不安障害について、私たちが知らない10のこと

どんな人たちが、不安障害を抱えているの?
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Pixland via Getty Images
Stressed businesswoman

不安障害(社交不安障害、強迫性障害、広場恐怖症、パニック恐怖症、一般的な不安など)は、アメリカで最も一般的な心の病だ。成人の約18%がこの問題を抱えていて、年間420億ドル以上が費やされていると言われる。

この問題の実態に迫るため、イギリスのケンブリッジ大学で不安障害を研究するオリビア・レメス氏が、過去に行われた48の不安障害に関する研究を分析した。その結果、どんな人たちが不安障害になりやすいのかが浮き彫りになった。

不安は、必ずしも悪いものとはいえない。少しの不安は、私たちが安全に生きる上で役立つ。しかし、不安障害を治療しないままにしておくと、制御不能の不安や恐怖に圧倒されてしまい、その結果、日常生活に支障をきたして、やりたいことがやれなくなるかもしれない。

レメス氏は、「不安障害は、自殺や無力感、生活の質の低下といったリスクを高める可能性があります。しかし、どういった人たちが最も不安障害を抱えやすいかがわからなければ、患者や経済的な負担を減らすための対策がとれません」と述べている。

不安障害と闘っている人たちを助けるためにできることの一つが、不安障害について知ることだ。研究からわかった、不安障害に関する10のことを紹介しよう。

1. 女性は男性の2倍、不安障害になりやすい

女性は男性よりも、1.9対1の割合で不安障害になりやすい。これは昔から変わらない傾向であり、発展途上国でも先進国でも同じだった。

2. 若い人たちは不安障害になりやすい

文化に関係なく、35歳以下の人は高齢の人よりも不安障害になりやすい。これは、パキスタンを除く全ての調査対象国で当てはまった。パキスタンでは、中高年で不安障害の割合が最も高かった。

3. オピオイドに依存すると、不安障害のリスクが高まる

世界的にみて、鎮痛剤のオピオイドを乱用する人の2〜67%に不安障害の症状があり、約29%が実際に不安障害と診断された。

4. ギャンブルやインターネットに依存している人は不安障害になりやすい

病的なまでのギャンブルやインターネット依存も、不安障害のリスクを高める。病的なまでのギャンブル依存者の37%が不安障害を患っているとされる。インターネット依存者に関する調査では(ほとんどがアジアの国々で行われた調査だった)、インターネットに依存している人は、そうでない人に比べて2倍不安障害の割合が多かった。

5. 不安障害は、他の心の病や神経疾患と一緒に発症することが多い

双極性障害、統合失調症、多発性硬化症を患う人々は、不安障害になる危険性が高い。ヨーロッパでは、双極性障害を患っている人の13〜28%が不安障害を抱えていた。世界的に見ても、統合失調症を患う人の12%が強迫性障害と診断されている。また、神経系の疾患である多発性硬化症を患っている人の32%に不安障害があり、そのうち半数以上に症状が見られた。

6. 一見関係ないような病気と結びついている

循環器疾患、ガン、呼吸器疾患、糖尿病、その他の慢性疾患がある人は不安障害になりやすい。例えば、鬱血性心不全を抱える人の2〜49%が不安症状を、冠動脈疾患患者の10〜15%がパニック障害を患っていた。

また、ガン患者の場合、15〜23%が不安障害を抱えていた。ガンを克服した後も不安障害はつきまとう可能性がある。ガンと診断されて2年たった人は、健康な人に比べて、不安障害になる割合が高かった(18%対14%)。また、長期間ガンと闘って克服した人の配偶者の40%が不安障害になっていた。

7. 命に別状がなくても、慢性的な疾患がある人は不安障害になりやすい

糖尿病を患っている人たちは、健康な人と比べ不安障害になりやすい。特に、男性に比べて女性の方が、影響を受けやすいようだ。男性患者の33%が不安障害を抱えていたのに対し、女性患者は55%だった。

8. 過去にトラウマを抱えていると、不安障害になりやすい

トラウマとなる出来事を経験している人は、不安障害になる割合が非常に高い傾向がある。手足を切断したイギリスとアメリカの退役軍人の約25〜50%が、不安障害を抱えていた。また、性的虐待を受けた人の2〜82%が不安障害を報告している。

9. 妊娠中は不安障害に注意した方がいい

妊娠している女性と出産後の女性は、強迫性障害になる確率が高い。一般の人たちが強迫性障害になる確率が1%であるのに対し、妊娠している女性は2%、出産後の女性では2.4%だった。

