米・国務省が、10月30日、未成年に対する性犯罪の前科者のパスポートに特別な"印"をつけ始めると発表した。
性的な目的での子どもの人身売買や、売春目的での渡航やツアーなどといった犯罪から、子どもらを守るために2016年に制定された"国際メーガン法"に基づき施行される。
同省によるとパスポートの裏表紙の見返しの部分に、「(このパスポートの)保持者は未成年に対する性犯罪で有罪判決を受けており(アメリカの法律に則って)性犯罪者にあたる」という文面が印刷される。
米・国土安全保障省から提供される、未成年者に対する性犯罪歴の情報に基づいて、対象者には彼らのパスポートが失効し、"印"とともに再発行されると通達されるという。
ニューヨーク・タイムズによると、現在のところ対象の人数は明らかになっていない。
■アメリカでは性犯罪前科者の個人情報を公開
"国際メーガン法"は、1994年にニュージャージー州で、近所に住んでいた男に誘拐・殺害された7歳の少女メーガン・カンカさんにちなんだ名前の法律だ。
メーガンさんが殺害された当時、犯人は既に2回児童のへの性的虐待で逮捕歴があったが、周囲の誰もその事実を知らなかったことが問題視された。
メーガンさんの殺害事件を受けて制定された"メーガン法"に基づいて、アメリカでは性犯罪者の氏名や住所、犯歴などと登録しウェブサイトで公開している。
■人権侵害だという声も
こういった施策に反対する勢力もいる。
ニューヨーク・タイムズによると、登録されている性犯罪者の人権を求めるNPO団体は、パスポートに印をつけるという新施策を批判している。
団体を率いるジャニス・ベルッチ氏は、これは非常に危険な流れだと警告。
"今は、未成年者に対する性犯罪歴がある人たちが対象だが、今の政治の状況を鑑みると、次はイスラム教徒が対象になるだろう。あるいは、ゲイの人かもしれない"と話したという。
別の専門家は、アメリカの性犯罪に関する法律は、加害者自身も未成年の場合など、過剰に広い範囲で適用されうると懸念を示した。
国務省の広報担当者は、他の種類の犯罪の前科者に対しても同様の"印"付きのパスポートを発行するかは現在答えられないとしたという。