サイボウズ式:「炊事」とどう向き合うか

家事を担当するにあたって、まず毎日遅滞なく行なわなければならないのが、炊事である。

【サイボウズ式より】

テクニカルライター/コラムニストの小寺信良さんによる、「techな人が家事、子育てをすると」というテーマのエッセイです。

文・写真:小寺 信良

家事を担当するにあたって、まず毎日遅滞なく行なわなければならないのが、炊事である。

掃除や洗濯は多少遅れても今すぐどうこうなるものではないが、食事の支度だけはそうはいかない。朝は子供を決まった時間に学校にやらなければならないし、夜は夜であんまり食事が遅いと、それ以降のスケジュールがどんどん押していってしまう。自分一人なら食事時間やその質などどうにでもなることだが、家族の分も担当するとなると、決まった時間に食事が提供できなければ、「健全な家庭」の運営に支障が出ることになる。つまり家事のうち、これだけは定時タスクなのである。

朝はまあ手早く支度できる方法は数多くある。メニューをいくつか定番化し、子供が出る時間から逆算しながら、毎日こなしていくうちに次第にペースが掴めていくものなので、それほど心配はなかった。

だが夕餉の支度には、それなりに時間がかかる。食事時間を何時に設定し、その前の時間帯を空けられるか。作るだけでなく、子供と食事を楽しむ時間、食事後の後片付けの時間まで含めて、かなりの時間帯を確保しなければならない。働きながらの家事では、そこが一番難しいところである。

うちの場合は、夕方18時半から調理スタート、だいたい19時から19時15分ぐらいに食事開始、20時に団らん終了、その後15分で洗い物などの片付け、という具合にスケジュールを組んだ。たまに都合で10分~15分後ろに押すこともあるが、原則的にはこの時間を守っている。打ち合わせなど外に出る用事はだいたい17時頃までに先方を切り上げれば、この時間帯に間に合う。

直面する「手荒れ」

炊事の効率化のノウハウは数多い。ただこればかり書いているとなかなか他の家事項目に進めないので、本連載では僕が直面あるいは実践した順に書き進んでいこうと思っている。

僕は料理すること自体はそれほど苦ではなく、むしろ楽しんでやっているのだが、意外なところで問題が起こった。洗い物過多による手荒れである。

元々肌は弱い方でもなく、これまでも時折皿や鍋を洗うこともあったが、夏場だろうと冬場だろうと、特にどうという事もなかった。だが毎日それなりの量の食器を洗っていると、1カ月ほどした頃から指先がひび割れてしまうようになった。

指先のひび割れの原因は、主に油分の低下と、その後の乾燥と冷えである。つまり食器用洗剤によって指先の油分が失われるわけだが、それをそのままにしておくと、皮膚表面が硬くなって弾力性が失われ、何かのきっかけで割れるということである。

痛さはそれほど問題ではなかったが、指先がガサガサしているとあらゆる作業に支障が出る。洗濯物にガサガサが引っかかって糸がほつれてしまうというのはよくある話だが、モノカキとしてはキーボードの角が引っかかってタイプ効率が落ちるし、タッチパネルは反応が悪くなる。かといって治療のためにクリームなど塗ると、今度はキーボードがねちょねちょしたり液晶が汚れまくったりするので、これは地味に不便だ。

そこで水仕事用として、薬局にてシリコンの手袋を購入した。箱に100枚とか入って500円程度で売られている、使い捨てタイプのものだ。これが意外に効果的で、ひび割れは1週間程度ですぐに治った。

ただ、手袋は調理のときには向かない。やはり包丁や食材を触るときは、指先でその感覚を確かめている。例えば素手で肉を触ったあと、手がぬるぬるしていれば、これはちゃんと洗った方がいいなといったことが肌感覚としてわかるのだが、手袋をしているとそれがまったくわからない。そもそもシリコンは、水に濡れるとぬるぬるするものなのである。

つまり手が汚れていても気が付かずにほかの食材を触ってしまって、生臭さが移ってしまったりといった失敗が起こった。よく社員食堂などの調理師の人はビニールの手袋をして調理しているが、これは慣れないと相当に難しい作業だと思う。

またシリコン手袋は、食材がよく滑る。魚もよく滑るが、よく失敗したのが豆腐である。手のひらに乗せて包丁で切ると、切った状態のままでソフトに握る事ができず、指からどんどん滑り落ちてしまう。50がらみのおっさんがスケキヨみたいな手から豆腐をこぼしながらワチャチャチャとか言ってる姿は、何か縁起の悪い妖怪みたいで、大変見た目がよろしくない。従ってひび割れが良くなってからは、調理時は素手で、洗い物時だけ手袋をするようにした。

ただ、いつまでもこれを続けるのは手間だし、コストもかかる。そもそもこの方法は、ひび割れの治療には効果的だったが、抜本的には何も解決していないのである。

次回は、この解決策を探る。(了)

(サイボウズ式  2013年10月24日の掲載記事「「炊事」とどう向き合うか──コデラ総研 家庭部(2)」より転載しました)