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2019年11月09日 12時31分 JST

香港デモ、学生死亡で深まる対立。実弾発射、議員襲撃...過激化に地元紙「暴力より自制心を」

大学生が死亡した事件で、警察への疑念を抱く市民がいる一方で、警察側は真っ向から否定している。

2019年6月から続く香港の反政府デモで、ついに死者が出た。

香港科技大学の周梓楽さん(22)は11月5日、デモ隊と警察が衝突する現場近くで、駐車場の3階から2階部分へ転落した。頭を強く打ったとみられ、病院で治療を受けていたが、8日朝に死亡したという。抗議活動に関連する死者は、自殺を除いては初とみられる。

香港デモでは、参加者と警官隊の衝突が過激化していて、今回の事件がさらに火に油をそそぐ可能性がある。こうした事態に地元英字紙「サウス・チャイナ・モーニング・ポスト」は「真相が究明されるまで、私たちは皆、過激な行動ではなく自制心をもって彼の死に敬意を払うべきだ」などと呼びかけている。

時事通信社
死亡した周さんの追悼集会

■対立する見解

地元紙「アップルデイリー」によると、周さんの死をきっかけに、通っていた香港科技大学では追悼集会が開かれた。周さんが駐車場内で転落した際の詳しい状況は分かっていないが、「警察が救援活動を妨害した」という声もあるという。民主派団体「デモシスト」の周庭氏も同様の指摘をしている。

このため「香港人、頑張れ!」とされていたスローガンの代わりに「香港人、報仇(仇をとれ)!」と叫ぶ市民もいたという。

これに対し、警察側は疑惑を真っ向から否定している。香港警察は周さんが駐車場に入ってから転落するまでの間、警察官は誰一人として駐車場に入っていないと主張。救急隊員が周さんに応急処置を施すのを見て、転落を知ったという。

香港政府公式サイトより
香港警察の会見(香港政府公式サイトより)

さらに中国共産党系の環球時報は「周さんが倒れていた場所と、警官隊が催涙弾を打っていた場所は120メートルも離れている」とし、周さんの死に警察が関わったという疑惑を否定した。

■実弾、襲撃...先鋭化する香港デモ

香港のデモでは、「勇武」と呼ばれる一部参加者と警官隊との衝突の過激化が指摘されている。

10月には、警察官がデモ参加者の左胸に向かって実弾を発射する事件が発生。過激な取り締まりに非難の声が上がった一方、11月6日には、親中派として知られる何君尭議員が選挙活動中に支援者を装った男に刃物で胸のあたりを刺される事件があった。

先鋭化する事態に、地元英字紙「サウス・チャイナ・モーニング・ポスト」は社説を発表。香港を「深刻な2極化が進んでいる」とした上で、「周さんの死は、暴力や混沌とともに記憶されるべきではない。真相が究明されるまで、私たちは皆、過激な行動ではなく自制心をもって彼の死に敬意を払うべきだ」と、冷静さを保つよう呼びかけた。