イスラエルは「一方的に攻撃された」わけではない。米ユダヤ人団体がパレスチナ人抑圧への「見て見ぬふり」を批判

「パレスチナ武装勢力による一方的な攻撃とは言えない」――ハマスによる大規模攻撃とイスラエルによる報復攻撃で多数の市民が犠牲になっています
イスラエル軍の空爆で破壊されたモスクを調べるガザ市民(2023年10月8日)
イスラエル軍の空爆で破壊されたモスクを調べるガザ市民(2023年10月8日)
via Associated Press

イスラム組織「ハマス」がイスラエルに対して大規模攻撃を仕掛けた後、イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザ地区への報復攻撃が続いている。

西側諸国ではこの問題をハマスによる「一方的な攻撃」と表現している政府やメディアもある。しかし、中東問題の専門家や団体から、この描写は不正確であり、イスラエルや西側諸国にも責任があるとする声が上がっている。

米ユダヤ人団体「一方的なものとは言えない」

ハマスは10月7日、数千発のロケット弾をイスラエルに向けて発射したほか、戦闘員が分離壁を突破してイスラエル市民や兵士を殺害した

これまでに、イスラエル側で少なくとも900人の死亡と2500人の負傷が確認されているほか、多数が拉致されガザ地区で人質にされている。

イスラエル軍もガザ地区に対する空爆を続けており、同地区を完全に包囲して電力や食料、燃料の供給を停止させるとした。

パレスチナ保健省によると、イスラエルによる空爆でこれまでにガザ地区で687人以上が死亡し、約3700人が負傷。12万を超えるパレスチナ市民が住む場所を失った。

アメリカとEUは、ハマスをテロ組織に指定している。今回のハマスの攻撃に対し、アメリカを含む多くの西洋諸国がイスラエルへの支持を表明。メディアも「一方的で前例のない攻撃」と報じた。

しかし、この地域の歴史に詳しい専門家やパレスチナ解放を支持する団体は、その説明を誤りだと述べている。

イスラエルのパレスチナ人に対する「アパルトヘイト(隔離して差別すること)」に反対するアメリカのユダヤ人団体「IfNotNow」は、「我々は愛する人々――イスラエル人とパレスチナ人の両方とも同じように――を次々と襲う恐怖を、悲しみと恐れとともに見ています」と7日付の声明で述べた。

同団体は声明で「今日のパレスチナ武装勢力による行動は、言われのない一方的なものとは言えない」と主張している。

「イスラエルのアパルトヘイト制度のもとでは、毎日が挑発です。ガザを窒息させるような包囲が挑発です。イスラエル入植者がパレスチナの村全体を恐怖に陥れ、兵士がパレスチナ人の家を襲撃・破壊し、街中で殺し、イスラエルの大臣がジェノサイドと追放を呼びかけているのです」

「これらは、イスラエル史上最も極右の政府と、勢いづいたファシスト運動による挑発であり、全土に広がる危機を悪化させています」

ガザ地区南部のラファで破壊された家屋(2023年10月9日)
ガザ地区南部のラファで破壊された家屋(2023年10月9日)
via Associated Press

「この戦争は今朝始まったわけではない」

ハマスが実効支配するガザ地区に対し、イスラエル側は強硬姿勢をとる方針を打ち出している。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はガザ地区を「無人島」にすると宣言し、ベザレル・スモトリッチ財務相が「残酷になる時が来た」と述べたと報じられている。

こういった状況下で、ガザでは市民のインフラが破壊され、イスラエル軍の地上侵攻に対する恐怖が高まっている。

パレスチナ人はこれまで何度も、イスラエルの暴力の犠牲になってきた。

1948年の第一次中東戦争では、イスラエル建国によってパレスチナ人が大量虐殺され、居住地を追放された。この悲劇は「ナクバの日」として今も人々の記憶に刻まれている

それ以来多くの人権団体が、パレスチナ人を追放し、反体制派を投獄し、子どもを含む市民を殺害するイスラエルの行為を「アパルトヘイト」と非難してきた。

イスラエル・パレスチナ問題の専門家で作家のネイサン・スラール氏は7日、「この戦争は今朝始まったわけではありません。何十年も続いているのです」とXに投稿した。

「今起きている流血は、氷山の一角に過ぎません。国家の暴力と民族征服の氷山です。我々がこの問題の根本的な原因を無視する限り、血は流れ続けるでしょう」

そのイスラエルを、アメリカは財政支援と武器提供で支援してきた。この支援により、イスラエルはパレスチナを上回る軍事システムを作り上げてきた。

IfNotNowやムスリム人権擁護団体CAIR(アメリカ・イスラム関係評議会)は、アメリカはパレスチナ・イスラエル両者に問題解決を求める一方でイスラエルに資金提供してきたことを反省すべきだと訴えている。

「私たちは罪のない市民の殺害を強く非難し、分刻みで増えるパレスチナ人とイスラエル人の死者を悼みます」とIfNotNowは声明で述べている。

「彼らの死はイスラエル政府とイスラエル政府に資金を提供し、その無謀さを容認してきたアメリカ政府、そして何十年にもわたるパレスチナ人抑圧を見てみぬふりしてきたすべての国際リーダーたちの責任であり、パレスチナ人とイスラエル人の両方を危険にさらしています」

「この文脈を軽視もしくは無視する人たちは、今後もさらに多くの血が流されることに、ただ驚き続けるだけでしょう」

「私たちは、現在起きている惨事を招いた思慮に欠ける軍事主義を考え直すよう求めます。このファシスト政府に説明責任を求め、擁護できないイスラエルのアパルトヘイトの現状維持に終止符を打たずして、すべてのイスラエル人とパレスチナ人に安全と自由の未来をもたらす道はありません」

ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。

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