清水富美加の騒動から浮かび上がる芸能人の『働き方問題』とは? 「芸能界は"特別な業界"として放置され続けている」

「社会人経験が乏しい10代の若者が芸能界に飛び込んで、その時の選択が人生のかなりの部分を左右してしまう」。

宗教法人「幸福の科学」に出家した女優・清水富美加さんの騒動をめぐって、芸能界やメディア界隈ではさまざまな議論が広がっている。

特に話題を呼んでいるのは、清水さんの給与だ。「月給5万円」だったという清水さんや教団側の主張に対して、和田アキ子さんや坂上忍さんが出演番組内で、若手芸能人のギャラは低いものだという見解を示した。芸能界は外からはわかりにくい社会だ。タレントや歌手の「働き方」に関する課題が浮かび上がっている。

■「月5万円」発言に対する芸能人の苦言

清水さんは2月17日に発売された告白本「全部、言っちゃうね。」(幸福の科学出版)で、芸能活動期間中に何度も「死にたい」と思った経験があると語り、また、給料が「2014年の途中まで月5万円だった」とも記している。

歌手の和田アキ子さんは、こういった清水さんの主張が紹介された2月19日放送の「アッコにおまかせ!」(TBS系)で、自身のデビュー当時は給料が3万円だったと苦言を呈している。

「3万円で世界に君は出て行くんだって言われて。1万8000円、下宿代で引かれたんだよ?」「どんだけ辛かったか、ホンマに!」と怒り口調で語った。

さらに、この後に紹介されたタレント・坂上忍さんの「若手のギャラなんて微々たるもの」という別のテレビ番組内での発言に対しても同意を示し、和田は「最初はみんなそんなもんでしょう」と話していた。

しかし和田アキ子さんのこの発言を受けて、Twitterなどのネット上では、和田さんがデビューした当時と現代の貨幣価値は異なるのではないか、という指摘が相次いだ。

和田さんは1968年(昭和43年)、18歳の頃にシングル曲「星空の孤独」でレコードデビューしているが、厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、この当時の大卒初任給の平均は3万600円となっている。

また、和田さんがデビューした当時に受け取っていたという給料額は現代の価値に換算すると13万7670円で、単純に比較してみると、清水富美加さんが自身の給料だったと主張している5万円という金額よりも高い。

■芸能界のギャラ相場は、どうなっているのか?

では、芸能界でのギャラ相場は一体どの程度なのだろうか。

和田さんや坂上さんがテレビ番組内で主張したように、「若いうちは安い」のが当たり前なのだろうか。芸能取材が豊富なライターの松谷創一郎氏に話を聞いた。

芸能人のギャラに、相場というのは、おそらくないし、一概には言えません。一般企業でも、業種や会社の規模によって給料は違いますよね。それと同じように、芸能プロダクションによって給料の相場というのは異なります。ただし、基本的に若いタレントは安いギャラでどんどん露出し、ブレイクすれば大きなお金を得るというのは、だいたいどこの芸能プロダクションも大差ないと思います。

芸能プロダクションは、若いときにタレントに投資した額をブレイク後に回収しようとします。一方、タレント側は若いときの育成に不満があった場合、「ブレイクは事務所のおかげ」と思えなくなることもあるでしょう。

■清水富美加の騒動から浮かび上がる芸能人の「働き方問題」とは

さらに松谷氏は、清水さんや教団側が主張している「望まない仕事の強要」や「過重労働」について、芸能人の「働き方」という観点で問題視されるべき事象が浮かび上がると指摘する。

日本国内では「働き方改革」が提唱されながらも、芸能界は「特別な業界」として放置され続けています。日本社会で長時間労働やブラック企業が問題視される中、芸能人の働き方について、連続性をもって論じられることはありません。まるで日本社会の問題ではないように、分断されます。私はそこに強い疑問を感じています。

芸能界は確かに特殊ですが、ある種の代表性・象徴性を帯びる芸能人が、そのような目に合うことを看過することは、日本社会がそれを看過することにも繋がるからです。たとえばタレントが組合に所属するのが一般的になり、給与や働き方に関して団体交渉や契約ができるようにするなど整備できる点はあると思います。

清水さんは著書内で、芸能活動をしていた期間について、精神を削りながら奮闘した7年間だったと振り返っている。

その要因として、ドラマと映画両方の撮影が入っている時はまるまる1カ月間休みがなかったことや、15歳の頃に受けた水着の仕事が嫌でたまらなかったことを一例として挙げている。また、「昔はこうだった」「業界のルールでは当たり前だ」という点だけで、古い慣習を今の人に当てはめる理由にもならないはずだ。そんな風に考えてしまえば、結局何も変わらない。

社会人経験が乏しい10代の若者が芸能界に飛び込んで、その時の選択が人生のかなりの部分を左右してしまう。これは芸能界の持つ大きな問題のひとつです。

なお、清水さんの所属事務所であるレプロエンタテインメントは、書籍内などで言及されている内容について「事実と異なる部分も多々含まれている」とマスコミ各社に送付した声明文で主張しており、書かれている内容の真偽のほどは明らかになっていない。

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