アートとカルチャー
2020年08月14日 19時29分 JST

終戦から75年。戦争は「過去」ではない。人工知能でカラー化された写真は訴える(画像集)

光文社新書『AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争』から、終戦前後の様子を伝える10枚を紹介する。

『AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争』に掲載された戦時中の写真

8月15日で終戦から75年を迎える。日本人の大半が戦後生まれとなった今、太平洋戦争を、はるか昔の出来事と感じる人も多いだろう。戦時中にカラーフィルムは普及していなかったため、現存する写真の多くはモノクロだ。色彩が失われた光景は「歴史上の出来事」という印象を強く感じさせる。

それでいいのだろうか?そんな問題意識から、人工知能(AI)の技術を使って戦前~戦後のモノクロ写真をカラー化する「記憶の解凍」プロジェクトが2017年から始まっている。進行中の成果が7月、『AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争』(光文社新書)として出版された。

 

■カラー化で、戦争がいまの日常と地続きに

著者は東大大学院の渡邉英徳教授と、広島市出身の東大1年生の庭田杏珠さん。2人がAIを使ってカラー化してきた写真が、この本に収められている。渡邉教授は本の冒頭で、以下のように書いている。

<カラーの写真に眼が慣れた私たちは、無機質で静止した「凍りついた」印象を、白黒の写真から受けます。このことが、戦争と私たちの距離を遠ざけ、自分ごととして考えるきっかけを奪っていないでしょうか?>

<カラー化によって、白黒の世界で『凍りついて』いた過去の時が『流れ』はじめ、遠いむかしの戦争が、いまの日常と地続きになります。そして、たとえば当時の世相・文化・生活のようすなど、写し込まれたできごとにまつわる、ゆたかな対話が生みだされます>

 

■終戦を10枚の写真で振り返る

ハフポスト日本版では著者と出版社の許可を得て、『AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争』に掲載されたカラー写真から、敗色が濃厚となった1945年初頭から終戦にかけての様子を10枚の写真で振り返ることにした。

日本列島への空襲が猛威を奮い、硫黄島と沖縄を米軍が占領。特攻作戦で若い兵士が命を散らし、原爆投下で広島と長崎が灰燼と化す。玉音放送を聴いた日本軍の捕虜の男性は顔を覆って涙を流す。

カラー化されたこれらの写真を見ると、まるで戦争が昨日の出来事であるかのように思えてくる。鮮烈なリアリティーで、私たちの心に何かを訴えかけてくるのだ。

 

1. 富士山上空を飛行するB-29

1945年1月27日、富士山上空を飛行するアメリカ軍第73爆撃団のB-29「スーパーフォートレス」の編隊。76機のうち56機が有楽町・銀座地区に目標を変更、空襲を行った。

 

2.硫黄島の戦い

1945年4月5日、硫黄島において、アメリカ軍に投降する日本軍兵士。

 

3.特攻兵を見送る女学校の生徒たち

1945年4月12日、知覧飛行場にて。特攻に向かう穴澤利夫少尉の「隼」を見送る知覧高等女学校の生徒たち。

『AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争』より

 

4.日本軍機に向けた対空砲火

1945年4月28日、読谷飛行場にて。空襲する日本軍機に向けた対空砲火。アメリカ海兵隊の「Hell’s Belles」飛行隊のF4U「コルセア」戦闘機がシルエットとして浮かび上がる。

 

5.火炎放射戦車で日本軍を攻撃

1945年5月11日、沖縄戦にて、火炎放射戦車で日本軍を攻撃するアメリカ兵たち。

 

6.子犬を抱く特攻隊員

1945年5月26日、子犬を抱く特攻隊員。中央が荒木幸雄伍長。鹿児島の万世飛行場にて、出撃予定時刻の2時間前に撮影。悪天候のため翌日出撃、戦死した。

 

7.白旗の少女

1945年6月25日、沖縄で米軍に投降する「白旗の少女」比嘉富子さん。従軍カメラマンのジョン・ヘンドリクソンさんが撮影。

 

8.長崎原爆

1945年8月9日11時2分、長崎原爆投下。長崎市の推定人口24万人のうち約7万4000人が死亡したとされる。写真は香焼島から松田弘道さんが撮影したきのこ雲。

 

9.玉音放送に涙を流す捕虜

1945年8月15日、玉音放送をラジオで聴き、涙を流す日本軍の捕虜。グアムの収容所で撮影された写真。

 

10.原爆投下の翌年の広島

1946年8月5日、原爆投下から1年、まだ焼け野原が目立つ広島市。八丁堀の福屋デパートから南東方向を望むカップル。共同通信社提供

 

■担当編集者のコメント

『AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争』は、7月16日の発売後たちまち刷を重ね、8月12日に累計4万部となった。

この反響について、担当編集者の髙橋恒星さんは、ハフポスト日本版の取材に、次のようにコメントした。

「この国に戦争体験者がいなくなっていく未来へ少しでも当時の『実感』を継承していきたいと思い、そうした活動をされている二人へ出版をお願いしました。記憶の風化が問題視される中、新しい伝え方を模索した本書がこれだけ多くの方に届いていることに希望を抱いています」