「ひとりなんか絶対にイヤ」アラサー以後女性の生きづらさ「結婚しときゃよかった」と思った私

ハフポストの新企画「だからひとりが好き~ひとりは社会を強くする」という見出しを見た時、「は? 冗談じゃねーよ」と思った。

ハフポストの新企画「だからひとりが好き~ひとりは社会を強くする」という見出しを見た時、「は? 冗談じゃねーよ」と思った。

リアル「東京タラレバ娘」(日テレ系:原作東村アキコ)だった私から言わせてもらうと、「ひとりなんか絶対にイヤだ」

そもそも、この社会は女性が一人で生きていくのに優しくなんてできていないじゃないか。

「ひとりでいること」は好きだけど、「この先もずっとひとりでいる」ことがしたいかというと、私はそうじゃない。

それほど、一人の生身の女性としての私は強くはない。

関西から一人で飛び出し、新卒で福祉業界の新聞記者として東京で就職した。永田町や霞が関を歩きながら日本の中枢を取材した。

その後、もっと現場を知りたくなって社会福祉士やヘルパーなどの現場向けの資格を取り、病院や有料老人ホームなどで働いた。現場も面白かったが、やはり私は情報の伝え手でありたいと思い、再び記者に戻った。

それからは医療業界の記者として、再び永田町や霞が関で日本の医療行政、政治を取材した。

医療系ネットニュースの記者をしていた頃は当時の舛添要一厚労大臣を間近に取材したこともあり、仕事の内容も刺激的で、とても面白かった。日本の中枢にある情報で、誰も注目しないが重要だと思うネタを追いかけて記事にして、ネットで拡散していくのがエキサイティングで楽しく、面白くて仕方がなかった。

その当時、付き合っていた男性から結婚を申し込まれたが、仕事に夢中だった私は断ってしまった(敢えて「しまった」と書く)。キャリアが断たれるのが怖かったからだ。

当時私が働いていた会社はベンチャー企業で報道メインの会社ではなかったため、妊娠出産などがあると、もう記者として戻ってこれないと思っていた。

とにかく今働いてキャリアを積んでおくことが重要だと思ったし、実際に手応えはあったと感じていた。

しかし30代に入ってから、仕事やプライベートが思うようにうまく進まないと感じるようになってきた。

私はロハス・メディカル以外の一般雑誌にも記事を書いたり、講演活動などもするようになったのだが、企画を持って行っても相手にされなかったり、ひどい時はセクハラされたこともあった。

仕事をもらおうとするこちらの立場が弱いと分かってのことだったので、かなり腹が立った。

自分のスタンスや扱っている内容が相手と折り合わないということはそもそもあったと思うが、そこにセクハラやパワハラが加わると、私はどんどん疲弊していった。

仕事が「頭打ちだ」と感じることが多く、息切れがしてきた。

なんだかおかしいな、と思うことが増えてきた。

20代の頃はあんなに毎日楽しくて、輝いていて、周りからもチヤホヤされて、自分は何でもできると思っていた。というか、自分にできないことはないと思えるほど怖いもの知らずだった。それほど力に満ちていた。

それが、なぜかアラサーになってから、うまくいかなくなってきた。

仕事で足元を見られ、セクハラされ、合コンに行っても自分より若くてかわいい子に男性達は集中した。

会合で自分が話し始めると席を立つ男性がいたり、女性の自分にだけ資料を渡されなかったり、という出来事があるといちいち落ち込んだ。

仕事も恋愛も中途半端、とにかく、心が不安定だった。

よりどころになるものが、なかった。

社会は、女性が活躍できるようになんてそもそもなっていないと気付いたのは、30代に入ってからだ。

女性の社会進出というのは、非常に中途半端だと思う。

確かに働く女性は増えているが、私の個人的感覚として30代に入るとに「ガラスの天井」が近付き始める。

20代の頃には見えなかったのに、30代になると急に「これ以上行けないの? 私にはやらせてもらえないの?」という感覚になる。

日本の仕事の多くは男性がキャリアを続けるようになっていて、女性もそうできる仕事は少ないと感じる。

高度経済成長期のように一家の大黒柱が家計を支え、主婦が家庭を支えるモデルで設計されている社会に、中途半端に女性の社会進出が入り込んだ結果だと思う。

20代の若い頃の馬車馬のように働く戦力としては男性も女性も変わらないものとして扱われやすいが、権力や組織といったものが大きく仕事に影響してくるようになると、女性は「一線から下がれ」と言われる無言の圧力を感じやすくなる気がする。

そして家庭では、やはり「家事、育児、介護は女が多く負担するもの」というこちらも無言の圧力を感じる。

厚労省を取材していても思った。年度の予算書を見ていると、一方では「女性の社会進出」を支えるための制度にお金がついているが、一方で在宅医療や介護にお金がついている。

