2021年11月30日 12時02分 JST | 更新 2021年11月30日 12時09分 JST

Z世代「便利さはもう十分」。能條桃子とIBMが考える、山積する社会課題にテクノロジーができることは

「どのような社会になりたいのか」を問題提起するIBM Future Design Lab.。その取り組みに迫る

SOTA OHARA

気候変動、ジェンダー平等、ダイバーシティ&インクルージョン…現在、私たちが直面している社会課題を挙げると枚挙に暇がない。
そのような状況下で、Z世代の中には社会問題への関心が強く、好きなブランドにサステナビリティを求めてアクションを起こす人も。
「IBM Future Design Lab.」を立ち上げた日本アイ・ビー・エム株式会社 執行役員の藤森慶太さんは、そんな個人の力が企業を動かすために必要だと言う。新しい社会で、テクノロジーが企業と個人にもたらすものは一体何だろうか。NO YOUTH NO JAPAN代表理事の能條桃子さんとの対談を通して、探る。

■サステナビリティにD&I。多くの社会課題に囲まれる現代

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藤森慶太さん:日本アイ・ビー・エム株式会社 執行役員 IBMコンサルティング事業本部 iX事業、戦略コンサルティング事業 担当

── お二人は今、どんな社会課題に注目していますか。

藤森慶太さん(以下、藤森):課題として一つあげるなら「サステナビリティ」です。それぞれ個別に見える社会問題には、人間と地球の共存から派生しているものが多くあります。それに対してテクノロジーが貢献できることはたくさんあるし、一方でテクノロジーが問題を生み出してしまった側面もあると思っています。

環境省が発表した「2100年 未来の天気予報」では、平均気温が最大4.8℃上昇し、大雨の発生も大幅に増えると言われています。2100年に私は生きていないかもしませんが、子どもたちが生きていく世界にそういった環境を残してはいけないと強く感じています。

能條桃子さん(以下、能條):私が今の活動を始めたのは、日本社会にある生きづらさが個人の問題ではなく社会の問題だと気づいたからです。その生きづらさには、「ジェンダー」の問題や「ダイバーシティ」「インクルージョン」が実現できていないことも含まれると思います。

気候変動や格差の問題も、今の自分の生活だけを考えていれば無視できる人もいるかもしれません。でも少し長い目で見ると、何もしていない自分が加害者に思えてきて。いろんな話を聞いたり活動したりするうちに、すでに利益を得ている人たちがそれを手放せない状況や既存のシステムを変える後押しがしたいと考えるようになりました。

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能條桃子さん NO YOUTH NO JAPAN 代表理事。U30社外編集委員として2021年よりハフポスト日本版に参加。

藤森:生きづらさを感じたのはどんな時ですか?

能條:最初におかしいと感じたのは、就活の時期に「子育てしやすい会社を選びましょう」と説明を受けたことです。男子学生にその説明はなかったので「なぜ女子だけがそう言われなくてはいけないんだろう」と疑問に思いました。

藤森:疑問をもたない人が多いのには、社会構造的な原因がありますね。

■課題解決のため、プラットフォームで企業活動を見える化 

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── 社会問題に対して、企業はどのように取り組んでいると思いますか。

藤森:IBMコンサルティングは企業向けに戦略コンサルティングからシステム構築、運用をおこなっています。また、IBMでは50年前から環境問題に取り組んで来ました。
お客様企業の社会問題への取り組みをご支援する機会も増えています。最近では、サステナビリティを経営戦略の柱の一つとして位置付ける企業も出てきました。

そして、「今取り組まないと消費者が離れてしまい、将来の利益を失う可能性があるので、ビジネスとしてもサステナビリティを意識しなきゃいけない」と考える企業が今、間違いなく増えています。

能條:そういった変化は素晴らしいなと思いますが、「減らす」ことについてはどうでしょう。これまで何かを作ってきたビジネスで引き算をするって難しいことだと思います。プラスチックの使用量を30%減らしたペットボトルを開発しても、売上が30%増えたらプラスチックの総量は変わりません。そうならないためにどんな対策があるのだろうと気になりました。

藤森:「無駄なものをなくしていこう」という意識は今、各企業が強く持っています。ただ、一社で削減するのは簡単ではありません。サプライチェーンの中で動いているので、受注が来れば作らざるを得ないんですね。

その生産物を無駄にしないために、仕組みや仕掛けが重要になります。そこで食品ロスを削減し、同時に食べ物に困っている方に提供するようなプラットフォームを今構築しているところです。

■個人ができるアクションが、企業を動かす

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藤森:企業が作り過ぎてしまう要因の一つは、消費者が買うことです。それは、消費者には社会を変える力があるということでもあります。

CO2排出削減にまったく配慮せず大量の食品ロスを出し、安くておいしい食品を提供する企業があったとします。そこの食品を買いますか?

