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単なる子どもたちへの食事支援だけではない。こども食堂がもつ意外な役割とは?

今や全国で6,000ヶ所に急増。こども食堂は食育や多世代交流、地域づくりの場になっている。
Trevor Williams via Getty Images

近年、こども食堂が増加している。無料または低価格で食事を提供するこども食堂は、家庭で十分な食事が食べられない子どもや、家族との共食が難しい子どもたちの居場所になっている。

貧困支援のイメージを持つ人も多いが、それだけではない。実は食育やまちづくり、食文化の継承の場として運営されているところも多い。

今回は、こども食堂の現状と、子ども食堂の意外な役割を探った。

1つのこども食堂から始まり、現在は6,000を超える

こども食堂の数は年々増加しており、「認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ(以下、むすびえ)」の調査では、2021年時点で約6,000箇所となった。

認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ、および地域ネットワーク団体調べ。「【確定値の発表】全国箇所数調査2021」※2016年は朝日新聞調べ
認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ、および地域ネットワーク団体調べ。「【確定値の発表】全国箇所数調査2021」※2016年は朝日新聞調べ

こども食堂という名前が使われ始めたのは2012年。東京都大田区にある青果店が、子どもが安心して食事を食べられる場の提供を開始。〈気まぐれ八百屋だんだん こども食堂〉と名付けたことから、全国でこども食堂の名前が広がった。

そこからこども食堂は急増し、2018年には2,000ヶ所を超え、毎年1,000ヶ所以上新たなこども食堂が生まれている。

食事の提供だけではない。地域づくりに向けた活動も実施

全国に広がるこども食堂だが、どのような目的で運営されているのか?

「むすびえ」がおこなった子ども食堂の運営者に対するアンケート調査では、以下のような回答が得られた。

出典:認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ「第1回全国こども食堂実態調査結果(速報値)詳細」
出典:認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ「第1回全国こども食堂実態調査結果(速報値)詳細」

こども食堂を運営する主な目的については、やはり「子どもの食事提供」が89.1%、「子どもの居場所づくり」が83.6%と高い。しかし、それだけではなく、「多世代交流(57.8%)」「地域づくり・まちづくり(56.3%)」「子どもの食育(食の教育)(46.0%)」と回答する人も多かった。

回答には生活困窮家庭への支援なども見られ、貧困層支援の側面はもちろんあるが、実は多様な役割を果たしていることがこの調査からもわかる。

実際にこども食堂を利用する人も、貧困家庭に限らず地域の多様な人が利用しているところが多い。このことからも、こども食堂と一口に言っても、多様な形態があり、様々な機能をもつ可能性が窺える。

こども食堂の意外な機能

以上のように、こども食堂は単なる食事提供だけではなく、さまざまな体験や場を提供している。各拠点(それぞれの拠点)によって実施内容は異なるが、今回は主な3点をまとめた。

① 「食育」の場になる

現代は核家族化と、両親の共働きが一般化したことよって、子どもの孤食が増えていると言われている。また、子どもだけでなく、高齢者だけの独居も増え、誰かと一緒に食事をする共食の機会が減り、食を通じた人と人との繋がりが薄れているのだ。さらに、食事をとらない孤食の増加に伴い、欠食や偏食も多くなっていると考えられる。

そんな中、こども食堂は共食の場を提供するとともに、食育の場としても機能する。食材の旬や栄養、食べ方・作法について話して聞かせているこども食堂も多く、食の基本について学べる場所となっている。他にも、農林・漁業・畜産業の体験や、生産者との交流の機会を設けるこども食堂の中もあるそうだ。

② 地域活性化、まちづくりへ貢献する

地域住民や、大学、農作物の生産者、高齢者福祉施設と連携しているこども食堂も多い。連携することで、こども食堂の運営が可能となるだけでなく、地域の活性化も期待できる。

例えば提供する食事に地域の特産品を使ったり、郷土料理を献立に加えたりすることで、子どもや地域の人が地元の食の魅力を知ることもあるだろう。さらに、地域の人々との交流で、地域を活性化する活動への参加が促されるなど、新たな連携が生まれるかもしれない。そういった地域連携の場を、全国に広がるこども食堂が担い始めているのだ。

③ 多世代交流を促し、食文化の継承にも貢献する

さらにこども食堂は、大学生や高齢者も参加し、多世代交流の場となっている。家庭や学校以外の多様な人々と交流することは、子どもにとって学びの場となる。大学生や大人にとっても、子どもや他世代との交流は気づきのあるものになるだろう。

また、大人から伝統料理や、食事作法について教えてもらうことは、食文化の継承にもつながる。食生活が多様化する中、家庭だけで食文化を伝えていくのは難しいこともある。そこで、地域の大人たちが協力することで、子どもたちに多彩な日本の食文化を伝える場としてのこども食堂ができるかもしれない。

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福岡県糸島子ども食堂「ほっこり」の取り組み

では、具体的にどんなこども食堂があり、どんな活動をしているのか?

福岡県糸島市にあるこども食堂「ほっこり」は、食育だけではなく、地域活性化や多世代交流など様々な役割をになっているこども食堂のひとつだ。

「ほっこり」は、調理や接客、DIYなどを通じて、小学生から大学生までが、自立と、自尊感情を高めること、また、学習支援をすることで学力向上と将来の選択肢を広げることを目的としている。

やさしさであふれる地域にしたいという思いから生まれたこのこども食堂は、上記の目的の通り、食の提供だけをしているわけではない。月に1回開催されるこども食堂では、「そば打ち」「折り紙」「日本舞踊」などの体験や防災講習、地元スポーツチームとの触れ合いなどにより、学習・交流を促している。

また、幅広い世代の人々を集めて、協力し合って運営することで、「私も地域の役に立っている、役に立ちたい」と思う小学生から大学生の増加と、「ここに住んでよかった、住み続けたい」という地域への愛着をもつ人の増加も目指している。

子ども食堂を支えるJA共済の取り組み

JA糸島は、食品ロス削減や食事支援につなげたいという思いからこの「ほっこり」の活動を支援している。

JAの組合員や地域の方々から産直市場で販売できなかった野菜や家庭で余った食品を無償で提供してもらい、こども食堂に届けるほか、足りない日用品やこども食堂で使用する食材などを購入し、届けている。

さらにJA糸島で様々な活動をおこなう女性組織(女性部)が調理指導のボランティアもおこなうことで、地域の人たちの交流の場となるこの活動をサポートしているのだ。

こども食堂は実に多様な側面がある。地域住民の1人として、子どもがいる人もいない人も、地域のこども食堂に参加してみると新たな発見があるかもしれない。

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参考)
・認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ「「地域みんなの食堂」となった「こども食堂」コロナ禍でも増え続け、6,000箇所を超える。 」https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000033.000044382.html

・認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ「第1回全国こども食堂実態調査結果(速報値)詳細」https://musubie.org/wp/wp-content/uploads/2021/12/a70bc16d9afa6d3df45273c12fdaa3b7.pdf
・農林水産省「子供食堂と地域が連携して進める食育活動事例集」https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/attach/pdf/kodomosyokudo-33.pdf.

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