あの人のことば
2018年04月07日 11時39分 JST | 更新 2018年04月08日 11時42分 JST

フリーランス時代の温かいコミュニティを。だから僕は「拡張家族 Cift」を作った

「共に暮らし、共に働く」とは、どういうことか。

Satoko Yasuda / HUFFPOST JAPAN

東京・渋谷の駅近ビルで、45人のクリエイターが不思議な共同生活を送っている。

個室があって、共有キッチンがあって、そこに約40世帯が住んでいる。仕組みだけみればシェアハウスと似ているが、彼らは「拡張家族 Cift(シフト)」というコンセプトを打ち出して、新しい家族のかたちを追求しているという。

Ciftのメンバーは、「共に暮らし、共に働く」を実践している。

いったい、どんなことが起きているのか。Cift発起人の藤代健介さんに、これからの個人の働きかた、暮らしかたを聞いてみた。

前編》「やりたいことは、家族感の復興」45人のクリエイターが共同生活する拡張家族「Cift」とは?

「Cift」が挑む、新しい共助のしくみ

東急電鉄などが開発したビル、渋谷キャスト。Ciftはこのビルの13階にある。

藤代さんによると、メンバーは経営者、シェアリングエコノミーの専門家、ノンフィクション作家、編集者、映画監督、美容師、会社員など様々で、年齢は0歳から50代まで。セクシュアリティも多様だという。

生活の拠点は、Ciftだけではないという人も多いそうだ。

——2017年5月に始まったCiftの取り組み、実際いまどうですか。

毎日が変化に富んでいて楽しいですよ。

「意識から家族になろうとするコミュニティ」のリーダシップって挑戦しがいがあると思っています。お金とか出会いとか、個人的で外的な条件でつないでるのではなくて、平和とか家族とか、全体的で内的な態度でつながっているから。

ご縁で集まってる40世帯の人と、どういうふうによりやわらかくつながっていくのか。自分自身がどれだけ変容していけるかが問われるからすごい面白いですよ。

——「拡張家族」の今後の展望は?

拡張家族では、深い信頼を前提とした「共助」のシステムもつくろうとしています。

株式会社は「自助」で、NPOやNGOは「公助」ですよね。そうではなくて「協同組合」という共助。

「拡張家族」の共助は、拡張していくことを前提とした仕組みで、「協同組合」はコミュニティにおける民主主義の進化系だと考えています。ただ、現状の協同組合の制度では、私達の理想と合わないので、法的には任意団体という形にはなっていますが。

同時に、Cift的なマインドでつながる人たちが、どういうふうに経済圏を生み出していくのか。コミュニティにおける「協同組合」と同時に、どういうふうに具体的に政治的要素と経済的要素を入れるかまではコンセプトとしてできています。

Ciftのメンバーには、暗号通貨や会社経営、パーマカルチャー(持続型農業)や協同組合のスペシャリストもいます。

Kaori Sasagawa

企業と個人がシェアする時代

——企業とも協働してますよね。

いまCiftは一緒に取り組んでいる企業と一緒に、「売れる商品」じゃなくて、「これが売れたら世界が平和になる」という商品をつくろうとしています。

企業は基本的に、自由を求める、個人のニーズを求めるという社会の課題解決のために、一生懸命(サービスを)つくってるじゃないですか。でも、僕たちがいまつくりたいのは、主体的全体を意識したアプローチです。

——主体的全体とは?

個人が良くなるよりも全体が良くなることを求めることですけど、そのときのサービスはいまないわけですよ。それを市民側からアプローチすると意識改革ですが、企業側からすると、そういう新しい市場をつくるということ。

——企業も、自社の利益ではなく全体にアプローチしていく必要があると。

結局、経営ってなんですか、という話ですよね。

(経営が)栄華を極めたものを、どうやって持続的にやっていくかになっていて、バブルの名残みたいになってるから。経営が、自己愛に比重があると感じます。自分の会社が生き延びるためとか社員が生き抜くためとか、全部内側に向かっている。

——余裕がなくて自衛になっている。

それって人間や社会の生と死みたいなところまで問いを拡大しても残る強度の強いモチベーションなのですか? 会社経営は社会平和のための手段ではなかったのですか? と問いを投げかけています。

会社が手段として何ができるかっていうと、その商品で全体が良くなることですよね。もちろん、個人の自由やニーズを満たすサービスも必要だけど、手段であって目的ではないはず。

「全体の人々が良くならないのに、個人が目的になって、商品が売れればいいというのは、社会にとっても会社にとっても健康的なのか?」という問いですね。どこまで伝わってるかは別として、そういう話をしてます。

——企業のマインドを変えようとする動機は?

