ファーストレディはキャリアを諦めなくていい。ジル・バイデン氏が仕事を続けることが重要である理由

教育者としてキャリアを重ねてきたジル・バイデン氏。初の“兼業ファーストレディ”誕生か
夫の選挙集会でスピーチをするジル・バイデン氏(2020年11月2日)
夫の選挙集会でスピーチをするジル・バイデン氏(2020年11月2日)
JIM WATSON via Getty Images

ジョー・バイデン氏(以下、ジョー氏)の妻ジル・バイデン氏(以下、ジル氏)は、ホワイトハウス外で仕事を続けてお金を稼ぐ最初のファーストレディとして歴史を作ることになりそうだ。

現在69歳のジル氏は、コミュニティカレッジ(2年制大学)教授として、教育者のキャリアを築いてきた。

ジル氏の広報官によると、ジル氏は仕事を続ける意思を何度も伝えている。

また、9月のVogueインタビューでも「私は働くのが好きなんです。読者の皆さんと同じように私は働く女性です。(教職は)私の情熱。愛してやまない仕事です。それは私のキャリア、そして人生で最も大切なことなのです。私は仕事を続けながら、ファーストレディとしての仕事をやれると感じています」と語っている

ジル氏は、夫のジョー氏が副大統領だった時も、ヴァージニア州北部のコミュニティカレッジでフルタイムで教え続けていた

セカンドレディをしながら教え続けたいと伝えた彼女に、補佐官の一人は「そんなことは不可能」と驚いたが、ジル氏は「両方できる」と答えた。

デラウエア州ウィルミントンにある学校を訪れ、教師らと安全な学校について話したジル・バイデン氏(2020年9月1日)
デラウエア州ウィルミントンにある学校を訪れ、教師らと安全な学校について話したジル・バイデン氏(2020年9月1日)
Alex Wong via Getty Images

ファーストレディに求められてきた理想像

結婚した女性が仕事をするのは、2020年の今では革命的なことではない。

しかしファーストレディがホワイトハウスで求められてきた役割を考えると、ジル・バイデン氏が仕事を続けるのは画期的な一歩だ。

ホワイトハウスの中で、ファーストレディに期待されてきたのは夫を支えること。また子どもや食料、病気の問題など“女性が得意だろう”と固定観念を持たれがちな分野での活躍も求められてきた。

さらに、ホワイトハウスの切り盛りの仕方も評価され、イベントホストの腕前や優雅な装いなども注目される。現ファーストレディのメラニア・トランプ氏はこれまでに、ドレスやクリスマスデコレーション、ガーデニングについて、多くの意見や批判を受けてきた。

メラニア・トランプ氏の元シニアアドバイザーが秘密裏に録音していた会話の中には、メラニア氏が「私はクリスマスの準備をやっています。誰が、馬鹿みたいなクリスマスやデコレーションを気にするっていうの。だけど私はやらなければいけないんですよね?」と怒りをぶつける様子が記録されていた。

大変な仕事であるにも関わらず無報酬のファーストレディ。しかし彼女たちが最も批判されるのは、ファーストレディとして期待される“域”を飛び出し、政治に近づいた時だ。

エレノア・ルーズベルト氏は、率先して人権活動や公民権活動に携わったことを、夫の閣僚メンバーから激しく批判された。ナンシー・レーガン氏も、、夫の政権に関与したことを問題視された。

ヒラリー・クリントン氏への批判をあげるときりがないが、彼女はファーストレディとして、ある程度まで医療制度改革に関与した。

期待される“域”にとどまっていたとしても、批判されることはある。非常に厳しい基準が求められるファーストレディたちは、綱渡りするように職務をこなし、時に板挟みになる。

成功しなければならないが、野心的になってはいけない。美しくなければいけないが、目立ちすぎてはいけない。上品に話さなければいけないが、声をあげすぎてはいけない。自信を持たなければいけないが、尊大さはNG――。

前ファーストレディのミシェル・オバマ氏は、その全てに直面した上に、初の黒人ファーストレディとして、人種差別や性差別にも対応しなければならなかった。

作家のケイト・アンダーソン・ブロワー氏は、2016年のニューヨークタイムズへの寄稿で「率直な発言をしすぎだ、発言をしなさすぎだ、コントロールしようとしている、意欲が足りない、などと叱責を受けたファーストレディを挙げるときりがない」と書いている。

ネバダ州ラスベガスのコミュニティイベントに参加したジル・バイデン氏(2020年2月21日)
ネバダ州ラスベガスのコミュニティイベントに参加したジル・バイデン氏(2020年2月21日)
Ethan Miller via Getty Images

脇役を務めなくていい

近年、女性の多くは仕事をしており、保守派の人たちの間でも「女性は専業主婦が良い」という考えは、減りつつある。

夫がアーカンソー州知事時代に、弁護士の仕事を続けて批判されたヒラリー・クリントン氏が、「私は家でクッキーを焼いてお茶を飲んでいることもできたが、仕事を続けることを選んだ」と述べた時代から、世の中の空気は変わっているだろう。

しかしそれでも、女性が働くことには多くの「ただし書き」がついている。

もしジル氏が幼い子どもの親だったら、仕事を続けるという彼女の選択は強い批判を受けていたかもしれない。幼い子どもがいる女性に、社会はいまだに母を優先するように期待している。

また、ジル氏が教師ではなく、法律事務所や製品工場、より営利目的の仕事をしていたら、職務の継続に対する批判が起きただろう。

教職はずっと、女性に適した仕事として受け入れられてきた。そこには、女性は子どもの扱いや他人の世話がうまく、気遣いができるという女性への固定観念も存在する。元教師だったローラ・ブッシュ氏は、ファーストレディ時代の教育へや識字率向上などへの貢献が讃えられた。

ジル氏が教職を続けることを、アメリカン大学・女性と政治研究所エグゼクティブディレクターのベッツィー・フィッシャー・マーティン氏は「ファーストレディの職務と倫理面でぶつかるような仕事をする状況は避けたいでしょう。教職は、彼女がファーストレディとしてやりたいと思っていることをよりサポートする仕事です」と語っている。

それでも、ジル氏が仕事を続けることには大きな意味があると、ヴァージニア大学政治学教授のジェニファー・ローレス氏は話す。

「ジル・バイデン氏が自分の仕事を続けることは、『夫がどれだけ成功し、権力があり、重要な立場にいてもあなたは自分のキャリアを諦めたり、脇役を務めなくていい』という強いメッセージを、女性に送ります」

ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。