28歳、コロナ禍で会社を辞めた。そして、自分の夢を実現した。

ロックダウンが実施され、すべてが止まり、自分にとって何が重要かをじっくり考えることができました。
ポタン公爵夫人に扮してツアーを行うガブリエル・アルノー=ラザール氏(右)
ポタン公爵夫人に扮してツアーを行うガブリエル・アルノー=ラザール氏(右)
LUDO SEGERS

【このエッセイは、新型コロナウイルスの感染が拡大してから2年経った今、生活にどんな変化があったかを人々が綴ったハフポストのグローバル特集「コロナ禍で私は」の1つです。これはハフポスト・フランス版の記事の英訳を、翻訳・編集したものです】

初対面の人は、私の服装を二度見するでしょう。だって、私はこの1年間、歴史への情熱を伝えるために、18世紀のドレスを着てパリを歩き回ってるんですから...。

私はポタン公爵夫人というタイムトラベラーに扮し、フランス史の重要人物の人間的な面を明かしながらパリを案内する一風変わったツアーを主催しています。

宝くじ主催者側のミスに気付き大儲けした哲学者ヴォルテール、溺者の蘇生に使われた奇抜な方法、エジプトの偽ミイラの絵画や放蕩者の賭け事...などなど。お金、道楽、権力、宗教など...パリには選びきれないほどたくさんの興味深い歴史があります。

私の目標は、文化に光を当て、歴史を学ぶのは楽しいと知ってもらうことです。私のツアーの面白いところは、ゲストたちはこのアドベンチャーを耳からだけでなく、鼻からも楽しめること。パリのニッチなクリエイターが手がけた香水をツアーの訪問地に合わせることで、ゲストはより深く物語に入り込むことができるのです。

でも、これまでずっとこの仕事をしてきたわけではありません。

ロックダウンが転機に

夢だったこの仕事を自分のキャリアにしたのは、新型コロナパンデミックの最中でした。2020年、パリで最初のロックダウンが実施されたとき、多くの人同様、私は現状から一歩下がる機会を得ました。夜に外食や観劇もできず、週末にできる楽しいアクティビティもありません。

そして突然気づいたのです。これまで自分がやってきたことは、「不要不急」だったということに...。

28歳だった私は「まだ若いんだから夢を実現しよう」と大手不動産投資会社でのCEOのチーフスタッフとしての仕事を辞め、新たに起業の道を歩み始めました。

長時間労働や多くの責任、そして未来への不安があったけど、自分の夢のためならやる価値があると思ったんです。

2年半の間、前職で経営委員会をサポートしてきたことで、どんな状況でも全体像を把握できるようになり、このスキルは起業家としての道のりで役に立っています。

パリでは何十年も前から観光ツアーがあり、競合も多いため、私は衣装やテクノロジー、そして香水というユニークなアイテムを使って、型破りなツアーを企画しました。

また、以前デジタルマーケティングに携わっていた経験から、ツアーの宣伝方法や、知名度を向上させる方法も知っていました。

反復作業の自動化や効率化に役立つソフトウェアの使い方もわかっていたので、ビジネスに付加価値をつける事に集中し、自分が好きなことに没頭することができました。

ガブリエル・アルノー=ラザール氏扮するポタン公爵夫人は一風変わったパリのツアーを提供している
ガブリエル・アルノー=ラザール氏扮するポタン公爵夫人は一風変わったパリのツアーを提供している
LUDO SEGERS

私はラッキーだと思います。仕事や生活、家族や友達、あるいは自身の命さえも失った多くの人たちとは異なり、新型コロナによるロックダウンは私にとって良いチャンスとなりました。ロックダウンが解除された頃には、新たなビジネスを立ち上げ、フィアンセもできました。

「自分がやりたいことは何なの?」

幸運や特権は別として、私が夢を実現できたのにはいくつか理由があります。

ロックダウンが実施されたとき、すべてが止まり、自分にとって何が重要かをじっくり考えることができました。自分探しをするのに「28歳は遅くない?」と思う人もいるかもしれませんが、ちょうど良い年齢なんてないし、いくつになっても自分の人生や、やりたい事を見直すのに遅いことはないと思っています。

そしてもし挑戦する余裕があるのなら、やってみてはどうでしょう。特に、これから10年、その挑戦が自分の存在価値を高めてくれるのであればなおさらのことです。

これまでの学校教育、一流大学からの卒業、責任を伴う権威ある仕事...私はこれまで多くの人が憧れるような人生を手に入れたと思っていました。でも、それは私の夢ではないことに気づいたんです。そして私は自問しました。「自分がやりたいことは何なの?」

そして、自分の好きなことをすべてリストアップすると、アイデアが浮かんできました。歴史、パリ、演劇、衣装、脱出ゲームでよく使われるような没頭テクニックを組み合わせたビジネスを作りたいと思ったのです。

値段に関わらずユニークな体験を求める人が多いこのご時世で、このようなガイドツアーは人気が出ると思ったし、すでに誰かがやっていると思いました。

でも、少し調べると、そうではないことが分かったのです。そこで、やりたいことを実現するために必要なことをすべて整理していきました。パンデミックによって、方向転換する時間もあったし、前職で努力して得たスキルのおかげで、自分のビジネスを立ち上げることができたのです。

そして今、起業からわずか半年で、最初の従業員を雇う準備をしています。新たなスタッフのコメール伯爵夫人が、まもなく「ポタン公爵夫人のパリ・アドベンチャー」の仲間に加わることになります!

色々ありましたが、今の自分があることに、これ以上ない喜びと感謝を感じています。

【ツアーの詳細はこちら:potinsdeparis.fr

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