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2016年03月23日 15時44分 JST | 更新 2017年03月23日 18時12分 JST

カンボジアで聴覚障害者対象の美容技術指導プロジェクト始動

2016年2月15日、カンボジアの美容サロンで新たな挑戦を始める5人の女性たちがいた。

彼女たちは皆、耳の聞こえない聴覚障害をもつ18〜23才の女性たちである。

約20年続いたカンボジア内戦に終止符が打たれた1991年からたった25年しか経っていないことを考えると、カンボジアでは最近まで内戦が続いていたことを改めて実感する。

そのため、多くの人は地雷や内戦といったイメージが多いカンボジアかもしれない。しかし、そんなカンボジアで、若い女性起業家が挑戦する新たな取組みを紹介したい。

5人の聴覚障害のある女性たちへの美容技術指導プロジェクトだ。

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カンボジアで美容室「Bi Salon」を経営するカム・ケムラさん

■障害があることで自分の夢を叶えることができない女性たちに自信を

「同じ女性として、彼女たちはとても美容に関心を持っています。しかし、話せない・聞こえないという、持って生まれた障害のためになかなか自分の希望や夢を叶える機会に近づくことができません。家族に身の回りの世話をみてもらって生活している人がほとんどです。そんな状況を目の当たりにし、美容という分野であれば、何か私にもできることがあるのではないかと思い、このプロジェクトを始めることにしました」来月出産を控え、臨月の大きなお腹のカム・ケムラ(28歳)は、そう話す。

彼女が、自分の経営する美容室(Bi Salon)をオープンしたのは2011年8月。きっかけは、東日本大震災だった。日本で震災を経験した彼女は、自分の国の為に何かできないかと考え帰国する。同世代の女性に誇りと自信を持って仕事をして欲しいという想いから美容サロンをオープンした。彼女が24歳の時のことだ。

それから約5年。

Bi Salonは、20人のスタッフを抱え、2店舗を構えるサロンに発展した。新たな挑戦は、耳の聞こえない聴覚障害の若い女性たちが、高い技術を身に付け、自信と誇りを持って働けるようにすることである。

以前から、Bi Salonはカンボジアに拠点をもつDeaf Development Program(DDP)* にて、ヘアカットやメイクのボランティア活動を行ってきた。この背景には、DDPから職業訓練の要請はあったものの、「収入のためにやるのではなく、やりたいと思って美容の仕事を始めてもらわないと続かないと思っている。」というケムラの想いがある。

(*DDP: http://www.ddp-cambodia.org/)

DDPでの施術紹介などを通じて、美容に関心を持つ女性たちがいることは実感していた。

今回、アジア女性社会起業家ネットワークを通じて知り合った日本財団とも連携し、DDP から美容に関心のある女性たちから5人を先発し、遂に3カ月間の研修プログラムを開始した。女性として、美容には関心があるし、話すことができなくても、技術を磨けば美容施術は可能であると考えた。

 

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Bi Salonのメンバーたち

■自然とみんなが手話を覚えるように

「私だけで実現することはできません。スタッフたちとも話をし、理解と協力を得て始めました。『障害者だから可哀想』ではなくて、しっかり彼らにスキルや自信を持ってもらい、勉強で終わらせず、社会に出て実際に働いて欲しいと思っています」とケムラは話す。

3カ月間の研修を通じて、質の高い技術を身につけてもらい、自分の経営するBi Salonも含めて、実際の店舗で働いてもらうことを想定しているという。

3カ月の研修は、まだ始まったばかりだ。

言葉を通じての意思疎通ができないが、実際に先輩たちの施術の様子を見たりしながら必死で5人は技術を磨く。その一方で、Bi Salonのスタッフも自然と手話を学び、意思疎通を図りながら互いに技術向上を目指す。

研修開始から約1カ月。

Bi Salonにきて初めてまつ毛エクステやネイル、ヘアケアの技術を学ぶ女性たちは、既にお客さんへの施術を少しずつ始めていた。

「とても一生懸命に学ぶし、熱意もあるから、しっかりと技術を身につけています」と、Bi Salonで受付を担当するワンタさん(25才)は話す。そう話をしながらも、お客さんへの施術の様子をチェックし、「もっと技術を向上させないとね」と手話を通じて、見習いである聴覚障害のスタッフに伝える。

日本では、2013年に障害者雇用率を2%に引き上げることが閣議決定され、2016年4月には障害者雇用促進法が改正される。

■障害ではなく、個々の持つ個性として

個々の興味と特技をあわせた仕事を生み出すことが、カンボジアの若手女性起業家によってカンボジア国内で始められている。

複数ステークホルダーが連携しながら、カンボジア人の女性起業家が自分にできることからという気持ちで始まった本プロジェクト。

3カ月の研修の後、生き生きと自信を持って美容の仕事に就く彼女たちに再会するのが楽しみである。

(文・アジア女性社会起業家ネットワーク・一般社団法人 re:terra 渡邉さやか)