その在宅医療や介護は誰がするのか? 家庭の中の誰をイメージしているのかは言わずもがなだろう。

そして「大黒柱モデル」の社会保障制度では、今の時代の貧困や老後を支えられなくなってきている。それが女性が一人で生きていく不安に拍車をかける。

結果として、女性はキャリアを続けるにも、妊娠出産育児をしながらも、働き続けるにはとても難しい社会だと感じるのだ。

アラサーも過ぎ、30代半ばになると私はどんどん疲れていった。

朝起きて、30分間ピラティスをして、綺麗にメイクをして、洋服を選んで、仕事に出かける。

昼食はお洒落なカフェでキッシュとか頼み、ノートパソコンを叩いたりして、キャリア女性のランチ風景を醸し出す。

そして仕事では、大した手応えを得られず、ため息をつく。

夜は銀座で女子会。

仕事や世の中の男性についてグチを言い、「でもいつか絶対に幸せになる!!」と豪語して、飲んで終わる。そして癒される。女子会は本当に癒されるので、大好きだ。

そして帰宅途中、満員電車で酒臭いおじさんやスマホに夢中の若者たちを見ながら、「本当に私は大丈夫なのだろうか? 幸せになれるのだろうか?」と、言いようのない不安に襲われる。

さっきまで酔っ払って熱くなっていた体が急に寒くなり、立っていられなくなる。

そして、たまらなくなって家の近くにあるコンビニに寄って、食べ物を買い込む。

帰宅後、机の上にどさっと買い物袋を置き、とにかく食べ物を胃の中に押し込む。

不安で不安でしょうがないから、不安を掻き消したくて、食べ物を胃に詰め込むのだ。

空っぽの自分の中に。

少しでも、自分を満たしたくて。

そしてふと立ち上がり、トイレに駆け込んで思いっ切り食べ物を吐く。

太ったら困るからだ。

これ以上太って、綺麗じゃなくなったら、私は世の中から認められなくなる。

もっともっと不安になってしまう。

そんなのは、嫌だ。

そんな不安を押し出すように、胃の中から物を吐き出す。

その時に、涙も一緒に押し流されてくる。

嫌だ、こんなことがしたいんじゃない。

私は幸せになりたいだけなのに、なんでこんなにうまくいかないんだろう。

頑張っても、頑張っても、全然満たされない。

仕事もうまくいかない、恋愛もうまくいかない。

寂しくて、怖い。

一人でいるのが、怖過ぎる。

こんなことなら、あの時結婚しときゃよかった。こんちくしょう。

タイムマシンがあれば、あの時の自分に会いに行って「いいから、とにかく今結婚しとけ!」と頭掴んででも言うこと聞かせるのに。

綺麗にメイクした顔が、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになる。マスカラもアイラインも落ちて真っ黒で、酷い顔だ。

朝に自分で綺麗に整えた顔を、夜は自分でぐちゃぐちゃにする。

一体何のために、誰のためにメイクしているのか。

ピラティスをして体のラインを鍛えているのか。

洋服を選んで買物をし、着ているのか、分からなくなる。

それでも世の中は、女性たちに、綺麗になれ、美味しいものを食べろ、旅行に行け、もっと買え、消費しろ、と追い立ててくる。

こんな時代に、一人で生きているのはもう限界だ。

仕事もうまくいかない、一人で生きていける自信はとてもない。

嘔吐と嗚咽が一緒になって、私は便器に抱き着くようにしゃがみこむ。

だから、一人は嫌なのだ。

ガラスの天井に頭を打たれ続けた結果、「大黒柱モデル」に必須の「主婦」が、最も安定しているように見えてくる。

女性として一番強い位置はやっぱりそれなのかと気付き始め、私のように結婚して「落ち着き」を求める女性が増えてくるのではないかと思うのだ。

だから私には、当時出会った夫の存在が救世主のように思えた。妊娠した時は子どもを授かった喜び以上に「やった! よかった!」と思ったものだ。

ようやくこれで、寂しかった、怖かった、「ひとり」をやめられると。

「負け犬」、「逃げ」と言われても構わない。

これは、表面だけ輝かしく彩られた「女性の社会進出」という社会に踊らされ、見抜けなかった私にとってのサバイバルだった。

様々な立場の女性達が、心の底から「ひとりが好き」と言えるようになる社会に少しでも近づいたら、それが本当の女性の社会進出だと思う。そんな社会になるように心から願うし、自分も何かしていきたいと思っている。

(2017年6月6日「ロハス・メディカルブログ」より転載)

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ハフポスト日本版では、自立した個人の生きかたを特集する企画『#だからひとりが好き』を始めました。

学校や職場などでみんなと一緒でなければいけないという同調圧力に悩んだり、過度にみんなとつながろうとして疲弊したり...。繋がることが奨励され、ひとりで過ごす人は「ぼっち」「非リア」などという言葉とともに、否定的なイメージで語られる風潮もあります。

企画ではみんなと過ごすことと同様に、ひとりで過ごす大切さ(と楽しさ)を伝えていきます。

読者との双方向コミュニケーションを通して「ひとりを肯定する社会」について、みなさんと一緒に考えていきたいと思います。

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