特集
2018年03月16日 17時01分 JST | 更新 2018年04月07日 20時09分 JST

「やりたいことは、家族感の復興」45人のクリエイターが共同生活する拡張家族「Cift」とは?

「拡張家族」という新しい家族のかたち

東京・渋谷の駅近ビルで、45人のクリエイターが不思議な共同生活を送っている。

個室があって、共有キッチンがあって、そこに約40世帯が住んでいる。仕組みだけみればシェアハウスと似ているが、彼らは「拡張家族 Cift(シフト)」というコンセプトを打ち出して、新しい家族のかたちを追求しているという。

いったい、どんなことが起きているのか。「拡張家族 Cift」発起人の藤代健介さんに話を聞いてみた。

Satoko Yasuda / HUFFPOST JAPAN

東急電鉄などが開発したビル、渋谷キャスト。Ciftはこのビルの13階にある。

寒い夜、1歳になったばかりのわが子と一緒にCiftを訪れると、共有のキッチンスペースでは、何人かが夜ごはんを作っていた。1歳半になる子どもが元気にフロアを走り回っている。

しばらくして、カブの煮物や鍋など、温かい手料理が並んだ。0歳の赤ちゃんは寝息を立て、時に泣き声を上げている。「寄せ鍋」をご馳走になり、穏やかな時間を過ごした。

HUFFPOST JAPAN

「拡張家族で共に暮らし、共に働く」

藤代さんによると、メンバーは経営者、シェアリングエコノミーの専門家、ノンフィクション作家、編集者、映画監督、美容師、会社員など様々で、年齢は0歳から50代まで。セクシュアリティも多様だという。

生活の拠点は、Ciftだけではないという人も多いそうだ。

ーー2017年5月にスタートした「拡張家族 Cift」について、あらためて教えてください。

現在40世帯が住んでいて、約45名のクリエイターが共同生活を送っています。

僕も逗子に住んでいますし、みんないろんな拠点で活躍していて、複数の肩書きを持ってるから、100拠点、100職種ぐらいになります。

Ciftでは、「自立した個人が、『拡張家族で共に暮らし、共に働く』。コワーキングスペースやシェアハウスとは違う概念で、「コーファミリー」(co-family)を新しくつくりたいと思ってるんです。

Saroko Yasuda / HUFFPOST JAPAN

——「コーファミリー」とは?

血がつながっているとか給料が高いとかじゃなくて、内側の感覚や態度でつながるのが「主体的につながる」という行為。それは意識と態度の話だから、家族も外的条件付けじゃなくて、「内的な動機」でつながり続けていくことができますよね。

例えば、誰かと結婚したら、その親戚とも家族になるじゃないですか。Ciftにも家族の方針というかビジョンがあって、「こういうことを目指してる僕たちだから、僕たちと家族になったら、周りにはいい人いっぱいいるよ」と言ってるんです。

——内側の意識や態度で「主体的につながる」ってどういうことですか?

ここでいう意識というのは、「自己愛から社会愛へ」みたいな文脈です。要は、自分の時間よりも、隣で悲しんでいる人がいるなら、その人のための時間を持とうと。意識さえ変われば、人とつながり続けて究極的には「人類みな家族」みたいなことは理想的にはできますよね。

市民という立場からどういう平和をつくれるかを考えたときに、拡張しなければ意味がないけど、拡張しすぎて中が平和じゃなければ意味がないから、「内側の平和を醸成しつつ、それを拡張させていく」というのが拡張家族のテーマなんです。

家族ってぎゅっと集まってやることじゃないですか。でも拡張しないとムーブメントにならない。

やりたいことは、家族感の復興と平和感の醸成です。

——Ciftのコンセプトは、藤代さんが考えたんですよね?

竣工の1年前のタイミングで、僕のところに「この13階にクリエイターを集めてほしい」という東急電鉄からコンサルの依頼がありました。

そのときはコンサルとしてリサーチした上でソリューションを提供しようとしたんですけど、夏くらいに意識が変わって。

コンサルという客観的に何かを分析して、他者のニーズに応えるところから、アーティストとして自分の物語を主軸に人を巻込みながら、どんどん自分たちのアート作品としてのコミュニティとか世界観をつくっていこうとシフトチェンジしたんです。

そこからは、「どういう所に住みたい?」って聞いてたのが、「僕たちはこういう所に住みたいんだけど一緒に住まない?」というふうに変わったんです。

Satoko Yasuda / HUFFPOST

——メンバーはどうやって集めたんですか?

もともとの知り合いが半分以下ぐらいで、半分以上はCiftをやろうとして、「この人いいんじゃない?」と紹介されたとか、そのタイミングで出会った人とか、ご縁ですね。

説明会もしましたし、個人で話もしました。ひとりに対して3回も4回も会って、コンセプトや僕の人柄を理解してもらった上で、「住みたい」といった人に、はじめて具体的な場所や家賃を伝える。そういう順序にしました。45人全員に共有したうえでCiftに入ってもらっています。

シェアハウスの進化形

—実際に、Ciftの人たちはどう暮らしてるんですか?

