「第2次大戦の結果を認めないのは、世界で日本だけ」 ロシアのラブロフ外相、「北方領土」呼称も問題視

根拠とする国連憲章の旧敵国条項についても説明した
会見するロシアのラブロフ外相=1月16日、モスクワ
会見するロシアのラブロフ外相=1月16日、モスクワ
KIRILL KUDRYAVTSEV via Getty Images

ロシアのラブロフ外相が1月17日、国内外の記者を集めて恒例の年頭会見を開き、日本が第2次世界大戦の結果を認めるよう改めて要求、「認めていないのは世界で日本だけ。なぜなのか、それを理解したい」などと述べた。

14日にモスクワで開かれた河野太郎外相との会談でも日本側に求めており、その根拠の1つとしている国連憲章第107条(旧敵国条項)についても説明した。

日本の国内法で「北方領土」という名称が使われていることも改めて問題視した。

日本に関する質疑応答の全文は以下の通り。

――ロシアと日本がこのほど、平和条約をめぐる新しい交渉を始めました。それはまったく新しいレベルでの両国による解決となるはずです。条約は両国民から支持されなければなりません。私も含め、おそらくすべての日本人が理解できないことがあります。それはあなたが日本側に前提条件を提示したことです。つまり、日本がまず、第2次世界大戦の結果をすべて認めなければならないということ、そして島々の主権はすべてロシアにあることです。それは最後通牒のようなものですか。あなたは普段、外交における最後通牒は批判していますが。ロシアは日本に「無条件降伏」を要求しているようにも思えます。ロシア側の論理がわかりません。島々の帰属問題については協議するつもりはないという。もし南クリル(北方領土のロシア側呼称)におけるロシアの主権を日本が認めるのならば、協議すべき問題はないはずです。だったら何のために会談を開いているのですか。

河野太郎外相との会談後、すぐにこのことについては述べましたが、もう一度繰り返しましょう。

第2次世界大戦の結果を認めること、それは最後通牒でも前提条件でもありません。それは現代の国際的な枠組みの避けがたい、不可分の要素なのです。

日本は1956年、ソ連の支持で国連に加盟し、国連憲章を批准しました。その107条には、第2次大戦の結果はすべて変更してはならない、と書かれています。

日本に何かを要求しているのではありません。国連憲章、サンフランシスコ平和条約、その他一連の文書、あなたがおっしゃったものも含めて、それらに定められた義務に従い、協議をしましょうと呼びかけているだけです。

国連憲章に基づいて日本が行動するため、私たちが何を問題視しているか。それはあなたの国の法律で「北方領土」という呼び方が定着していることです。

その名称はあらゆる法律に記載されています。両国首脳同士の協議で、島での共同経済活動が決まりましたが、それを盛り込んだ改正北方領土特別措置法の中でも使われています。

そこには北方領土返還の必要性から共同経済活動をするということが書かれています。そんな約束はしていませんよ。それこそ国連憲章が求める日本の義務に反していませんか。

ということで、それは前提要求ではなくて、理解しようとしているだけです。なぜ日本は世界で唯一、第2次世界大戦の結果を認めようとしないのか、ということを。

もちろん、そこにはもう1つの一連の問題もあります。アメリカとの軍事的、政治的な同盟の問題です。繰り返したくはありませんが。アメリカは日本に基地を展開しています。それは周知の事実です。

両国首脳はあなたの言うとおり、あらゆる分野、経済や貿易、文化、人道面、国際問題などで関係をよりよくすることが必要不可欠だと述べました。

解決すべき問題は平和条約だけではありません。ほかの問題もたくさんあります。もちろんそれは、国際社会でお互いが障害になるような関係ではなく、パートナーとなるような関係です。

しかし、日本はロシアに対する一連の経済制裁に加わりました。両国の関係を新しい水準に引き上げようということに疑問です。

日本は反ロシア声明を承認したG7に入っています。日本はロシアに関係するあらゆる国連決議において、反対票を投じてきました。

河野太郎外相がロシアを訪問して私と会談する直前、フランスの外相、国防相とパリで会談しました。

そこでは共同宣言が出ましたが、それを読めば、いかに私たちが国際問題で立場が違うか、それだけでなく、両国の距離を縮める具体策を見つけるのに必要な認識から、いかに程遠いかがわかると思います。

日仏の「2プラス2」会談で出た共同宣言では、日本は「G20」の議長国、フランスは「G7」の議長国なので、両国の義務はその枠組の中で調整されると書かれています。

疑問なのは、G7とはG20の一部です。今年のG20の議長国を務める日本は、すべての参加20カ国の合意が達成できるよう、条件を担保しなければなりません。

一部のグループの国益だけを考えるということではないのです。宣言が単なる言葉上の誤解であることを願うばかりです。

私たちは日本が特にプロフェッショナルな姿勢で、G20に参加する先進国と途上国のすべての国の合意を得るよう調整し、G20の決定が国際社会のあらゆる国々に関係する以上、その他の国々の利益にも注意を払うものと考えています。

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