日本発祥のクレープ店MOMI&TOY'S (モミアンドトイズ)のインドネシア事業部長である桐原龍さん。社内初の海外出店である台湾で経験を積んだ後、インドネシアに渡られました。好調に進んでいた台湾から桐原さんがインドネシア行きを決意した理由とは?
上向き景気のインドネシアで現地に合わせたビジネスモデルを構築
御社の事業内容について教えて下さい。
日本スタイルのプレミアムクレープを日本国内だけでなく海外でも販売しています。
現在はインドネシア現地企業の事業部長として、事業立案や広報活動を行ったりクレープ教室の先生を務めたりと、あらゆるすべてを管理することが私の仕事です。
一昨年はマカオやカンボジアの立ち上げにも携わり、海外出店のサポート役として色々な場所に赴いています。
様々な国で活動してみて思ったのは、どの国においても現地のビジネスモデルに対する理解が成功の鍵だということ。
食の好みや商習慣も心得ておく必要がありますね。事業を展開する上でリスクを事前に調査・把握し、対応策を検討しておくことは不可欠。インドネシアでは高級モールに出店する場合、日本と同じ程度の非常に高い賃料を店舗側が負担しなくてはならない場合が多いです。
日本は売り上げに応じて賃料の割合が決まっていることが多いですが、こちらでは固定賃料契約が主流のため、売れなければ即赤字。日本食がブームとなっている一方で、撤退する店舗も多いのが現状です。
このような状況を踏まえて、インドネシア国内の新規出店の際には賃料や初期投資を低く抑えようと、トゥクトゥクを使った店舗の開発も行いました。
昨年から今年にかけてローカルFC店舗がオープンし、今後も引き続きインドネシア全土での出店を計画しています。
これからの世の中で働いていく上で、重要なことを教えて下さい
経済的に成長期であるインドネシアにおいては、1年という短いスパンでも大きな変化が見られます。
みんなが前を向いていて、街や人が活気と希望で満ちている。経済が上向きな状況を肌で感じられることは魅力ですね。
日本にいてはなかなか経験できないことだと思います。このような恵まれた環境の中で、事業と自分自身をどう成長させていけるかが私の20代の課題です。
人について言うと、インドネシアの人々は常に笑顔だと感じます。怒られていても笑っているほど。
その笑顔に救われることもありますが、もちろん良いことばかりではありません。基本的に彼らを叱ってはいけないのが難しい点です。
注意は人前ではせず、優しく背中を押すように声を掛ける。ONとOFFをしっかり分けて、何かを教える時にはアメとムチを分ける配慮が必須です。
持ち前の明るさがあるので、何かあってもコロっと次の日には切り替わっているのですが、民族性を理解して丁寧に関係性を築くことが重要だと思います。
面白い選択肢を選び取り、「美味しい」という一言を求めて
今まで一貫して飲食業に携わってこられたのでしょうか?
飲食業との出会いは学生時代の飲食店アルバイトまで遡ります。正直、「飲食業はもう懲り懲り」という気持ちを抱えていたのですが、就職活動をする中で、あえて自分の苦手な所に飛び込もうと思い、日本の食関連ベンチャーへ就職。
将来は独立する道も視野に入れて、すぐに最前線で活動できるような小規模の会社を志望しました。
私の祖父は医療機器の問屋を立ち上げたのですが、そんな彼の人間性に対する憧れや尊敬の念が、「祖父のような人間力のある経営者になりたい」という想いに繋がったのだと思います。
日本で働き始めて半年が経った頃、突然「台湾へ行かないか」という提案を受け、台湾へ出向することに。後先考えずに「行きます」と即答した記憶があります。
海外に住んだ経験は全くありませんでしたが、ネガティブな意識は一切ありませんでしたね。台湾は初めての海外出店で、スタッフのマネジメントやメニューの刷新などに力を入れた1年でした。
当時の上司の指導の下、2年目はフランチャイズ事業に乗り出すことに。数年後のビジョンも自然と見えていた気がします。
初の海外店舗である台湾店は軌道に乗っていたのですね。その後どのような経緯でインドネシアに行かれたのでしょうか?
台湾での勤務が1年半過ぎた頃、インドネシアへ現地スタッフ向けの研修に行きました。その時にインドネシアの事業責任者となる話を受けたのです。
インドネシアの首都であるジャカルタの位置すら知らない状態でしたが、新たな経験を積もうとインドネシア現地企業への転籍を決意しました。
台湾へ御返ししたい気持ちもありましたが、両方の選択肢を天秤にかけた時、より「面白そう」だと感じたインドネシアに渡ることにしたのです。
「面白い方」というのは「経験したことがない方」ということ。いつも行動の軸としているのは、「面白いと思うかどうか」という直感に近い感情だと思います。
実際は大変なことも多いと思うのですが、そんな中での"やりがい"とは?
私にとって働く上でのやりがいは、「美味しかった」という言葉をかけていただくことです。
商品開発から店舗に配置するメニュー作りまで、0から自分が手がけたクレープをお客さんに美味しそうに食べて頂き、笑顔で帰ってもらう。
本当に単純なことですが、何にも変えがたい喜びです。飲食業の醍醐味はここに尽きるのではないでしょうか。年々飲食業にはまっている自分がいますね。
プロフィール
桐原 龍/Ryo Kirihara
MOMI&TOY'Sインドネシア 事業部長
早稲田大学出身。在学中は音楽活動に専念。大学卒業後は、日本にて飲食ベンチャーへ就職し、半年後台湾へ出向。台湾にて2年勤務の後、同ブランドのインドネシアの現地企業へ転籍。妻は台湾人。
ライター
濱田 真里/Mari Hamada
ABROADERS 代表
海外で働く日本人に特化した取材・インタビューサイトの運営を6年間以上続けている。その経験から、もっと若い人たちに海外に興味を持って一歩を踏み出してもらうためには、現地のワクワクする情報が必要だ!と感じて『週刊アブローダーズ』を立ち上げる。好きな国はマレーシアとカンボジア。
週刊ABROADERSは、アジアで働きたい日本人のためのリアル情報サイトです。海外でいつか働いてみたいけど、現地の暮らしは一体どうなるのだろう?」という疑問に対し、現地情報や住んでいる人の声を発信します。そのことによって、アジアで働きたい日本人の背中を押し、「アジアで働く」という生き方の選択肢を増やすことを目指しています。
HP: 週刊ABROADERS
Facebook:ABROADERS