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2016年01月04日 15時47分 JST | 更新 2017年01月03日 19時12分 JST

錦織圭選手「2世」は育つのか カギ握る米国修業

次の錦織選手に。子どもたちの夢はそう簡単ではない。武市社長は1人でも多くの選手をアメリカ修行に送るため、クラウドファンディングで資金を募っている。

朝日新聞社撮影

小さい頃からの海外経験が大事

男子テニスの錦織圭選手が2014年の全米オープンで準優勝して以来、日本のテニス人気は高まっている。全国の20歳以上の男女約1200人に「好きなスポーツ選手」を聞いたところ、大リーグのイチロー選手を抜いて錦織選手が初めて1位になり、「好きなプロスポーツ」では、テニスが3位に入った(中央調査社調べ)。

次の錦織選手になりたい----。全国各地の子どもたちがそんな夢を見ているものの、そう簡単ではない。

そもそも錦織選手は幼い頃から、世界を意識して育てられてきた。名前の「KEI」は外国人でも発音しやすい名前として付けられ、5歳からラケットを握った。10代で渡米、2006年には全仏オープン・ジュニア男子ダブルスで優勝している。17歳でプロに転向。生まれたときから「日本一」は頭になく、「世界一」だけをめざしている。

「テニスを始める子どもたちが増え、将来のスター候補も出てきた。このチャンスを生かさないともったいない」。テニスの全国大会の運営などを手がけ、各地で若いテニス選手を見続けてきた、「スポーツサンライズ」(東京都)の武市広治社長はそう話す。「世界で活躍するためには、錦織選手のように、小さいうちから『海外』を経験するべきです」。

朝日新聞社撮影

伝説のIMGアカデミーに派遣

スポーツサンライズは、全国各地のテニス関係者と協力して、毎年「TOMAS CUP」というテニスの全国大会を開いている。約15000人の中から予選を勝ち抜いた選手が参加し、「10歳以下」から「18歳以下」の五つの年齢別に計10人の優勝選手を選ぶ。

武市社長は、今年夏からこの10人のうちできるだけ多くの選手を、錦織選手も学んだ米国のスポーツ選手養成施設「IMGアカデミー」に10日間派遣するもりだ。

授業料や渡航費など1人あたり65万円かかり、大会の収益などを使って派遣できるのは、せいぜい2人が限度。残る8人のうち、1人でも多くの選手をアメリカに送るため、クラウドファンディングで資金を募っている最中だ

IMGアカデミーは、リゾート地として知られる米フロリダ州にある。スポーツマネジメント会社が経営し、世界のトップクラスの選手が集まる施設だ。1970年代に米国のテニスコーチが作った寄宿制のテニス選手養成施設が前身で、テニスだけでなく、野球、バスケットボール、サッカー、ゴルフ、ラクロスなど多くの競技を教える。

錦織選手以外にも、マリア・シャラポア選手や仁川アジア大会の男子シングルスで金メダルを獲得した西岡良仁選手らを育てた。広々としたテニスコートで練習することで、「選手のプレーが大きくなる」と好評だという。

スポーツサンライズ提供

錦織選手は「盛田ファンド」を活用

プロを目指す選手だけでなく、海外生活を経験して、将来の留学や仕事につなげたいと考えて入所する日本人も少なくない。学校教育の「延長」と見なされがちな、日本の部活動と違い、スポーツが本来持っている楽しさをコーチが伝えたり、世界で戦うための目標設定や自身のキャリアを組み立てる手法を学んだりする指導法にも定評がある。ただ、最新鋭の設備と有名なコーチの授業料などを含めると多額の費用がかかる。

 「10日間という短期間の派遣。技術が飛躍的に向上するというより、子どもたちの意識が変わるはず。子どもたちにとっては、スイッチが入る場所。日本の外に知り合いができ、世界を意識する。将来、テニス以外の道に進んだとしても、きっと忘れられない経験になる」。武市社長はそう強調する。

錦織選手の渡米を支えたのは、ソニー創業者の盛田昭夫氏の実弟で、日本テニス協会の会長をつとめた盛田正明氏だ。出張時もラケットを持ち歩くほどの経済界の大物。私財を投じて「盛田ファンド」を2000年につくり、幼い錦織選手を発掘したあとは、渡米を支えてきた。

今回、武市社長がチャレンジしているのは、「クラウドファンディング」。大手企業や資産家が育てるのとはちょっと違い、一般の人たちがお金を少しずつ出し合うことで、次の錦織選手が生まれるきっかけになるかもしれない。

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