東洋を起源とする瞑想の技術、「マインドフルネス」(気づき)のトレーニングを導入する大企業が増えている。『フィナンシャル・タイムズ・マガジン』の記事によると、こうした企業では、従業員が「自分の軸になるもの」を見つけるためのコースや機会を提供しているという(マインドフルネスは仏教にルーツを持つトレーニングだが、前述の記事によると、マインドフルネスを各社で推進している人々のほとんどが仏教徒というわけではない)。
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Google社やデパートチェーンのTarget社、そして大手食品メーカーGeneral Mills社に共通するものは何か、ご存知だろうか。

それは瞑想だ。

東洋を起源とする瞑想の技術、「マインドフルネス」(気づき)のトレーニングを導入する大企業が増えている。『フィナンシャル・タイムズ・マガジン』の記事によると、こうした企業では、従業員が「自分の軸になるもの」を見つけるためのコースや機会を提供しているという(マインドフルネスは仏教にルーツを持つトレーニングだが、前述の記事によると、マインドフルネスを各社で推進している人々のほとんどが仏教徒というわけではない)。

たとえば『ニューヨーク・タイムズ』紙によれば、Google社は「自分の心をなかを検索する(Search Inside Yourself)」と名付けられたマインドフルネスのコースを実施し、これまでに1000人以上の従業員が受講しているという。

このコースの生みの親であるミラバイ・ブッシュ氏は、マインドフルネスの効果について疑問を抱く人もいるが、ストレスを減らす効果があることは研究でも明らかになっていると『シカゴ・トリビューン』紙に話している

Google社の広報担当を務めるケイトリン・トドハンター=ガーバーグ氏は、イライラとした気分を抑え、物事を深刻に受け止めすぎないようにするため、マインドフルネスを活用している、とAP通信社の記事で語っている。

いっぽう、General Mills社の副法律顧問で、同社にこのトレーニングを導入したジャニス・マルトゥラノ氏は、フィナンシャル・タイムズ・マガジンの記事の中で、マインドフルネス・トレーニングの目的は、「集中力を高めること、より明確に認識すること、創造性を引き出すこと、つながりを感じること」だと語っている。「自分自身、そして、同僚や顧客など、自分と関わりのある人への共感。マインドフルネス・トレーニングはそうしたものをめざしている」

このトレーニングを実践しているのは企業だけではない。『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙によれば、クレアモント大学院大学(Claremont Graduate University)やハーバード・ビジネス・スクールなどのビジネススクールでも、学生にマインドフルネスのコースを提供しているという。宗教的な意味はなく、頭脳を明晰にし、まずい決断につながりやすい感情的な反応に気づくという点で利点があるのだという。

以下のギャラリーでは、瞑想やマインドフル・トレーニングが人の行動や健康、脳に与える影響を研究した結果を紹介する。

7 Fascinating Facts About Meditation
脳の柔軟性が向上(01 of07)
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持続的な瞑想は、「神経の可塑性」につながる。環境に合わせて、構造的かつ機能的に変化できる脳の能力だ。\n\n前世紀の科学では、成人期を迎えたあとの脳は変化しないと考えられてきた。しかし、米ウィスコンシン大学の神経科学者リチャード・デビッドソン博士の研究によると、瞑想に慣れた人の脳では、瞑想後にも高レベルのガンマ波が発生し、特定の刺激にとらわれない能力があるという。つまり、こうした人は、自分の考えや反応を自動的にコントロールできているということになる。
大脳皮質の厚みが増えた(02 of07)
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1日に40分間の瞑想を行っている米国の男女を対象に行った2005年の研究では、対象者の大脳皮質が、瞑想をしない人と比べて厚くなっていることがわかった。つまりこれは、瞑想をしない人よりも脳の老化がゆっくりと進んでいることを意味する。また、皮質の厚みは、決断力や注意力、記憶力にも関連している。
「注意力の向上」に(睡眠より)効果的(03 of07)
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2006年には、「眠る」、「瞑想する」、「テレビを見る」という行動をとった学生が、それぞれの行動のあとの注意力を測定する調査が実施された(画面が光ると同時にボタンを押すという方法だった)。この結果からは、瞑想をしていた学生が、ほかの行動をとった学生よりも10%高い注意力を持つことがわかっている。\n
血圧低下に効果的(04 of07)
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2008年、マサチューセッツ総合病院のランディ・ザスマン医師は、高血圧の患者を対象に、3カ月間の瞑想をベースとしたリラクゼーションのプログラムを実施した。このプログラムに参加した患者は、薬による血圧のコントロールを受けていない。\n\n定期的な瞑想を3カ月間行った結果、60人中40人の患者に大幅な血圧の降下が見られ、薬の量を減らすことに成功した。この研究からは、リラクゼーションが血管を拡張させる一酸化窒素の生成にもたらす効果がわかっている。
テロメアを保護する(05 of07)
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テロメア」と呼ばれる、染色体の末端部にある保護カバーは、老化防止の科学で現在注目されている。テロメアが長ければ、長生きできる可能性も高いというのだ。\n\n米カリフォルニア大学デービス校の「シャマサ・プロジェクト(Shamatha Project)」が行った研究によると、瞑想をしている人は、瞑想をしていない人に比べてテロメアの活動が非常に高いことがわかった。テロメアの構築を手助けする酵素である「テロメラーゼ」が活性化すると、強固で長いテロメアができる可能性が高いと言われる。
HIVの進行を遅らせる(06 of07)
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リンパ球や白血球は、身体の免疫系システムの「中枢部」であり、HIV感染者にとって特に重要なものとされる。\n\n2008年にHIV感染者を対象に行った研究によると、瞑想をしていない感染者が大幅なリンパ球の減少を示したのに対し、8週間の瞑想コースを受けた感染者では、リンパ球の減少がまったく見られなかったことが示されている。\n\nまた研究からは、瞑想したあとにリンパ球が増加することもわかっている。ただし、この研究の被験者は48人と少数なため、決定的な結論とは言い切れない。
痛み止めの効果もある(07 of07)
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2012年初頭にウェイク・フォレスト・バプテスト大学(Wake Forest Baptist University)が実施した実験では、瞑想によって痛みの強度を40%、痛みの不快感を57%減少させることができ、モルヒネや鎮痛剤を使用した場合の痛みの減少率(25%)よりも効果があったという[実験では、5分間にわたって右脚に摂氏49度の装置を当て、痛みのレーティングを尋ねた。瞑想の練習を行った者では、少ない者は11%、多いものは93%減少したと答えた]。\n\n瞑想は、体性感覚皮質の活動を抑え、脳のほかの部分の活動を増加させるのに効果があると考えられている。ただしこの研究もサンプル数が少ないので、断定的な結論を出すことはできない。

[Amanda L. Chan (English) 日本語版:兵藤説子/ガリレオ]