カンボジア人と一緒に働くって? 異文化で働いて想う、細胞に刻まれた「記憶」の違い

異文化の中でその国の人々と仕事を共にするには、どうすればいいのか。

カンボジアより、スースダイ(こんにちは)! オリジナルシャツブランド「Sui-Joh」を経営する浅野佑介です。

前回書いた「みんなが帰って来なかった事件」を経験した僕は、彼女・彼らの私生活のリアルを想像し始めました。

その想像を繰り返す中で、僕と彼女・彼らの間には目に見えない大きな隔たりが存在すると感じるように。

よく「その隔たりは教育が根本的な問題だ」という意見を聞きますが、僕は近代教育が行き渡っているかどうかという以前の、細胞に刻まれた系譜みたいなものが関係しているのではないかと思い至ったのです。

日本人に刻まれた、四季と忍耐とご褒美

▶カンボジア人と一緒に働くって?

カンボジア人と一緒にものづくりを始めた頃の僕もそうだったかもしれませんが、日系企業を含む外資系企業が増える昨今、外国人がカンボジア(人)の問題点を指摘、時には卑下する会話を耳にすることがあります。

「カンボジア人は計画性がない」「同じ過ちを繰り返す。学習しない」「真剣さが足りない」などなど。行き着く先は「カンボジア人は使えない」とも。

この発言をした人たちのもどかしさ、がっかりした体験は理解できます。でも今思うことは、マネジメント側の経験、思慮や想像力の欠如も原因にあると思うのです。

そんな人間の大きな隔たりを生んだもの。

僕は、そのひとつが「四季」ではないか、と思っています。

▶オリジナルシャツを生み出すまで、さまざまな物語が

僕らの住む日本には四季があり、日々の生活の中で季節の移ろいを目にし、肌で感じ、匂いでも感じ、五感で繊細に感じていると思います。それがきっと日本人の奥ゆかしさや、周囲を思いやる、支え合う土壌をつくったのかとも思います。

今、日本は冬の真只中。冬は日照時間も少なく、そもそも寒い。作物も育たない。

だから、大昔から僕らの祖先はこの冬を乗り切るために夏から秋に収穫した作物を保存食にする術を編み出したり、ネズミに食べられないように家にネズミ返しを作ったりしたのだと思います。

命を繋ぐために、多くの工夫が繰り返されて、今の僕らの命があるのだと思います。

「冬」という、忍耐を必要とする自然環境、計画性をもって挑まなければ乗り切れないことが人生にはある、と僕らは自然と学んでいるともいえるとも思います。

そして、冬の後にやってくるものが、春です。

心地よい春風が頬をかすめて、菜の花が咲き、チューリップや桜が咲き誇り、視界に彩りが増していきます。それはまるで冬を乗り切った人間へのご褒美のように、人の心を温かく、朗らかさを与えてくれるものです。

それはきっと僕らに「耐えた」後には何かしらの「ご褒美」があるんだよ、と教えてくれているのだと思います。

自然の恵みに育まれたカンボジアの人たち

カンボジアはどうかと考えてみると、乾期と雨期はあれども、凍えるような冬はありません。一年中、外で寝ても凍死することもありません。

東南アジア最大の湖トンレサップ湖の恩恵もあり、お米の二期作も可能で輸出をするほどの収穫があり、農業は縫製業に並ぶカンボジアの主要な産業となっています。

だから「カンボジア人は計画性や忍耐がない」のではなく、命を繋ぐにあたって計画性に迫られていなかった、のだと思います。

▶カンボジアの庶民の交通手段、トゥクトゥク

木を揺すれば果物が落ちてきますが、家にたくさん保存すれば腐らせてしまう。であればまた明日、採ったほうが良いのです。

それを当たり前として繋がれてきた命。

それぞれの土地で、命が育まれてきた道は違います。

だから外国人がカンボジア人スタッフのミスを一方的に怒っても、彼らには理解できないのではないか、と思います。彼らは、上司が怒っているし、争いごとは根本的に避けたいから「はい、分かりました」とその場をおさめる。

でも、根本的に何が問題なのかが伝わっていないから、また同じ過ちを犯し、上司からすると「先日も言ったばかりだろ!」となってしまう。その悪循環です。

異文化の中でその国の人々と仕事を共にするには、どうすればいいのか。

僕らの体内に埋め込まれた「当たり前」を知らないカンボジアの人たち、彼らの「当たり前」を知らない僕ら。お互いが理解し、納得し合うためにはどうしたらいいのか。それを考えるのが上司や社長の仕事だと思います。

▶異文化の中で歩み寄るために何ができるか

もっとも、体験、経験したことが無いことをいくら言葉で説明しても限界があるのも事実だと思います。

だから、近い将来、僕はスタッフを日本に連れて行き、四季のひとつを五感で感じてもらいたい。僕らが歩み寄ろうと努力してきたこれまでの経験が、ふと、点から線になり繋がるかもしれない。そうしたら、もっとSui-Johは力強くなるのではないのか、と想像したりしています。

明日は今日よりも良いSui-Johになれるように!

いつでも考え続ける経営者でありたいと思っています。

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アンバサダー

浅野 祐介/Yusuke Asano

日常にHAPPYと彩りをお届けするカンボジア発のファッションブランド、Sui-Johの創設者。1981年愛知県生まれ。4人兄弟の長男。会社員を経て、2010年秋よりプノンペン市内のNorton大学 大学院へ入学。その中で、ファッションと文化の融合を目指しシャツ作りを始め、現在はトートバッグやポーチなど幅広く制作をしている。モットーは"Happiness is only real, when it's shared"。

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