トランプ氏の発言とツイートが世界的なニュースになろうとしている。そう、全てが。

「この人の言葉は中身がありません」

ドナルド・トランプ次期大統領はこれまで何十年にも渡って問題発言を繰り返している。

これまでは大言壮語を撒き散らしてもほとんど重要視されなかった70歳の男が、一つ一つの発言の意味を分析される立場にある仕事に就いたらどうなるのだろうか?

アメリカと世界が、まさにその答えを知ろうとしている。

過去にドナルド・トランプ次期大統領は記者の身体障害をあざ笑い、全国放送のテレビ番組で自身の性器の大きさを自慢し、政敵(テッド・クルーズ氏)の父親がジョン・F・ケネディ元大統領を暗殺したとデマを流した。大統領選では、トランプ氏が主催していたコンテストでいじめられたと告発した元ミス・ユニバースに対し、「彼女のセックス動画を見るんだ」と、2000万人近いTwitterフォロワーに呼びかけた

まもなく、彼は世界中で最も強力な軍事力を持つ国の最高司令官になる。そこでは彼の発言一つ一つがその意味を詮索され、後世のため正式に記録されることになる。

「彼は何かについて1分間話した後、その反対のことを話してもいいと思っている」と、アメリカ大統領史を研究するライス大学のダグラス・ブリンクリー教授は語った。「世界各国で同じことをするでしょう。そのことに対して真偽を問い正す国もあるかもしれません。核がある世界では恐ろしいことです」

共和党全国委員会(RNC)のある関係者は、トランプ氏の赤裸々なツイートや、その場しのぎのコメントは、現実的なリスクをもたらすと認めている。「いつもカッとなりやすい。場合によってはとても危険だ」と関係者は語った。

社交的なバラク・オバマ大統領は、トランプ氏には潜在的な危険性があると、その印象について語っている。2016年11月14日、オバマ大統領はトランプ氏との会談後、「トランプ氏自身が意識して正さない限り、彼の気質には、自分を不利にするような要素がある」と語った

「候補者として不正確なことや議論を呼ぶようなことを言うこと以上に、アメリカ大統領になったら、より大きな影響を与えることになる」と、オバマ大統領は語った。「世界中全ての人が注目している。相場も動く」

17カ月に及んだ選挙運動中、トランプ氏は扇動的な発言を繰り返した。長年にわたってオバマ大統領はアメリカ生まれではないという虚偽の主張を含む問題発言や、数多くの訴訟を招くことになったビジネス上のトラブルなど枚挙にいとまがない。

彼の不用意な言葉には、共和党全国委員会(RNC)や彼の選挙陣営もずっと手を焼いている。ヒラリー・クリントン氏を抑えて大統領選に勝利した戦略の主眼は、台本にはない発言をほぼ完全に排除することだった。テッド・クルーズ氏の父親がケネディ元大統領の暗殺に関与していると再び発言した2016年7月以降、彼は1月11日まで記者会見を開かなかった。

トランプ氏は2016年11月18日、日本の安倍晋三首相と会談した時、政権移行チームは安倍首相の補佐官に前もって、選挙運動中のトランプ氏の発言を言葉通りにとらえないでほしいと頼んだ

トランプ氏は、自分は不動産王として記者の質問にも即興で答えられると信じて疑わない。しかし次期首席補佐官のラインス・プリーバス氏は、11月22日に行われたニューヨークタイムズとの長時間インタビューに反対していたという。

実際、トランプ氏は以前の立場から著しく脱線した答えをたびたびしている。気候変動については、気候変動は全て中国のでっちあげだという前言を撤回し、気候変動の一部は人的活動に一部関係していると認めた。テロリストの捕虜の拷問については、トランプ氏はオバマ政権で禁止された水責めなどを復活させたいと言っていたが、ジェームス・マティス次期国防長官が、拷問は効果がないとアドバイスして、政策に含めないようトランプ氏に話したと述べた。

ニューヨークタイムズを「宝石だ」と大げさに褒める一方で、それでもトランプ氏に投票しないと言った共和党のケリー・アヨッテ前上院議員を侮辱して恨みを晴らしていた。

選挙運動の最終盤で完全にやめる、あるいは節度を持って使うと言っていたにもかかわらず、トランプ氏の不規則発言はTwitterで拍車がかかった。ニューヨークタイムズとのインタビューの数時間前に、同紙を「経営不振だ」と攻撃し、インタビューでは、自身の基本原則を変えさせようとする間違った信念に基づき、「不正確で、悪意のある論調で」記事にしていると批判した。この発言は、ブロードウェイのミュージカル「ハミルトン」の俳優が舞台上で次期副大統領のマイク・ペンス氏に、「アメリカの多様な価値観を認めてほしい」と直訴したことを、トランプ氏が激しく攻撃した数日後のことだった。

ブリンクリー教授によると、トランプ氏のニューヨークタイムズでの発言は、その瞬間に聴衆の賛同を得たいと思っただけで、それ以上の意味はないという。

「この人の言葉は中身がありません」と、ブリンクリー教授は語った。「彼がどんな行動をとるかその成り行きを見る、そして行動記録から判断しなければならなくなると思います」

トランプ氏の選挙運動に関わったある共和党の顧問は匿名を条件に、「トランプ氏が大統領に就任したら口調やメッセージのトーンを和らげるだろうと信じているアメリカ国内外の人たちは、がっかりすることになる」と語った。

「彼は、自分に適用されるルールを信じないと思います。トランプ氏はこれまでとは違った大統領像を作ることになるだろう」と、その顧問は語った。「これは親から受け継いだものだ。あらゆるルールを破る。それで選挙に勝ったんだ」

ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。

▼画像集が開きます

トランプ氏の歩み

(スライドショーが見られない方はこちらへ)

注目記事