エチオピアとナイジェリアではその割合が更に高く、妊娠中で15%、出産後で14%、特に若い女性の間で顕著だった。

10. その他の不安障害になりやすいグループは

西洋諸国のレズビアン、ゲイ、バイセクシャルは、不安障害になる割合が高かった。特に女性はその傾向が強く、男性の約3〜20%に対し、女性では約3〜39%が不安障害だった。

高齢者、特に記憶障害など認知面での問題を抱えている人の間でも、不安障害は多く見られた。軽度の認知障害のある高齢者の約11〜75%が不安障害だった。また、介護する人の4〜77%も、不安障害を報告していた。

多くの人が苦しむ問題であるにも関わらず、不安障害は「治療が必要な病」としてではなく、「単なる気掛かりなこと」として軽く扱われている。

不安障害を抱える人たちが適切な治療を受けられるよう、政府に医療サービスが整えてほしいと望むレメス氏は、こう述べている。

「今回の調査結果が、不安障害が重要な問題として認識されるきっかけになってほしいと願っています。さらに多くの研究が行われ、不安障害を抱える人が必要な治療を受けられるようになってほしいのです。メンタルヘルスは私たち全員にとって重要な問題で、基本的な人権に関わることです」

ハフポストUS版に掲載された記事を翻訳しました。

▼画像集が開きます▼

ほとんど知られていない、身体を傷つける不安障害
自傷性皮膚症(01 of05)
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自傷性皮膚症は、不安や抑うつ、強迫性障害、パニックに関連するもう1つの衝動調節障害であり、コントロールできないスキンピッキングにより特徴付けられる。患者は自分の皮膚を傷つけることで感情的な安らぎを求める。顔や腕、肩、恥部に対するものがよく見られる。\n\n自傷性皮膚症は、強迫的スキンピッキングや神経症性擦創、慢性スキンピッキングとしても知られている。ロサンゼルス強迫性障害センターによれば、この疾患が治療される場合、強迫性障害を持つ者の約23%、身体醜形障害を持つ者の27%が、二次的疾患として自傷性皮膚症も有している。\n\n治療には、マインドフルネスを基本とする認知行動療法がもっともよく用いられる。 (credit: WIKIMEDIA: KAIRYU7)
咬爪癖(こうそうへき)(02 of05)
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爪をかむ人間は多い。しかし、咬爪癖という病気もあり、その場合、爪をかむ人間の行為は強迫的となる。ただ嫌な癖というだけでなく、衝動調節障害の一種、強迫性障害の一症状となりえる。 (credit: WIKIMEDIA: JORDAN10LA)
咬頬癖(こうちょうへき)(03 of05)
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咬頬癖も強迫的性質を帯びる場合があり、抜毛癖や自傷性皮膚症、咬爪癖をも含む、身体を傷つける反復性障害の一つとされている。 (credit:FLICKR: LOLLYKNIT)
自己臭恐怖症(04 of05)
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この身体を対象とする不安障害は反復的行為を基礎とするものではないが、強迫性障害や不安、抑うつ、パニックの兆候である。否定するどのような証拠があっても、自分がひどい体臭を発しているという不合理で精神を消耗させる不安を感じる。\n\n自臭症・ブロモシスとしても知られている。自己臭恐怖症の人間は、たいてい体臭防止剤や香水、洗口剤を執拗に使い、過度にシャワーを浴びたり、身づくろいを行う。ありもしないひどい体臭に対し治療を求める場合もある。\n\nロサンゼルス強迫性障害センターによれば、現在、自己臭恐怖症は独立した診断とはならず、より一般的な強迫性障害の一部と考えられている。 (credit:Alamy)
モルジェロンズ病(05 of05)
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この謎が多い皮膚疾患は、原因不明の発疹、痛み、蟻走感(皮膚や体内をアリがはっているように感じる異常知覚)、そして時に皮膚の下に固形物ができる。病気の由来は不明である。激しいかゆみと痛みで、日常生活にも支障をきたす。\n\n疾病管理予防センター(CDC)は、あるケーススタディーでこの疾患の起源として感染症や寄生生物を排除した。その代わり、CDCの研究グループは、モルジェロン病の患者が心気症やその他の妄想性健康障害患者の精神医学的特性に非常に近接していることから、モルジェロン病が1つの精神状態である可能性があると考えている。\n\nメイヨー・クリニックは、医療検査により医学的原因が判明しない場合は精神医学的援助を求めることを推奨している。 (credit:FLICKR: KAZZ.0)

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