アメリカ国土安全保障省(DHS)は2月21日、ドナルド・トランプ大統領が1月に出した、メキシコ国境での壁建設を柱とした不法移民取り締まり強化の大統領令に基づいた指針を発表した。
強制送還の対象は交通違反や万引きといった軽犯罪まで範囲が拡大され、ほぼすべての不法移民が該当することになる。
「国土安全保障省は今後、送還可能な外国人を階級や区分によって執行を免除することはしない」と、指針には書かれている。
政府は移民・税関捜査局(ICE)が、アメリカの不法移民の居住期間が2年以内であれば迅速に強制送還させる権限を拡大した。指針によると、アメリカは付添人のない未成年者の両親も「密輸業者」として起訴する。
また、指針では国土安全保障省が移民税関捜査局に、業務を遂行するため1万人を追加で雇用するように指示した。
「送還可能な外国人」のうち、犯罪者か容疑がかけられている者をこれまで通り優先して強制送還する。
しかし、移民政策に保守強硬派の多くは、この新指針に落胆している。オバマ前大統領が導入した、若年層向け強制送還延期プログラム(DACA)が継続するからだ。DACAは、幼少期に親と一緒に不法入国した若者は、強制送還を免除されるというプログラムだ
人権擁護団体は、今回の新指針を非難した。
「今回の指針は対象範囲が驚くほど拡大しており、法の支配を放棄するものだ」と、全米移民法センター事務局長のマリエレーナ・ヒンカピエ氏は21日、ハフィントンポストUS版の電話取材に答えた。
「最も懸念されているのは、迅速な強制送還を実施する権限が与えられていることだ」と、アメリカ自由人権協会の弁護士リー・ゲラーント氏はハフィントンポストUS版に指摘した。
「不法移民をシカゴやセントルイス、アメリカのどこからでも追い払うことができる。適正な手続きなど存在しない」
アメリカ自由人権協会は今回の指針に断固反対するという。
「トランプ大統領は最終決定を下していない。裁判所と一般世論は、この反アメリカンドリームが現実化することを許さない」と、アメリカ自由人権協会の「移民の権利プロジェクト」代表オマール・ジャドワット氏は声明で述べた。
トランプ氏はこれまで、大統領選から一貫して不法移民を取り締まると公約に掲げてきた。
人権擁護団体は、移民税関捜査局の不法移民拘束数が急増したと報告した。しかし、移民税関捜査局の当局者は、拘束は「通常の取り締まり」の中で行われたもので、「集中執行」の形で特定の都市で実施しただけだと反論している。
ある人権擁護活動家はハフィントンポストUS版に、「テキサス州オースティンでは、移民税関捜査局の係官が不法移民と疑った車を止め、自宅で拘束し、スーパーマーケット周辺地域を巡回するといった取り締まりが行われていた」と語った。
オバマ政権は原則として犯罪歴のある者から先に強制送還した。21日の指針は、その原則からの完全に逸脱し、不法移民はほぼ全員アメリカから退去させられるものとなる。
この指針では、「送還可能な外国人」のうち犯罪を行ったか犯罪容疑がかけられている者をこれまで通り優先すると示している。この政策はトランプ氏がこれまで発言していたことと矛盾しない。
違法犯罪者の取り締まりは、選挙公約を守っているだけだ。ギャング組織員、麻薬密売人は追放してやる!
世論調査会社「ピュー・リサーチセンター」の統計によると、アメリカに居住する不法移民は2014年、推定1100万人いるとみられる。
トランプ氏2016年11月、CBSの「60ミニッツ」で「2〜300万人を強制送還するつもりがある」と語っている。
国土安全保障省が公表した指針は以下の通り。
ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。
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