「雨で発電する太陽電池パネル」を開発。 その仕組みは?

雨でも希望を捨てなくても良くなるかもしれない太陽電池パネルが開発された。

中国海洋大学の研究者が、雨天でも発電できる太陽光パネルを開発しました。雨水と炭素素材のグラフェンを利用して一種のキャパシターを構成し、電位差を発生させます。

太陽光発電システムを自宅の屋根に乗せている人ならご存知のように、太陽電池にとって雨は最悪の天気です。日が陰っただけでも発電量がガタ落ちし、雨天となるともうその日の発電量に期待はできません。

ところが中国海洋大学の研究者は、雨でも希望を捨てなくても良くなるかもしれない太陽電池パネルを開発したと発表しました。それは曇や雨でも発電できるほど効率のよい太陽電池ではありません。雨水と炭素素材グラフェンを組み合わせた太陽電池とは別の発電システムを備えています。

雨水は通常、純粋な"水"ではなく空気中から塩分なども取り込んでイオン化しています。一方、グラフェンの電子はプラスに帯電するイオンを惹きつける性質があり、素材としての比表面積の大きさからエネルギー密度の高いウルトラキャパシターなどへの応用が期待されています。

発表された太陽電池パネルは、グラフェンと酸化インジウムスズ、プラスチックなどを用いて、雨水を取り込みキャパシターとしても作用するフィルム状の太陽電池パネルを構成しました。そして最初の動作実験では、太陽電池として6.53%程度のエネルギー変換効率を示したうえに、雨水に見立てた薄い塩水を散布したところ数百マイクロボルトの電圧を発生させることができました。

一般的な太陽電池が20%前後の変換効率を備えることを考えると、このプロトタイプは太陽光発電デバイスとしてはまだまだ大きな改善が必要となりそうです。ただ雨水(塩水)での発電は、最初の実験結果としてはまずまずといったところかもしれません。研究者は「将来の太陽電池はどんな天気でも発電できるようになるかもしれない」と今後の高効率化への期待を語りました。

ちなみに雨水のイオン濃度は、日によって大きくその値が変動します。たとえば長く晴れた日が続いた後の雨はイオン濃度が高く、長雨が続くとイオン濃度は低下します。これは海水から空気中に溶け込んだ塩分によるものだったり、大気汚染によるものだったりと、様々な浮遊物質が複雑に作用していると考えられます。したがって海沿いと内陸、工業地帯と農村・山林地帯といった地域によっては、雨水による発電効率に差が出そうな気がしないでもありません。

[Images : Reuters/Chip East, Angewandte Chemie International Edition; courtesy of ResearchSEA]

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