PRESENTED BY エン・ジャパン

世間知らずの学生からエース級の活躍へ。スタートアップ企業へ入社するまでのドキュメント

未経験なうえ、面接にはスノーボードウェアで来たという破天荒ぶりを見せた若者が、現在はエース級の活躍を見せているという。一体何故彼は採用されたのか? そして成長することができたのだろうか?

社会人経験ゼロの若手を採用したGoodpatchとエウレカの特別企画後編。"採用する側"であるCEOの土屋さん、赤坂さんの視点から、「実務未経験で入社しても、わずか数年でエース級の活躍をする若手の要件」を探っていきます。

▼Goodpatch×エウレカ座談会の第一弾記事はこちら

ホントは採用していない? ドタバタの入社劇

― 前編で、「実は赤坂さんは山下さんを不採用にしている」というお話がありました。貧血を起こして不採用になったのに、なぜ山下さんは入社しているのですか?

赤坂:

まず、面接に上下スノボウェアで来たんです(笑)。「寒かったから」という理由らしいんですけど。来た時点で「コイツ、スゲェごわついている」というところから始まっているんですよね。

面接が始まると『Himapupepo』を見せながら、「こんなことやってきました」って感じで。で、どうなりたいの?って聞くと「起業したいんです」と。だから、起業したいのになぜ就職するの?って聞いてみたら、「実は相方もGoodpatchさんに就職して...」って話し出して。整理すると、「"起業しようとは思っているけど、相方も就職したし、俺も就職するか"みたいなことだよね?」って聞いたら、「いやいや、起業ですよ」と(笑)。

だんだんコイツ素直じゃないなって心理になってきて、「え? 起業しないの? 起業すればいいよ。今、起業しなよ」って言ってみたら、額から汗がボタボタボタって。

エウレカ CEO 赤坂優さん

山下:

貧血を起こして...。赤坂さんには確かに落とされたんですけど、実はその日のうちに西川さん(エウレカCOO)から二次面接をやるという連絡をもらって。というか、元々西川さんが面接してくれるっていう話だったんです。当日になったら赤坂さんが出てきて、ボロボロにされて...。

― 話が違うじゃないか、と(笑)。

山下:

ちょっと思いました(笑)。西川さんは会社の説明もしてくれて、「じゃあいついつからおいでよ」って話になって。他のアルバイトも一切辞めて、2014年2月からエウレカに入りました。でも赤坂さんの顔はしばらく見れませんでしたね。バレないように仕事をしていました(笑)。

― 社長は不採用にしたのに、取締役が採用したという形だったと?

赤坂:

山下の面接のあと、西川に「さっきの彼、大丈夫なの?どうだったの?」と言われて。いや『Himapupepo』っていうよくわからないサービスつくってて、普通にPHPができるからイケると思うんだけど、起業したいのか就職する気があるのか、よくわからないんだよね、とボソッと言ったんです。

一同:

(笑)。

赤坂:

すると西川が、「わかった、次は私が面接やるから赤坂くんはもう出なくて大丈夫」と言われて(笑)。西川は、相手の良さを引き出そう、というモードで取り組んでいるので、まぁ無事に。

― 小林さんはどうだったんですか?

土屋:

本当に猫の手も借りたいような状態のときに面接に来てですね、どういうものをつくってるの?と聞いたら『Himapupepo』を出してきたんです。出してきたんですけど、見せてきたiPhoneの画面がバッキバキに割れていたんです。

一同:

(笑)。

土屋:

めっちゃ割れてて、デザインがよくわからないので、ユーザー何人いるの?って聞いたら「30人くらいです」。1クラス分じゃん!と(笑)。でもどうしても入りたいという熱意はあったので、アルバイトでって感じでしたね。

Goodpatch CEO 土屋尚史さん

私生活では"ダメ系"。だけど、エンジニアリングもデザインも大好き。だから我慢できるし、がんばれる。

― お話をうかがっていると、未経験とはいえベースはあったことが採用の決め手になったように思うのですが。

赤坂:

ベースはありましたね。自分たちで創作活動していたからかもしれないんですけど、自己流とはいえスキルはあったので、本当にウチでは即戦力でしたよ。PHPのベースがあったからFacebookアプリをつくることもできたし。伸びたポイントでいうと、おそらく日本で1番Facebookアプリをつくっているんですよ。あと、日本で一番バズったアプリをつくっているんです。入社してしばらくしたら、Facebookアプリのマスターになっていましたね。

土屋:

小林は入社して1ヶ月でMEMOPATCHのデザインをやってくれて。今もデザインはあまり変わっていないんですね。そういう意味では即戦力といえば即戦力ですね。

あと、採用の決め手の話をすると、彼らが『Himapupepo』をきちんとつくりきったということは重要ですね。たとえ30人くらいにしか使われなかったとしても、全部動く状態でローンチしているということが。途中までがんばりましたとか、今つくっていますという状態だとダメですね。

赤坂:

