「副業芸人」という生き方 お笑い芸人"交差点" 兼業するのは悪なのか?
バラエティ番組ではお笑い芸人たちがひな壇を賑わせ、毎年誰かしらがブレイクするのが通例。一方で、"一発屋"にもなれずに人知れず消えていく芸人たちも多いのも現実...厳しくもあり、また飽和状態のお笑い業界。そんな激しい競争の中、チャラ男芸人の慶や、カラテカの入江のようにプチブレイクで獲得した"知名度"を武器に副業で稼ぐ芸人たちが話題となっている。彼らのような、お笑い界での"上がり"を目指さず他業へシフトする芸人たちの、人生"交差点"を探る。
作家や映画監督...趣味を仕事にできるのは天下をとった者の"特権"だった
かつては芸人がお笑い以外の"副業"をするのは、功成り名を遂げた芸人たちのいわば"特権"だった。ビッグ3のビートたけしは1984年、北野武名義で自らの少年時代を描いた自伝的エッセイ集『たけしくん、ハイ!』を発表し大ヒット。NHKで実写ドラマ化もされ、それまで"毒ガス"だったたけしの才能が社会的にも認知される契機ともなり、後の北野映画へとつながっていく。
また、ダウンタウン・松本人志も、94年に『遺書』を発表すると250万部の大ベストセラーとなり、翌年発表された『松本』(200万部)とも併せ、95年度のベストセラー1位・2位を独占。そしてこのあたりから、お笑い芸人たちが"お笑い以外"のことを手掛けても、正当に評価される時代がはじまったのである。
とは言え、芸人がお笑い以外のこと、例えば自分がオーナーとなって飲食店経営や芸術家っぽい活動に手を出すと、「とうとう芸だけでは食えなくなったか?」、「気取ったことをして、もう本業は上がりか?」などと言われ、長らくマイナスイメージがあったのも事実。
芸人だけど"安定"も欲しい!? 才能の「見切り力」も成功要因の1つに
かつて『エンタの神様』(日本テレビ系)などでプチブレイクした"チャラ男系芸人"の慶は、『エンタ』終了後は仕事が激減。しかし、趣味でもあったパチスロ関係の仕事の依頼が入りはじめ、今ではパチスロライターとして月収60~70万円を得ているという。さらに「安定感がほしい」ということで、プチブレイク時代の貯蓄をキャバクラやボーイズバーなどの開業を目指す事業主に出資。「失敗したら出資金は返ってこない」というリスクの中で出資金をすべて2年以内に回収。今では月に50万円ほどの"不労所得"もあるという。
また、芸人の副業と言えばカラテカの入江慎也も有名。かねてより合コンやナンパ活動の回数がハンパじゃなく、酒席などで拡大した友人関係のネットワークの異常な広さが知られており、『使える!人脈力「友だち5000人芸人」が実践する50の習慣』を出版するほど。最近ではその"人脈力"を買われ、企業の講演会に呼ばれたり、顧問になったりもしている。さらに「イリエコネクション」という自身の会社も設立し、今では月収280万円ほどを得ているようだ(芸人としての月収は18万円)。
成功前に副業に走る"逆転現象"も 「漫才だけじゃ子どもを養えない...」芸人の厳しい現実
DJ業でも活躍するお笑いコンビ・ダイノジの大谷ノブ彦も、かつて自身が担当するネット配信番組『よしログ』で「芸人だけの仕事、いわゆる地方の営業、劇場の漫才だけじゃ多分俺たち、ぶっちゃけ子どもを養えない...ギリギリアウトかな?」と赤裸々に告白。その解決策として「サッカーに詳しい芸人とか、スポーツコンテンツで、そこが一番仕事ある人がどんどん増えてきてる。俺はそれで全然いいと思う。漫才続けることを目的にしたら、(副業を)選んでいくのはアリだと思う」と、"芸人+α"を推奨している。
芸人一筋の生き方にこだわるのも"美学"だが、芸人渋滞が起きている昨今、トップに昇り詰めることに「見切り」をつけ、安定した副業・副収入を得ることで好きなお笑いを続ける...そんな安定志向もひとつの生き方なのだ。
実際、副業が話題になってTV番組に呼ばれるという逆転現象=相乗効果も起きている。今やそれくらいの柔軟性とフットワークを持ち合わせていなければ、お笑い界では生き残れない時代。"働き方改革"が叫ばれている昨今、現代社会に生きる我々にとっても、決して無関係な話ではないのかもしれない。
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