電車内や駅で痴漢をとがめられた男性が逃走する事案が相次いでいる。中にはホームに飛び降りたり、ビルから転落したりして死亡するケースに発展し、警察や鉄道会社が頭を悩ませている。
東急電鉄によると、横浜市青葉区の東急田園都市線青葉台駅で5月15日午後8時20分ごろ、30代の男性が女性から痴漢を指摘された後、線路に飛び降りた。男性は電車にはねられ、搬送先の病院で死亡した。
男性は、駅員から事務室に来るよう促されると、突然走り出してホームから飛び降りた。逃走しようとしたとみられ、男性が「自分じゃない」という趣旨のことを叫んでいたのを聞いた目撃者もいる。
この事案が報道されると、Twitter上では、痴漢申告に関する議論が紛糾した。痴漢に対する捜査の流れを問題視する意見が出る一方で、世間の冤罪への反感から女性の泣き寝入りが増えることを懸念する声が上がった。解決策として、男女別車両の導入を提案する意見なども寄せられた。
ハフポスト日本版は5月16日、東急電鉄に話を聞いた。
痴漢をとがめられた男性が逃走する事例が相次いでいるが、担当者は東急電鉄ではここ1年は起きていなかったと説明。「直接的な対策はしていないが、安全対策のため各駅にホームドアの設置を進めている。ホーム上への飛び降り行為を抑止につながるのではないか」と話した。
痴漢申告された人への対応が問題視されていることについて、「当事者双方から事情を伺うため、駅務室に来てもらう対応をとっている」と述べた。
また、痴漢を申告した女性がその場から立ち去ったとされる情報がネット上に出回ったが、「警察に対応をお願いした。事情を話しているはずだ」と否定した。
■痴漢疑われ逃走、後を絶たず 死亡事例も
JR京浜東北線上野駅でも12日、痴漢を疑われた40代の男性が駅から逃走し、その後に駅近くのビルとビルの間の路上で倒れているのが見つかった。男性はビルから転落したとみられ、死亡した。
JRではこうした事例が後を絶たない。3〜5月だけでも、痴漢を疑われた人が線路上を逃走するケースが都内だけで少なくとも8件が発生。朝日新聞デジタルなどによると、日時と場所の詳細は以下の通り。
3月13日 総武線御茶ノ水駅
14日 埼京線池袋駅
29日 埼京線赤羽駅
4月 5日 埼京線板橋駅
4月13日 総武線両国駅
4月17日 埼京線新宿駅
4月25日 埼京線板橋駅
5月11日 京浜東北線新橋駅
■痴漢冤罪「その場動かず弁護士呼んで」
痴漢に間違えられたらどうすればいいのか。おおたかの森法律事務所の三浦義隆弁護士は自身のブログで、取るべき対応についてつづっている。駅事務室などに来るよう求められても、「絶対にいってはいけない」と警告。その理由について、任意でもその後に警察に引き渡されると、「まず私人が現行犯逮捕し、被疑者を警察に引き渡した」という適法な逮捕の体裁を整えられてしまうことを挙げている。
一方で、今回のように走って逃げるのは、逮捕のリスクが高まることを理由に反対する。平穏に立ち去るために、「その場を動かず弁護士を呼ぶのが重要だ」と訴えている。
弁護士を呼ぶ手段の一つとして、弁護士保険がある。このサービスは、痴漢と疑われた時に、すぐに弁護士に助けを求めることができる。ボタン一つで提携弁護士に一斉に緊急メールが送信され、連絡が来た弁護士がどう行動するべきかを指示してくれる。