トランプ大統領が承認したイエメン掃討作戦、米軍は主だった情報は何も得られなかった

軍は成果を強調するが…。
Getty Images

中東や中央アジアの一部地域を担当するアメリカ中央軍は1月29日未明、イエメンのイスラム過激組織「アラビア半島のアルカイダ」(AQAP)掃討作戦を実行した。

ドナルド・トランプ大統領が初めて承認したアメリカ中央軍の軍事作戦は、9人の女性と10人の子供を含む民間人25人が死亡し、アメリカやサウジアラビアと同盟を結んでいた部族指導者までも殺害してしまう結果となった。掃討作戦の一員だった、海軍特殊部隊「ネイビー・シールズ」のライアン・オーウェンズ特殊作戦指揮官も死亡した。

中央軍のジョン・トーマス大佐はCNNに、「作戦目標は機密情報の収集のみだ」と説明したが、機密情報はほとんど得られなかった。NBCによると、ある政府高官は「今のところ、作戦での押収物から『重要な情報』は、一切集められていない」と語った。

イエメンでは珍しく地上特殊部隊が派遣された今回の作戦は奇襲を狙ったものだったが、現場に派遣された特殊部隊が直面したのは地雷、狙撃兵、そして予想以上に重武装した兵士が防御していたアルカイダの拠点だった。

このような作戦では、最高司令官となる大統領は、シチュエーションルーム(ホワイトハウス西棟の地下にある状況分析室)にいて戦闘を監視をするのが普通だが、トランプ氏はシチュエーションルームにいなかった。掃討作戦が展開されていた時間帯に、トランプ氏の個人Twitterアカウントは投稿やリツイートが続いていた、ハフィントンポストUS版でも、その日のトランプ氏のアカウントは、大統領のテレビ中継についてフォロワーに告知するツイートがあったと報じている。そのツイートはその後削除された。

ホワイトハウスのショーン・スパイサー報道官は、アルカイダに関する情報収集を主な目的とし、作戦は「大成功」だったと考えているという。「我々は、驚くほどの量の情報を収集した。その情報から、アメリカ本土で犠牲者や攻撃の可能性を食い止められる」 と、スパイサー報道官は2月8日の会見で語った。また、国防総省は、今回の作戦で「有益な情報」が得られたと強調した。

スパイサー報道官は2月27日、死亡したネイビー・シールズのオーウェンズ氏について「彼は英雄として命を失った。作戦を通じ、オーウェンズ氏が手助けして入手した情報は、アメリカ国民の命を救うだろう」と称賛した。

しかし、NBCの情報筋は、スパイサー報道官の話を裏付ける証拠は何も見ていないと語った。

CNNやNBCによると、掃討作戦の実際の目的はAQAPの最高指導者カシム・アル・リミ容疑者の拘束、殺害を狙ったものだと言われているが、無傷だったとみられる。

死亡したライアン・オーウェンズ氏の父ビルさんは、作戦を「馬鹿げた使命」と呼び、掃討作戦の調査を求めた。ライアン氏の遺体がドーバー米空軍基地で輸送機から降ろされる時、父親のビルさんとトランプ氏は現場にいて、当初はトランプ氏がビルさんに慰めの言葉をかける予定だったが、ビルさんは拒否した。

「トランプ政権が誕生してから1週間も経っていなかったのに、なぜこの時期に、こんな馬鹿げた作戦を行わなければならなかったのか」と、ビルさんは、マイアミ・ヘラルド紙に語った。「過去2年間、イエメンでは地上部隊は投入されていなかった。米兵の命を犠牲にするような標的ではなかったから、すべてはミサイルかドローンで行われていた。なのに今になって、突然、このような作戦にでなければならなかったのか?」

アメリカ中央軍司令官のジョゼフ・ボテル陸軍大将は今回の作戦を擁護している。ボテル氏はCBSニュースに、作戦は「我々がイエメンで進めている広範な攻撃」の一環だと語った。ボテル氏は、作戦の目的は、突入して情報を収集することだったと述べ、「我々は目的を達成した」と強調した。しかしボテル氏は、収集した情報の種類や量について言及しなかった。

イエメンの掃討作戦は、バラク・オバマ前政権中に計画されていたが、オバマ氏は承認していなかった。

スパイサー報道官によると、国防総省は掃討作戦の調査を進めている。ただし、この調査は人命が奪われたときに行われる標準的な手続きだという。

ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。

▼画像集が開きます

(スライドショーが見られない方はこちらへ)

注目記事