本当にそうですね。2人は学生のときのチームでも、実は開発ではリードする側にいたらしいんですよ。結局周りは何もやらないから、彼らで完結させておくぐらいの感じだったらしくて。だから、2人だけでもモノづくりはしたし。あと、この2人私生活はダメ系なので、結局好きじゃなきゃやらないんですよね。ダメ系人材だけど、インターネットエンジニアリングやスマートフォンデザインっていう領域においてはとにかく好きだから普段やらないこともやるし、我慢できるし、悔しいし、成長もできるっていうのはあるんでしょうね。

― 負けず嫌いなんですね。

土屋:

使えなかった時期の話でいうと、デザイン経験ないくせにヘンな自信があるんです。唯一僕に食ってかかる。僕が全然ダメと言うと、「何でですか!? 僕はこういう考えで、コレをつくったんです」と。でも僕が論破すると、泣くんです(笑)。

小林:

いや、1回だけですよ。

土屋:

1回じゃないよ。俺が知っているだけでも3回は泣いたよ。僕もかなりバーッと言っちゃうほうなんですよね。小林も話を聞きながら耐えているんですけど、涙が勝手に出る。でも、それがあるから伸びたんでしょうね。

新米社員、社運のかかったサービスを担当する

― お話をうかがっていると、会社の成長フェーズが採用するうえで重要だったんじゃないかと思うんです。会社としても若手を採用するキッカケになったというか。

赤坂:

2年前は会社的に受託の時代だったので、山下には最初、Facebookアプリにコミットしてたんですけど、『pairs』や『Couples』といった自社サービスが立ち上げにも並行してやってもらったんです。特に、『pairs』はFacebookを使ったマッチングアプリなので、Facebookユーザーをとにかく確保するというミッションもあったんですね。で、日本で一番Facebookの「いいね!」持っているところを抜くぞ!みたいな感じで、とりあえず年末に1本つくってみたら17万人集まったんです。で、年明けにもう1本出したら40万くらいになって。これ100万いけるんじゃね?みたいな雰囲気になってきたんです。で、山下に「これから日本一Facebookアプリつくるから!」って言って、とにかくつくりまくって、彼自身FacebookAPIなら俺に任せろみたいな感じになってきたんですよね。

ただ、結局iOSとかAndroidとかのアプリはつくれないし、サーバサイドも微妙。焦りはあるし、隣の芝は青く見えるから、周りの人が自分の苦手領域でプロになろうとしていると"俺もやりたい!"みたいな感じになってくるんです。自分の得意なところを捨てて行こうとするから、「ちょっと待て。こっちも大事だよ」って(笑)。

山下:

Facebookアプリって、PHPの知識があって、がんばればできるんですよね。コアなプログラミングの知識がなくても。当時、本当に一生懸命やっていたのに、社内の誰かが冗談っぽく「お前Facebookアプリしかできないじゃん」と言うので、悔しくて。CTOとの面談で「いろいろやりたい」と言ったら、「やりたいことが多すぎるから、とりあえず一つにコミットしてみろ」となって。それがサーバ周りだったんですよ。当時、アクセスが急増していてレイテンシがすごく遅かったり、クラッシュが多かったりといった事態が頻発して。そのトラブルを解決するという任務を与えられ、とにかくコンマ1秒でもレスポンスを早くするということを徹底的にやったんです。結果、売上が爆発的に伸び始めたんですよ。

土屋:

小林も全く同じような経験をしていて、おととしウチが新サービスProttを立ち上げるってなったときに社内で手が空いているのが彼以外いなかったんですよ。で、Prottのデザインを任せたんですけど、それまでって半年くらい1つのプロジェクトにコミットってことが少なかったんですね。受託で細切れで仕事をしていたので。でも、受託は面白い仕事も多くて、他のデザイナーたちは楽しそうにやっているわけですよ。でも、小林はProttしかできなくて、みんなでミーティングやる度に納得いかない表情を浮かべているんです。モチベーションも劇的に下がって。

小林:

自社サービスのメインデザイナーにアサインされ、必要とされるサービスを作りたいというモチベーションはありましたが、周りの案件は面白そうだし...。一番辛かったのは、作るもののコンセプトが固まっていなかったので答えのない道をひたすら突き進んでいるような感覚だったことです。メンバーは何を基準にして意見を出せばいいのかわからないので、意見を出しづらかったと思います。なので、メンバーから見たら「辛そうだな」というのはあったかもしれないですね。

― 土屋さんとしても不安はなかったんですか?自社の命運を左右するかもしれないサービスを新米デザイナーに任せるっていう決断に。単にプロジェクトが終わったタイミングだったってだけの話じゃないような気がするんですよね。

土屋:

そうですね。...やっぱり僕の感覚に似ているんですよね。僕は会社全体を見なければいけないので、Prottにめちゃめちゃコミットするわけにもいかない。だから感覚が近いデザイナーにつくってもらいたいという気持ちがあったんです。任せてみたら、イメージどおりのデザインを上げてくるんですよね。2人で「これはイケてるな」って。でも実装してみたらめちゃめちゃ使いづらい(笑)。こんなの絶対無理だろって(笑)。

― 感覚が近いのは、中途採用と違ってまっさらな状態でGoodpatchに入って、土屋さんの薫陶を受けながら育ったという背景もあるんですかね?

