勲名誉名人の第2局が11月20日にあり、「DeepZenGo」が勝った。国内でプロを破るのは初めてのことになる。朝日新聞デジタルなどが報じた。人類はこのまま、人工知能にやられてしまうのだろうか。

人工知能の「DeepZenGo」と、「人類」を背負う趙治勲名誉名人は「囲碁電王戦」で対決している。戦いは、三番勝負。11月19日にあった初戦では、名誉名人が勝ったが、NHKによると、第2局は「DeepZenGo」が戦いを有利に進め、始まって3時間15分で名人が投了した。第3局は11月23日にある。解説は井山裕太六冠、聞き手に吉原由香里六段を迎える。

「DeepZenGo」は国内最強とされ、「ニコニコ動画」運営のドワンゴ、プログラマーや東大の人工知能の研究者らで開発を進めている。過去の棋譜のデータを吸収しながら自己対局を重ねて、人工知能がみずから学んでいく「ディープラーニング(深層学習)」によって、短い時間でどんどん棋力が上がっていくのが特徴だ。

これまで、「DeepZenGo」があらかじめ碁石を3個置くことができる「ハンディ戦」で勝ったことはあるが、正式な勝負で棋士を破るのは初めてだ。

開発チームの加藤英樹さんは「感無量としか言いようがない。ソフトの思考時間を初戦の1.6倍に長く設定して挑んだ」と語った。一方、趙名誉名人は「強すぎますね。人間が気がつかない手を打つ。ソフトが出たら勉強したい」と舌を巻いていた

囲碁電王戦第2局で趙治勲名誉名人(右)に勝った囲碁AI「DeepZenGo(ディープゼンゴ)」開発者の加藤英樹氏=20日、東京都千代田区|時事通信社

囲碁の人工知能は、とてつもないスピードで性能を高めている。2016年3月、Google系の企業がつくった「アルファ碁」が世界最強の棋士の一人と言われる、韓国のイセドル九段を倒した。

朝日新聞(2016年3月13日付)によると、囲碁は、終局までの手順が、チェスの10の120乗、将棋の10の220乗に対し、10の360乗通りあるとされる。

ボードゲーム系の人工知能は、1997年にチェスの世界王者、2013年に将棋のプロ棋士に勝っていたものの、囲碁は手順がややっこしくて複雑なため、「プロに勝つまではまだまだ時間がかかる」「人間の最後の砦」と言われてきた。

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