シドニーから3大会連続で五輪に出場した元陸上選手と、一緒に考え、議論を深めます。議論は週刊誌AERAの連載で紹介します。いただいたコメントを抜粋・要約することもありますがご了承ください。
元アスリートということもあり、トレーニングやダイエットに関する相談を受けることがあります。
トレーニングは、人によって合うものもあれば、合わないものもあります。またエビデンスは取れていないけど効く可能性があるものもあります。一概にアドバイスはできませんが、時々どう考えても根拠がなさそうなトレーニングが広がることがあります。
聞くと、医療の世界でも似たような話があるそうです。トレーニングやダイエットのケースでも間違った指導は問題になることもありますが、こと医療になると、治療が遅れたり、場合によっては死に至ることも考えられるため、問題は深刻です。
さて、ここで仮の話をします。「体を温めて運動をすると癌が治る」と書かれた本があったとします。それを信じた人が実践したところ、癌が進行して亡くなってしまいました。怒った家族は著者を訴えましたが、著者は反論しました。
実は、著者には過去、癌を克服した過去があると言います。多くのお医者さんがさじを投げたにもかかわらず、運動をして体を温めたところ癌が小さくなり、余命を大幅に伸ばして現在も生きている、とのことでした。この素晴らしい方法を他の人にも知って欲しいと、善意で本を書いたそうです。著者は家族に「効果がないなら根拠を示せ」と言います。
とはいえ、家族は納得できません。その本を読まずに早い段階で治療をしていれば、完治したかもしれません。いくら自己責任とはいえ、その本さえなければ生きていたかもしれないと思うと、やり切れません。科学的に証明されていない治療法を本に書いた時点で責任が発生するのでは、と家族は考えます。
さて、ここで皆さんに質問です。科学的に根拠のない治療法を選択して患者さんが亡くなった場合、その治療法を提唱した人に罪はあると思いますか。それとも患者の自己責任なのでしょうか。
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