DRESS編集長 池田園子さん
「モテ」「愛され」の次に来るキーワードは? 今の女性向けメディアに読者は何を求めているのか? 10代の頃は『an・an』の熱烈な愛読者で、現在は自分らしく輝きたい女性のためのWebメディアDRESS編集長として活躍する池田園子さんに、女性向けメディアの新たな潮流について話を聞いた。
■「赤文字」「青文字」系に加えて「自立系」が躍進中?
――池田さんがDRESSの編集長に就任されてから1年が経ちます。今の時代の女性向けメディアに読者は何を求めていると感じますか?
「どうすれば今よりも幸せになれるのか」という答えやヒントを求めている気がします。
女性ファッション誌は数年前までは「こうすれば愛される!」「激モテ服はコレ!」といった路線が圧倒的に多かったですよね。「モテ」「愛される」「かわいい」「守りたくなる」がキーワード。
「かわいい」は同性からの目線を意識したり、自分の理想とするスタイルを叶えたりする、どちらかというと攻めの戦略。そこは男性の目を意識していないと思います。
一方、「モテ」や「愛され」「守られ」などは「男性に選ばれて幸せになる」ための、受け身の戦略です。選ばれるように努力を重ねて、どうすれば釣ってもらえるか、そのための方法を知りたがる読者も少なくなかった。
もちろん今も「青文字系」「赤文字系」と言われるそういう雑誌が圧倒的多数派ですが、それらとは完全に別の路線で、「自立系」ともいうべき女性向けメディアが少なからず増えてきたように思います。
仕事やお金など、ひとりで生きていくための戦略について教えてくれる、ちょっとかためな媒体のニーズが出てきているのではないでしょうか。
――池田さんの新著『はたらく人の結婚しない生き方』(クロスメディア・パブリッシング)にも、「どうすれば幸せになれるのか」という問いに対する具体的な提案が書かれていましたね。そのひとつにサードプレイスの重要性も挙げられています。
仕事と家だけだと、どうしても行き詰まってしまうときがありますよね。結婚しないで生きていくのならなおさら、サードプレイスを見つけておくことは大事だと思います。
DRESSでも全国約3万人の女性が参加するリアルコミュニティ「DRESS部活」を主催しており、それも女性たちにとってのサードプレイスになっています。
趣味を楽しむ場や、興味関心があるテーマを学ぶ場など、心地よいコミュニティを見つけておくと自分自身を取り戻せる居場所として機能すると思います。趣味を広げるのが難しかったら、近所に行きつけの喫茶店やバーなどの飲食店をつくるのもおすすめ。ちょっとしたつながりから友達やパートナーが見つかることもあります。
人生って、新しいものとの出会いによって楽しくなる可能性のほうが絶対高いんですよ。未知のものとの出会いって、必ず何かしらの感情が沸くじゃないですか? 合う、合わない、楽しい、嫌い、って。
「行動するのは面倒くさい」と言って何もしなかったら、ずっと平坦なままで動きがない人生になってしまう。もちろん、幸せを実感できているのならそれでいいと思いますが、現状を変えたいという気持ちがちょっとでもあるのなら、とにかく行動してみてください。
今はまだ寒いので、外に出てアクティブに活動するのは億劫……という人もいそうです。春が来たら動こう、くらいの気持ちでいいですから(笑)。
人生の多様な選択肢を読者に伝えたい、と話す池田園子さん
■「男は~」「女は~」という表現はやめていきたい
――DRESSとしてはどのような方向を目指しているのでしょうか。
「生き方の多様な選択肢を見せたい」という思いがベースにあります。
結婚する人生もあるし、独身を楽しむ人生もある、事実婚や別居婚でうまくいっているカップルもいれば、子どもを持たない夫婦もいるよ、という風に、今の時代ではどちらかというとマイナーとされているいろんな人生のパターンを掲げることで、多様な選択肢があるということを読者に伝えていきたいですね。
もうひとつ、DRESSは女性向けの媒体ですが、今後は「女性は」「女性なら」という、女性を強調する見せ方は徐々に和らげていきたいなと思っています。
「男なら~」「女なら~」といった、「この性別はこうである」といった決めつけは、少なくとももう自分の中ではなくしていきたい。性別ではなく、「人は~」という風に表現を変えていけたら、と考えているんです。
そういう意味では「男らしい」「女らしい」という表現もタブーに近いんじゃないかなと感じています。
――資生堂のインテグレートのCMや東急電鉄のマナー広告など、女性をターゲットとした広告の炎上が相次いでいますが、いずれも「女は~すべき」という意識が垣間見えますね。
東急の広告も「女は股を開かない」という決めつけですよね。あれも「女は」ではなくて、「人は」という文脈で語れば問題はなかったのではないでしょうか。広告として機能させるために女性にターゲットを絞り込みたいという気持ちはもちろん理解できますが。
ただ、私としては男女の対立構造を深めたいわけでは決してないんですよ。
『男がつらいよ』の田中俊之先生の著書などを読んでいると、「男はつらいよ」もよくわかる。でも、「女はつらいよ」ともいえるし、結局は「みんなつらいよ」じゃないかな、と思います。
もちろん女性側の負担は大きいものですが、女性だけがつらい思いをしているわけじゃないですよね。生きるって楽しいことが多いけれど、つらいこと、しんどいことも、それなりにいろいろある。みんな楽しくて、同時につらい。みんなが別々のつらさを持っているのだから、それぞれの立場から相手のつらさを想像して助け合っていきたい。
そういう考え方を少しずつでも広げていきたいと思っています。
(取材・文 阿部花恵)
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