具体例に「何やってんの?」というと、要は深めることなんです。

僕も45人の1人ですけど、血縁家族を超えた家族をいかにつくれるかが「内側」のテーマで、「家族の家族は、家族」というのを、どういうふうに質を落とさずにつくれるかが「外側」のテーマ。どちらも大事です。

同時に、個人が今働いてる組織や他のコミュニティに対して、一人ひとりがリーダーとして新たな家族をつくっていけば、どんどん拡張していくというイメージです。

——一人ひとりが、それぞれの家族を拡張させる。具体的には?

僕も含めて45人全員、ママだったり、サラリーマンだったり、いろんなロールモデルがいる。それぞれのロールモデルが拡張家族になったときに、どう感じるのか。どう変化するのかを、それぞれが主人公として話していればいい。

言葉じゃなくて態度で示せばいい。ここに来てもらうのもあるし、映画監督は映画を作るかもしれないし、作家は本を作るかもしれない。

Satoko Yasuda /HUFFPOST JAPAN
通称「子ども部屋」。取材中は筆者の子ども一緒に遊んでいた。

——週に一度、家族対話も行われているそうですね。

アジェンダは決まってないので、とりあえず集まってその場のムードで実験しながらやってるって感じですけど、「これに困ってます」がいい対話の状態だと思っています。

例えば、Ciftにおける子育ての話になって、「家族だったら助け合うよね」と。その「助け合う」というのは、他者と思ってるんじゃないか。家族なのか、仲間なのか。「拡張家族」のあるべき姿はどっちなんだっけ? と。

日常の課題を、(一つ上の視点から考える)メタ思考で解こうとすると、本質的な問いになって、みんなはどう思うか、みたいな対話になるんです。

——対話と実践を通じて「コーファミリー」になっていく。

シェアハウスとかコワーキングスペースの進化形で、一見すると似てるんだけど、つながり方が違う。安いからとか便利だからとか、そういう理由で入る人は一人もいない。

便利になるからとか、仕事が増えるからとか、自分にベネフィットが返ってくるからじゃなくて、リスクを引き受けて、時間をコミットして、全体が良くなることをみんなで意識として共有しているのが「コーファミリー」なんですよ。

全体が目的で、自分が手段ということです。

自己愛か、社会愛か

——自分の安心・安全な場をつくり広げる社会実験のようですね。

ムーブメントを起こすためには、市民の意識を変えるしかないでしょう。

意識を変えることは結局、市民にしかできない。

企業は、社会課題のソリューションを示して再現することはできますが、意識を変えることはできないでしょう? 行政は、今いる人たちに対して平等に公平にサービスを提供することはできますが、意識を変えることができない。

自分の意識が変わって、「それっていいでしょ」というのがムーブメントになって、初めて人の意識が変わるから。だからここで楽しくやっているのが一番なんです。

——個人、つまり市民から社会を変える挑戦だと。

今は過渡期だから、長時間働いてもお金がもらえない、よく分からない状態になってるけど、シンギュラリティ(人工知能が人類の知能を超える技術的特異点、または、それがもたらす世界の変化)をちゃんと乗り越えれば、ロボットや社会システムと共生して、人類に余裕が生まれるときがくる。

そのときに、人間の意識が向くのは自己愛なのか社会愛なのか。そこがポイントなのだと思います。シンギュラリティが来るときに、マジョリティの意思の総和は、自己愛なのか社会愛なのか。それを実験してるんです。

Satoko Yasuda / HUFFPOST JAPAN

——渋谷で始める意味は?

ご縁であって主体的な意志はなかったです。ただロールモデルになるという意味において、渋谷のど真ん中で、再開発の新規物件でやる、というコンセプトは非常に意味がある。

渋谷キャストは東急電鉄がプロデュースしたビルですが、今の資本主義において、一番強いのはやっぱり企業なので、企業を相手にしながら、どういう関係性をつくって協働していくかはクリエイティブです。

今必要なのは、近代の一番中心にいながら違和感を生み出すこと。

近代の物件をハックして、本当だったら高級アパートメントのはずなのに全然違う、というのはものすごい余波になる。面白い人たちがどんどん来て、この雰囲気を感じて、「俺ってなんだっけ?」って気付きがある。そういう場を持つのは大事です。

後編》フリーランス時代の温かいコミュニティを。だから僕は「拡張家族 Cift」を作った

家族のかたち」という言葉を聞いて、あなたの頭にを浮かぶのはどんな景色ですか?

お父さんとお母さん? きょうだい? シングルぺアレント? 同性のパートナー? それとも、ペット?

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