NEWS
2018年07月20日 06時00分 JST | 更新 2018年07月20日 10時44分 JST

「土用の丑の日」は、もうやめよう。絶滅危機のウナギを考える

絶滅の危機は「養殖ウナギ」とも密接に関係している。

(イメージ画像)
MikeLane45 via Getty Images
(イメージ画像)

40℃近い日が続く日本列島に、今年も「土用の丑の日」がやってきた。だが、今シーズンは稚魚のシラスウナギが不漁。近年は取りすぎによる資源枯渇も危ぶまれている。

古くは「万葉集」にも登場するほど、ウナギは日本の食文化として根付いてきた。これからもウナギをおいしく食べ続けるために、私たち消費者にはなにができるのだろうか。

■「養殖」というけど、もとは天然の稚魚

水産庁「ウナギをめぐる状況と対策について」

2014年、国際自然保護連合(IUCN)はニホンウナギを「絶滅危惧種」に指定した。

ウナギの減少要因は特定されていないが、海洋環境の変動、環境の悪化、乱獲など様々な原因が考えられている。養殖で用いられるウナギの稚魚の過剰な漁獲も問題視されている。

実は、私たちの食卓に並ぶ「養殖ウナギ」は全て、野生から捕獲した稚魚を人工的に養殖場で育てたものだ。

環境省「ニホンウナギの生息地保全の考え方」
養殖ウナギが消費者に届くまで。

大量のウナギの需要に対応するには、養殖用のシラスウナギが必要となる。ただ、このシラスウナギの採捕量は1975年ごろから減少基調が続き、取引価格も高騰している。

今年(5月まで)のシラスウナギの国内採捕量(ウナギの養殖池に入れた稚魚の量―輸入した稚魚の量)は8.9トンで、前年比で約4割減。2013年の5.2トンに次ぐ歴史的不漁となった。そのため、卸値が高騰している。

■「素性不明」のウナギが流通している

水産庁「ウナギをめぐる状況と対策について」

シラスウナギは、つま楊枝程度の大きさ(長さ約6cm、重さ約0.2g)。少量の水があれば持ち運びができる。採捕者は全国で約2万人を超え、1人1日あたりの採捕量は数グラムと極めて少ない。

シラスウナギをめぐっては、不透明な流通が指摘されている。

国内でシラスウナギを捕るには自治体(都道府県知事)の許可証が必要だ。また、シラスウナギを捕った人は捕った量を自治体に報告しなければならない。

そうなると、シラスウナギの「国内採捕量」(ウナギの養殖池に入れた稚魚の量―輸入した稚魚の量)と「自治体への報告量」は、ほぼ同じになるはずだ。

水産庁「ウナギをめぐる状況と対策について」

ところが、2017年漁期の国内採捕量は15.5トン。自治体への報告量は8.4トンだった。半分以上は、どこから来たのかわからない「素性不明」のウナギだ。

■シラスウナギの密漁 「暴力団の資金源」指摘も

「素性不明のウナギ」は、なぜ生まれるのか。

水産庁によると、採捕者が「優良な採捕場所を秘密にしたい」「採捕量が高いと妬まれる」「数グラムを毎回報告するのが面倒」などの理由で報告しない例があるという。

自治体が指定する出荷先よりも高値で買い取ってくれる県外の業者に横流しし、その分を報告しないケースも考えられるという。1匹で100円超の値が付く場合もあるという。

無許可での密漁されたシラスウナギが、暴力団の資金源になっているという指摘もある。

水産庁が算出した国内採捕量と自治体に報告された採捕量のズレについて、水産庁増殖推進部の担当者はハフポストの取材に危機感を募らせる。

「ウナギを持続的に利用するためには、透明性のある資源管理が大事です。ただ、正確な数が把握できないと管理は難しく、信頼性も揺らいでしまう。ウナギそのものが不透明なものというイメージがついてしまう。消費者の皆さんに安心していただくためにも、シラスウナギ採捕者のモラルが問われています」

水産庁は都道府県に対し、無報告の採捕者には許可を取り消したり、許可を更新しないよう促すなど、不正対策をの強化を指示している。

シラスウナギは成長するとパッケージ加工され、様々な形の流通ルートで消費者に届けられる。コンビニやスーパーに並ぶ、パック詰めされたウナギの中に「密漁」が混ざっていても、見た目ではわからない。

■ニホンウナギ以外も絶滅危惧

水産庁「ウナギをめぐる状況と対策について」

水産庁によると、ウナギの国内供給量は2000年(平成12年)にピークに達した。中国から大量のヨーロッパウナギが加工品として輸入されたことが背景にある。

ところがヨーロッパウナギは2007年、ワシントン条約で輸出入の規制対象になった。貿易取引も制限されている。

現在、ニホンウナギの代替品とされるアメリカウナギも「絶滅危惧IB類」に指定されている。ニホンウナギと味が似ているされ、日本での消費量が増えているビカーラ種も「準絶滅危惧種」となった。

水産庁「ウナギをめぐる状況と対策について」

次回のワシントン条約の締約国会議は2019年5月〜6月、スリランカのコロンボで開催される。議論の行方次第では、ニホンウナギ以外のウナギも貿易取引が規制される可能性がある。

■「土用の丑の日」のウナギ、もうやめませんか

ウナギ文化を守るために、消費者にはなにができるのだろうか。水産庁増殖推進部の担当者はこう語る。

「ウナギは天然資源です。また、養殖ウナギといっても稚魚は天然に依存しています。これからもウナギという資源を持続的に利用していくためには、数に限りがあるものだと意識していただくことが大切だと思います」

そもそもなぜ「土用の丑の日」にウナギを食べる風習があるのか。諸説あるが、最も有名なものは江戸時代の発明家・平賀源内が、うなぎ屋の広告PR案として考えたという説だ。

食通で知られた北大路魯山人は、こんな言葉を残している。

「うなぎはいつ頃がほんとうに美味いかというと、およそ暑さとは対照的な一月寒中の頃のようである」
(北大路魯山人『鰻の話』)

時事通信社
「土用の丑(うし)の日」に向け、ステーキやギョーザをアピールする「らでぃっしゅぼーや」の通販カタログ。撮影日:2018年07月

古くは「土用の丑の日には『う』のつくものを食べると夏バテしない」という言い伝えがあった。

となると、ウナギではなく「牛(牛肉)」でも「梅」などでも良いのではないか...と、ウナギ以外を展開する企業も出ている。

スーパーの「アピタ」や「ピアゴ」を展開するユニーは、「土用の牛の日」に向けてカルビをのせた「ひつまうし」を提案。焼き肉売り場の品ぞろえを強化している

日本のウナギ文化を守るためにも、「土用の丑の日」にお祭り騒ぎでウナギを食べるのは、もうやめませんか。