巷に酵素と言う言葉があふれるようになりました。
酵素を研究しているものとしてはなんともうれしい限りですが、酵素飲料、酵素ダイエット、酵素栄養学…
あれれ?本来の酵素とは異なる、なんだかおかしな機能が付け加わった”酵素”が広がっている現状を考えると、一言申し上げる必要があると思います。
今回は単純に酵素について一般的な話を一言二言(もしくはそれ以上?)つぶやいてみようと思います。ご存じの方はご容赦いただければと思います。
■酵素は元素?
新鮮な果物には酵素がいっぱい?
酵素は、酵”素”と書いてあるところからして、もしかすると、水素とか酸素などの仲間?と誤解されているのかもしれません。
もちろん、酵素の中には水素やら酸素等、いろいろありますが、それは酵素を構成する元素の名前なのであります。ですが、酵素という名前の元素は存在しません。
周期表というものをご存じでしょうか?周期表はこちらをご覧ください。
文部科学省:一家に一枚周期表より
ご覧のように、元素周期表のなかには全く酵素は見つかりませんね。あんまり知られていない、すいへ~り~べ~、などの元素より下の方にもありませんよ。
酵素はこれら元素がたくさんつながってできた分子です。
■酵素って栄養の一種なの?
さて、お次は、栄養素という観点から酵素をみていきましょう。
古くは家庭科で習った”三大栄養素”を覚えていらっしゃるでしょうか?
炭水化物・脂質・蛋白質
でしたね。このうち蛋白質は、アミノ酸が数珠つなぎになってできあがった分子です。蛋白質とはこんなものです。
文部科学省:一家に一枚たんぱく質より
これら3代栄養素は、消化管で分解され、吸収されて我々の栄養分になっていくのであります。蛋白質の場合、アミノ酸まで分解されたのち吸収され、主として我々の体の中の蛋白質となって活躍することとなります。
ところで、酵素というものは,その体のほとんどは蛋白質でできています(蛋白質以外のものもありますが、それはごくごく小数ですので、ここでは言及しません)。
ということで、酵素は経口で摂取すると、ご多分に漏れず消化酵素で分解され、酵素としては全く機能しないアミノ酸になってしまいます。また、酵素はデリケートな分子でして、もちろん分解されたら全く機能しませんし、ごく一部分解されただけでも全く機能しません。仮に,消化酵素から逃れられたとしても、本来働くはずの条件と異なるだけで何の役にも立たなくなります。
あ、ちなみに酵素の働きとは、化学反応の触媒です。消化管内で蛋白質を分解するのも酵素反応ですし、体の構成成分、例えばコラーゲンを作るのも酵素反応のおかげです。
もちろん、酵素自身も酵素の働きで必要なときに必要なだけ作られます。すなわち、食事から摂取した蛋白質をアミノ酸まで分解し、改めてアミノ酸から作り直しているのです。
ですから、通常の食事をしていれば、酵素は必要なだけ供給されます。
ただし、すべての酵素が蛋白質だけで触媒作用を示すわけではないので、金属イオンやその他ビタミンなどの分子を食事から摂取する必要があります。
酵素は時として有用な分子を作る触媒として非常に素晴らしい作用を示しますが、決して魔法でもないし、超越した能力もありません。蛋白質でできた触媒に過ぎないのです。
もし、酵素の真実をもっと知りたい方がいらっしゃったら、まずは以下の本をお読みになると良いと思います。
藤本大三郎さんの本はとても読みやすいですのでおすすめです。
著者藤本 大三郎
価格¥ 864(2014/11/14 00:37時点)
出版日1996/12/19
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新書188ページ
ISBN-104062571528
ISBN-139784062571524
出版社講談社
こちらもおすすめですが、絶版かもしれません・・・。
著者中村 隆雄
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出版日1998/02
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単行本146ページ
ISBN-104762218766
ISBN-139784762218767
出版社学会出版センター
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(2014年11月13日「Chem-Station」より転載)