Facebookプラットフォーム上で動画広告を配信しているブランドにとって、第一の選択肢は依然としてFacebookかもしれない。しかし、同社傘下のソーシャルネットワークで、画像や動画に特化したインスタグラムも、徐々に追いつきつつある。
ブランドネットワークス(Brand Networks)の調査によると、インスタグラム上の総インプレッションのうち動画広告が占める割合は、2015年12月には30%だったが、2016年3月には65%に急増したという。
インスタグラムはこれまで、広告主を引き付けようと努力してきた。2月には60秒の動画広告をリリースしたほか、動画再生回数の表示を開始して、視聴人数をマーケターが把握しやすいようにしている。さらに5月には、カルーセル広告フォーマットを拡張して、スワイプで切り替えられる動画をマーケターが出稿できるようにした。
エージェンシーのヒュージ(Huge)でソーシャルメディア担当マネージャーを務めるフランク・エスポシト氏は次のように話す。「インスタグラム上で動画広告が急増したのには、いくつか理由がある。まず、インスタグラムのAPIがオープンであること。次に、費用対効果。そして3つ目の理由として、カルーセルフォーマットに新たに動画が追加されたことで、ブランド各社はファーストムーバー(最初に行動を起こす人)になろうと飛びついている」。
インスタグラムは先ごろ、動画が有利になるようアルゴリズムを変更した。マーケターは今後、プラットフォーム上での投稿に関して、ペイドマーケティングを一層優先させる必要が出てくる可能性が高い。以下では、インスタグラムのプラットフォームを独創的な方法で活用している6つのブランドを紹介しよう。
バナナ・リパブリック
衣料ブランドのバナナ・リパブリック(Banana Republic)は、インスタグラムの動画を最初期に導入した広告主だ。2014年に最新コレクションの宣伝で同プラットフォームを利用した。以下のタイムラプス動画では、スケッチが彩色されてゆき、最後にはリアルなウィンターコレクションになるプロセスを見ることができる。
青のニュアンス #thenewBR
ダラー・シェーブ・クラブ
カミソリ定期購入サービスのダラー・シェーブ・クラブ(Dollar Shave Club)は、スポンサー広告を頻繁に利用して、インスタグラム上のターゲットオーディエンスにリーチしている。下の15秒の動画もそのひとつで、古いカミソリでヒゲを剃ると起こり得ることをユーモラスに忠告した。インスタグラムの動画広告は、オーディエンスがフィードをスクロールすると無音の状態で自動再生されるが、この動画はそれを踏まえ、音声がなくてもストーリーの流れを容易に追えるよう工夫している。
古い刃でヒゲ剃りなんてゾッとする。ダラー・シェーブ・クラブのフレッシュな切れ味をいつでも、わずか数ドルで。
ロウズ
ホームセンターのロウズ(Lowe’s)は、インスタグラムを含む各種ソーシャルプラットフォームを通じて、DIYのテーマを発信している。ハイパーラプス・フォーマットを使って複数のDIY動画をオーガニックな形で投稿。そのうちのいくつかには有料サポートも適用している。また、「フリップサイド(Flipside)」と呼ぶフォーマットも試しているが、これはフレームをふたつに分割して、オーディエンスにふたつの異なるシナリオを見せるものだ。たとえば、スマートフォンを上下逆さにすると、ある製品を使う場合と使わない場合を見比べられる。
広告効果測定企業イノビッド(Innovid)の共同創設者で最高技術責任者(CTO)を務めるタル・チャロジン氏は、「この動画が光を当てているのは、製品ではなく、製品によって可能になる体験だ」と説明している。
スマホを上下逆さにして、自宅のエアフィルターを交換する方法を見てみよう。通常の向きで見ると、交換しない場合にどうなるかがわかる。
タコベル
メキシカン・ファストフード・チェーンのタコベル(Taco Bell)は3月、1ドルの新しい朝食メニューを取り上げる3種類のインスタグラム動画広告で遊び心を見せた。これらの広告は、BuzzFeedが配信しているレシピ動画メディア「テイスティ(Tasty)」や、食や旅をテーマにした動画ネットワーク「テイストメイド(Tastemade)」で一般に広まった、レシピを詳しく解説する動画スタイルのパロディーになっている。料理の手間をかけずに、タコベルの1ドル朝食メニューを食べようとすすめるものだ。
「クリエイティブにおける当社の課題は、視聴者の関心を引き、スワイプする親指が止まるような瞬間をとらえること。そして、適切で楽しめるコンテンツを提供することだ」と、タコベルでソーシャル戦略担当シニアマネージャーを務めるライアン・リムスナイダー氏は話す。「視聴者の注意を引ける時間は限られている。ファンたちが我々に付き合ってくれる数秒をどうすれば最大限に活用できるか、いつも考えている」。
Airbnb
民泊マッチングサイトのAirbnb(エアビーアンドビー)は先ごろ、グローバルキャンペーン「そこで暮らす(Live There)」の第2フェーズをリリースした。このキャンペーンでは旅行者に対して、ただ目的地を訪れるだけでなく、実際に暮らすように体験することをすすめている。このマルチプラットフォームキャンペーンには30秒の映像が3つ含まれており、Airbnbで特に人気の高い3都市(パリ、東京、ロサンゼルス)にフォーカスしている。
街を体験する唯一の方法は、そこで暮らすこと(#LiveThere)。街角の市場で買い物し、近所を探索し、お気に入りのコーヒーショップを見つける。家にいるようにくつろいで過ごそう。たとえ一晩であっても。
ダンキンドーナツ
ドーナツチェーン店のダンキンドーナツ(Dunkin’ Donuts)のインスタグラムフィードでは、日常生活のなかにコーヒー(とクッキー)がどんなふうに組み込まれるかを示している。このブランドも、以下のようなタイムラプス動画がお気に入りだ。
温かく、しっとり。おいしい。ダンキンドーナツの新しいチョコチップクッキーです!
ダンキンドーナツでメディア担当ディレクターを務めるニック・ダナム氏は次のように述べている。「インスタグラム上の動画広告は当社にとって有効だ。というのも、我々が重点を置いている日常生活の楽しい時間や食欲に訴える手法が、インスタグラムプラットフォームのユーザーや、彼らがインスタグラムのコンテンツに期待するものとうまく共鳴するからだ」。
Tanya Dua(原文 / 訳:ガリレオ)
(2016年6月3日「DIGIDAY[日本版]」より転載)