土屋:

あると思います。純粋にウチで育ったデザイナーですからね。

小林:

入社した頃土屋さんから言われていたのが「スポンジのように何でも吸収しろ」ということで。デザインを出して自分の思惑とは違う意見が出ることもあるけど、糧になるように噛み砕いて吸収するように、というのは言われていました。その姿勢は今でも持ち続けていますね。

コンプレックスを原動力に

― 最後に、CEOのお2人の考える"活躍できる若手人材の要件"を教えてください。

土屋:

小林の場合はデザインが死ぬほど好きっていうのがあると思います。だから、考える時間がどれだけ多いかというのは重要ですね。普通の会社なら19時とかに帰るわけですけど、好きだったら帰っても仕事のことを考えているんですよ。というかやるべきなんですよ。僕も若いときは知的好奇心が強くて、食事とか物理的に取られる時間以外はずっと考えていたんです。土日に遊びに行ったりっていうのはいいんですけど、毎週行くわけじゃないでしょ、と。トップランナーがいる以上、土日でも仕事に時間を割かなきゃいけない。僕が若いときは、土曜日は基本的に"投資"に充ててたんですね。学校通ったり、イベントに出たり、本に1ヶ月1万円使ったり...。

赤坂:

僕も同じことを言っていますね。最近面接していると地頭のいい子が多いんですよ。その子たちを育てることになったとき、偏差値60まではいけるんですね。でも、70、80を取りに行かなきゃいけないわけで。そのためには、好きということが大事ですね。

あと、必要なのはやっぱりコンプレックスですね。生きていればみんなあると思うんですよ。あいつに負けたくないとか、学歴がない、稼ぎが少ないとか、あと小学生のときは人気者だったのに、今はないな、とか(笑)。

そういうのも全部含めて、上に行きたい、見返したい、日の目を浴びたいというのがあるとすごい強いですよ。目指す先がブレないし、そこまでの原動力もある。その源泉にあるのがコンプレックスだと思います。第二新卒が強い理由もコンプレックスだと思いますね。

土屋:

まさに最初の就職ができなくて、という。

赤坂:

第二新卒いいですね。僕が採用で一番狙っているのは、メガベンチャーの第二新卒で。理由はやっぱり地頭の良さは担保したうえで「大手くそくらえ」って思っている子がいるからです。きちんとマインドセットしてあげれば伸びますね。他にも院まで行っちゃったけど、遊んじゃって、同級生は既に就職していてってやつは、出遅れている時間を取り戻そうとするので、追い上げるんですよね。

土屋:

2人はコンプレックスあるの?

小林:

しゃべりがめちゃくちゃ下手なんですよ。人に想いを伝えることが苦手なので、デザインを出しても共感してもらえないことがすごくツライですね。でも、だからこそ最近は自分の作ったもの意図をメンバーに共感してもらえるように、幅広い知識を身につけ、相手に納得してもらえる知識をいつでも引き出せるように意識しています。

山下:

学歴はありますね。僕の下の子が慶應出身なんですけど、大学名を伝えたら「え? どこですか?」みたいになって(笑)。やっぱり恥ずかしかったし、一緒に働いているなかでそういう人たちには負けたくないし...。というので、コンプレックスはすごい感じています。

― ちなみに、CEOのお2人にコンプレックスってあるんですか?

赤坂:

僕も学歴もそんなによくないし、最初に入社した会社の広告商品が全く売れなかったとか沢山あるんですけど、会社を始めてからのコンプレックスといえばカンタンで。「誰も会社のことを知らない」ってことなんですよ。売上が伸びない。採用しようにも人も来ないし、そもそも人を雇えないし。今まで会ってた人と名刺交換しても、「ふーん、会社始めたんだ」「どうせ一人しかいないんだろ?」みたいな感じなんですよ。「ちょっと前まで逆だったけど!?」みたいな。なめられてたのが悔しかったですね。

土屋:

僕の場合は、大学はまず中退ですし、これまで勤めていた会社も長く続いたことがない。全然有名じゃないし、大阪だったし。でも、一番は起業したタイミングですかね。このスタートアップブームの勃興期に東京で起業して。2人で会社をつくったんですけど、半年で相方が転職しちゃうし、当然名前は知られていない。でも同期の起業家たちが出資を受けたりしていると、今に見てろ!みたいな。売上が伸び始めたときも、「この人採用したい!」という人と出会っても、「婚約者に大企業に行ってほしいと言われました。申し訳ありません」って。本当に悔しいですよね。今に見てろ!って思ってました。

赤坂:

そういうもんですね。社員が電話で「エウレカです」って挨拶して、きっと「もう一度御社名よろしいですか?」って言われているんでしょうね。「エ・ウ・レ・カ・で・す」って復唱しているのを聞く度に、"社名、俺のせいだ"って(笑)。まぁ認知度が高まっていないのは僕のせいだと思うから、今日も明日もがんばろうって感じですね。

― 最後はお2人のコンプレックスをお聞きしてしまいましたが、スタートアップが新卒や若手を採用する価値、そして見極めるポイントについては深く知ることができました。今回はありがとうございました!

[取材・編集]松尾彰大[文]田中嘉人

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