誤ったデータをもとに児童手当の見直し主張。財務省「見直し自体については引き続き議論」

「世帯年収が高いほど、児童手当が『大人のお小遣い』に」 厚労省調査を訂正
財務省(東京都千代田区霞が関)
財務省(東京都千代田区霞が関)
時事通信社

厚生労働省は11月14日、児童手当についてまとめた調査結果の報告書の一部に誤りがあったことを発表した。財務省は10月、誤ったデータをもとに、児童手当の削減に向けた見直しの必要性を示す資料を財政制度等審議会(財政審)の分科会で配布。年末にかけて本格化する来年度の予算編成に影響を与えかねない状況だった。

財政審は国の予算や決算などに関する重要事項について審議する財務相の諮問会議。各年度の予算についても提言や勧告を行う。

データが間違っていたのは2012年に厚労省が実施した調査。児童手当の使い道について調べた。それ以降、同様の調査はされていないといい、結果をまとめた報告書は、現在でもたびたび引用されている。財務省はこの報告書をもとに作成した資料を、10月9日に開かれた財政審の財政制度分科会で配布した。

配布された資料では、世帯年収が600~1千万円未満では28%が、1千万円以上の世帯では32%が児童手当を「大人のお小遣い・遊興費」に使っていると指摘。その上で、「世帯年収が高いほど、児童手当が『大人のお小遣い・遊興費』などに費消される傾向がある」とした。また、今年10月から幼児教育と保育の無償化が実施されたことによる家計負担の軽減も挙げ、高所得者への児童手当の廃止を含めた見直しを財政審に提案した。

しかし、実際の調査結果では、「大人のお小遣い・遊興費」として答えた割合は、世帯主の年収が600~1千万円未満では0.6%、千万円以上では0.9%だった。

厚労省の報告書は、本文では正しいデータをもとに記述されていたが、末尾にまとめられた資料編だけ表のデータが入れ替わっていた。本来「子どもの将来のための貯蓄・保険料」と回答した人のデータが、「大人のお小遣い・遊興費」としてカウントされていた。財務省は資料編から引用したという。

資料編の表はこれ以外にも、「子どもの教育費等」のデータは「子どもに限定しない家庭の日常生活費」に、「子どものおこづかいや遊興費」は「子どもの教育費等」と入れ違うなど、表全体で9項目のうち5項目が間違っていた。

児童手当に関する行政は現在、厚労省から内閣府の所管に変わっている。内閣府はハフポストの取材に対し、資料編の表の間違いを認め、厚労省と内閣府のHP上で報告書の訂正を14日夜以降それぞれ発表した。

10月3日の財政制度等審議会であいさつする麻生太郎財務相(右から2人目)=財務省
10月3日の財政制度等審議会であいさつする麻生太郎財務相(右から2人目)=財務省
時事通信社

一方で財務省は、誤ったデータをもとに作成した資料を、財政審の分科会に提出したことについて、「資料が間違っていたことは残念だ。財政審に対してどのように説明するかなど、対応を検討している」と述べた。

児童手当の給付対象の見直しについて財務省は、毎年のように財政審に提言。朝日新聞によると、2017年には、保育の受け皿拡大の財源として、高所得層に支給される特例給付の廃止などを主張した。今年10月には幼児教育・保育の無償化が実施され、財務省としては、このタイミングに児童手当の見直しに乗り出したい思惑がある。

財務省の担当者はハフポストの取材に「児童手当の見直し自体については、引き続き議論していきたい」と話す。

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