Ciftのためにもやってないし、社会や全体のためにやってるから。

「Win-Win(互いに)じゃなくて、共に(Co-)」みたいな話で。(これまでの関係だと)お金をくれるからコンサルをするわたしと、コンサルをされるから価値が上がるあなた、要はマーケットにおける価値交換ですよね? そうではなくて、(企業も個人も)全体を目的にしたらどっちもシェアになるんですよ。

Satoko Yasuda / HUFFPOST JAPAN

——企業と個人の関係性も、シェアに変わると。

経験という叡智を持ってる市民、もしくはコミュニティを持ってる市民、お金とか開発リソースとか再現可能性を持ってる企業。そこで「市民と企業で私たちの社会をつくろう」という。

企業だけだと、今の課題、現状の社会に対して何か打ち手をつくることはできるけど、平和活動には限界がある。でも、

人の意識をつくれるのは市民だと思います。新しい時代をつくるのは人の意識でしかない。でもあくまで市民だから強制力もないし、クリエイティブだけどサスティナビリティ(持続性)がない。

一方で企業の本質は、「代替できて再現できる」ってことだから、儲けられればスケールする。市民がつくった新しい運動を、どういうふうに広げていくのか、というスケールのところは、ちゃんと経済活動に乗せれば、企業のほうが得意だと思います。

僕たちが方向付けするから、それを儲かるかたちで、企業のリソースを使って、サステイナブルにその手段を社会に広めることをやるという役割分担です。

——そこに行政は関わってきますか?

Ciftの方向性としては、市民として共助する世界を広げていくことはするけど、(公助として)べた塗りさせるミッションはそもそも背負ってないから。やっぱり市民と行政と企業は全部役割が違いますよね。

Saroko Yasuda / HUFFPOST JAPAN

——あくまで、市民からできることをやる。

一番大事なのは意識を変えること。

今、力点はどこなのかというと市民だと思っています。一番創造的になれるのは市民だから、あえて市民という顔で張ってたほうが社会的な意義が強い。

そういうことをやるときに、(Ciftの人たちは)そもそもある程度社会的に余裕があるというか、近代に(企業に)依存しないかたちで個人のキャリアを持ってるから。

すごい余裕があるわけじゃないけど、ある程度の時間やお金の余裕があるときに、その余裕を自分に再投資するのか、全体に投資するのか。どういう社会モデルとしての未来ができるのかがCiftのコンセプトだし、そこを伝えたいわけです。

個人の時間と空間をデザインする

——今の社会では「ライフ」の時間を使って「ワーク」して、給料をもらって暮らしている人が大半だと思います。今後その暮らしはどう変わっていくと思いますか?

大きな時代の転換期がもうすぐそこまで来ていると思っています。

今のマジョリティーは、給料をもらって指令をこなせるサラリーマンです。だから、それが何が要因になるかは分からないけど、明治維新で武士が仕事を失ったのと同じように、時代の転換期で外側から破壊されるタイミングがくると思うんですよ。

それまでに自己破壊をできるか、外から破壊されるかのどっちかなんですよね。自己破壊できるとソフトランディングなんですよね。

Satoko Yasduda / HUFFPOST JAPAN

——企業の時代が終わる?

今のライフとワークの常識が崩れたときに、新しいフリーランス的な時間と空間を自分でデザインする時代に突入するんだけど、そのときの全体に開いた型がないと思っています。

フリーランスとしての個人活動的な型は出てきていますが、フリーランスになったからこそ意識的に集まる家族のような温かいコミュニティという型がまだ見えていません。それを今つくってるんです。

できる人は内側から自分で自己破壊すればいいんだけど、本当に一番大事なのは、「サラリーマンじゃなくなった私、どうやって明日から生きていけばいいの?」といったときに、目の前の人と家族を再構成すればいいんだよっていう価値観。

——これからの共助のありかた。

行政のサービスに頼って、補助金がどうだとか再就職先が決まんないとかじゃなくて、フリーランス同士集まって共助し合えばいいんじゃないの? 共助だよ、みたいな。そのときの外側の技術と内側の思想を考えているんです。

余裕がないなかで、全体を意識することで、逆に余裕を増す。

強力で大きなシステムとか経済圏とか社会保険はもういらなくて、共有保険でいいから、どういうふうに資産分けしてシェアしていくのかを実験してるんです。全部それをアーカイブ化していて、誰でも使えるようにシステム化も挑戦しています。

前編》やりたいことは、家族感の復興」45人のクリエイターが共同生活する拡張家族「Cift」とは?

家族のかたち」という言葉を聞いて、あなたの頭に浮かぶのはどんな景色ですか?

お父さんとお母さん? きょうだい? シングルぺアレント? 同性のパートナー? それとも、ペット?

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