レジ袋だけ減らしていればいいのか。プラスチックゴミの「不都合な真実」と私たちができること

せっかくの5・30。ぜひ目を向けてほしい、ゴミに関する「不都合な真実」をお届けする。

日々、新型コロナのニュースがTwitterのタイムラインを埋め尽くす。

自分や家族の命に関わりかねないどころか、教育や働き方にも強引に変革を迫っている。注目されるのは当たり前のことだ。

この記事が掲載される5月30日は「530(ゴミゼロ)の日」だ。 ゴミについて考えを巡らせるのは、今の時期は難しいかもしれない。しかし、この問題だって、すぐにではないものの、やがては私たちの命や健康に影響を与える。

せっかくの5・30。ぜひ目を向けてほしい、ゴミに関する「不都合な真実」をお届けする。

■レジ袋だけで良いのか?

「袋代も別途いただきますが大丈夫でしょうか?」

都内のドラッグストアで、レジの店員さんに訪ねられた。7月1日から全国でレジ袋の有料化が始まるが、それに先駆けて実施している店舗も少なくない。

国は海洋ゴミや地球温暖化などを踏まえた施策と説明しているが、環境問題に詳しい高田秀重教授(東京農工大)は「レジ袋だけでは十分な変化とは言えない」と指摘する。

Open Image Modal
高田秀重教授(東京農工大)
本人提供

有料化の対象となるレジ袋(プラスチック製買物袋)は石油から作られる。しかし、高田教授によると「使う石油の量で考えても全体のプラスチックゴミのなかでは1%から2%程度」でしかない。

高田教授によると、自然環境に出てくるプラスチックとしてはペットボトルが多い。こうしたプラスチックは川から海へ流れ出て、日光や波の影響で細かく砕かれマイクロプラスチックへと姿を変える。

Open Image Modal
台風19号の大雨で増水した多摩川の河川敷に流れ着いたペットボトルやプラスチックなどのごみ(2019年10月)
時事通信社

このマイクロプラスチックは、海中の有害化学物質と結びつくことがこれまでの研究で明らかになっている。こうしたマイクロプラスチックを吞み込んだ魚を人間が食べることで、体内に化学物質が取り込まれている可能性もあり、さらなる研究が待たれている。高田教授によると、こうした物質は「人間の生殖機能を低下させるほか、免疫系にも影響があります」という。

レジ袋の有料化は、身近なプラスチックゴミの存在を意識するきっかけにはなる。しかし、それだけでは海中に漂うプラスチック問題を解決することにはつながらず、「レジ袋だけで良いのか問題提起すべき」と高田教授は指摘している。

■「リサイクルではない」

廃プラの有効利用率86%ー。

プラスチック循環利用協会が発表している2017年の数字だ。単純焼却や埋め立ては14%で、プラスチックゴミのほとんどが有効に使われているように思える。

ただ、86%の「中身」を見ると違う感想を持つかもしれない。

有効利用されている86%は、重さに直すと775万トン。このうち、素材として再利用されたり、原料の石油などに戻されたりするのは251万トンと3割あまりだ。

では、残りはどうなるか。燃やされるのだ。燃やして発電に使われたり、熱として活用されたりする。ゴミ焼却場の近くに温水プールが建てられているのもこの一環だ。こうした活用方法を「サーマルリサイクル」と呼ぶ。

「燃やすことで二酸化炭素が出て、温暖化を進めることになります。“リサイクル”と呼ばれていますがそれは間違いです。エネルギーは回収していますが、(資源の)循環が断たれてしまいます」と高田教授は話す。

再び資源や石油などとして有効活用されるものと、燃やされてしまうもの。

同じプラスチックゴミでも、なぜこうした違いが生まれるのか。その答えは「汚れ」にある。高田教授が解説する。

「燃やされるものは汚れたプラスチックです。(食べかすなどの)汚れを洗わないとリサイクルができませんが、手間をかけるとその分エネルギーがかかるため燃やされてしまう。今までは、汚れたものは人件費の安い東南アジアなどに輸出して、汚れを取ってもらってリサイクルしていたのが実態ではないでしょうか。

しかし、輸出できなくなり、日本国内で綺麗にする体制も整わず、結果的に燃やされてしまうことになったと思われます」

Open Image Modal
食べかすがついた容器は焼却されるケースが多い
FotografiaBasica via Getty Images

ここまで来て、ようやく気づいた。汚れが問題ならば、洗ってから捨てれば良いのではないか。そうすれば、本来燃やされるはずだったプラスチックゴミが、資源などにリサイクルできるのではないか。

「それはありますね。プラスチックを使うのであれば、リサイクルし易くするのが大事です。綺麗であること、そして色々な素材が混ざっていない、例えば紙と貼り合わさっていないことなどが重要です」

レジ袋が有料化されることで、マイバッグの活用などに注目が集まっている。こうした動きは確かに重要だが、さらに「もう一歩」を付け加えることで、環境へのダメージをさらに減らすことができる。高田教授は話す。

「新型コロナの影響でテイクアウトも増えていると思います。プラ容器も多いと思いますが、なるべく紙や繰り返し使う容器で販売している店を選ぶのも大切です。捨てるにしても、汚い状態ならゴミですが、綺麗にすれば資源になる可能性があります」

ハフポスト日本版では、ゴミゼロの日に「#530わたしの一歩」と題して生放送を行います。

放送は30日の午後1時から。最初のセッションでは、この記事でも取り上げたデータをもとに、一人一人の市民やメディアにできることは何か考えます。

番組URLはこちらから(Twitter / YouTube)。

Open Image Modal
#530 わたしの一歩 session1
HuffPost Japan