能條:私自身の選択でいえば、買わないと思います。その商品を選択するのがクールだと思えないからです。でも、本当に好きな企業だったら、「変えてほしい」と直接言います。

以前は企業に伝えようなんて思っていませんでした。ファッションブランドに「オーガニックコットンを使ってほしい」「大量廃棄をやめてほしい」など電話をかけるアクションをする大学生グループを知って、私もできることはしてみようと思うようになりました。

藤森:大事なことですね。IBMは2030 年までに温室効果ガス (GHG) の排出量をネット・ゼロにすると表明しています。企業の行動と能條さんのような個人の行動の両方が、社会を変えるためには必要だと思います。

プラットフォームだけで消費者の目や声かけがないと、企業は「やってるふり」だけをするようになってしまいます。現在、SNSの発達により、個人の力が大きくなりました。その声が届いて企業が「実際に変わろう」と思った時、変えられる仕組みを私たちは提供しています。

三菱重工様とIBMによる「CO2NNEX(コネックス)」は、CO2の流通を可視化するプラットフォーム。旭化成様と発足させた「BLUE Plastics(ブルー・プラスチック)」は資源循環のためのプラットフォームです。私たちのテクノロジーと各社をつないで社会課題を解決していくことに力を注いでいます。

■連続・非連続革新のテクノロジー両輪が必要

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── 能條さんは、同世代の人たちがテクノロジーについてどんな印象を持っていると思いますか。

能條:新しいテクノロジーについては理解できないころもあって、自分たちの生活で使いだすようになって初めて実感するといった感じです。新技術を使った商品が発表されて歓喜するかというとそれほどでもなく、「これ以上便利でなくて十分」みたいな風潮もあるのだろうと思います。

── 藤森さんは、これからテクノロジーはどのように課題解決に役立っていくと考えていますか。

藤森:テクノロジーは、すでにいろいろな社会課題の解決に貢献していますが、今後ますますテクノロジーの活用が必要になると考えます。

IBMでは、サステナブルな社会実現のために短期、中期、長期で研究開発を進めています。例えば、現在実用化に向けて研究開発を進めている量子コンピューターは、将来、創薬や進化したAIなど、今は解けない課題解決に役立っていくでしょう。
段階的に発展する連続技術革新だけではなく、非連続の技術革新も重要です。光合成のメカニズムを再現することができたら、脱炭素化の課題が一気に解決する可能性もありますが、現在の状態を悪化させないために、短期的なテクノロジーも大切です。

能條:企業として目に見える結果を出しながら、非連続なイノベーションを起こすのは難しそうですね。

藤森:はい、IBMではその両輪に取り組むことを110年続けています。

IBMでは、テクノロジーをより良い未来づくりに生かす「Good Tech」を全世界で推進し、サステナブルな社会の実現に取り組む中で、2020年には「IBM Future Design Lab.」を立ち上げました。

「どのような社会になりたいのか」を考察して問題提起し、より良い世界を目指し、お客様と共に未来を描き創る組織です。

実際にこうありたい社会をみんなで考えて大きなうねりを作り出し、IBMはテクノロジーカンパニーとして貢献する。そのために、IBM Future Design Lab.は個人や企業といった垣根を越え対話し、繋いでいきます。

能條:企業の方と接する時、内部でどんな議論がおこなわれているかが見えず気になっていました。テクノロジーがあるからこそできることで、素敵だなと思います。

SOTA OHARA

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ニューノーマルな時代において、枠を越えた対話・繋がりが必要とされている。テクノロジーをベースとしたIBM Future Design Lab.での共創・発信に今後も注目したい。

さらに日本アイ・ビー・エムでは、英スコットランド・グラスゴーで開催されたCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)の振り返りセミナーを12月6日にオンラインで開催。参加者を募集している。

タイトル:「国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)を踏まえた日本企業に求められるアクションとは」
日時:2021年12月6日(月)16時〜17時30分
詳細、お申し込みはこちらから

(撮影/小原聡太 編集/磯本美穂 取材&文/樋口かおる)

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