受精した瞬間から、中絶禁止。オクラホマで可決された厳しい法案を副大統領が強く批判

複数の州で中絶規制法案が可決されており、カマラ・ハリス副大統領は「女性を罰し、コントロールする」と指摘し、問題視しています

アメリカ・オクラホマ州議会で5月19日、受精後の中絶を禁止するという、厳しい内容の法案が可決された。

ケビン・スティット州知事は、中絶に関連するどんな法案にも署名すると公言しており、署名されれば即日効力を発揮する。

オクラホマ州議事堂の前で、中絶禁止に反対する人々(2022年4月13日)
オクラホマ州議事堂の前で、中絶禁止に反対する人々(2022年4月13日)
via Associated Press

どんな内容なのか

可決された法案は、受精した後のほとんどすべての中絶を禁止する。そして、すべての市民に対し、中絶手術に携わった医師や看護師、そして中絶を「手助け」した人を、訴えるのを認める。

例外は妊娠を続けることで妊婦の命に危険が及ぶケースで、レイプや近親相姦による妊娠は、その犯罪が当局に通報されている場合のみ、中絶が認められる。

訴えた市民は、勝訴した場合1万ドル以上の“報奨金”が与えられ、精神的苦痛を含む補償的損害賠償を請求できる

その一方で、法律が施行されれば、訴訟を恐れる州内のクリニックが中絶手術をやめるとみられており、例外が認められた女性たちがどこで中絶を受けられるのかは不明だ。

オクラホマ州のケビン・スティット州知事
オクラホマ州のケビン・スティット州知事
via Associated Press

なぜ厳しい法律が認められるのか

今回のオクラホマ州の法案は、2021年に施行されたテキサス州法をモデルにしている。

テキサス州は妊娠6週目以降の中絶を禁止し、違反した場合、中絶を施した医療関係者や、中絶を「手助け」や「ほう助」した人を一般市民が訴えられるようにした。

アメリカでは1973年のロー対ウェイド判決で、中絶が憲法で保障された権利として認められている。

しかしテキサス州の法律は、州当局ではなく個人が告発するというやり方で、中絶を規制した。最高裁が2021年9月にこの仕組みを認めた後、共和党が主導する他の州でも、類似の法案が作られるようになっている

また、テキサス州の法律は妊娠6週目以降の中絶を禁止している一方で、オクラホマ州の場合は、受精後の中絶禁止というさらに厳しい内容になっている。

オクラホマ州議事堂の前で、中絶規制に反対の声を上げる人々(2022年5月3日)
オクラホマ州議事堂の前で、中絶規制に反対の声を上げる人々(2022年5月3日)
via Associated Press

このオクラホマ州議会の決定を、カマラ・ハリス副大統領は「最も行き過ぎた法律」と強く批判。

「考えてみてください。受精した瞬間から中絶が禁止されるのです。由々しき内容で、この国の新たな危険な法律です」と述べた。

ハリス氏は、テキサスやオクラホマでなどで様々な州で可決されている中絶規制法案を「女性を罰し、コントロールする」と指摘し、問題視している。

ハリス氏のツイート:今日、オクラホマで受精の瞬間から中絶を禁止する法案が可決されました。過激な議員による女性へのあからさまな攻撃です。今まで以上に、地方や州、連邦レベルで、中絶擁護派の議員たちを選ぶことが急務になっています

今回の法案は、オクラホマ州議会で可決された3つ目の中絶規制法になる。

スティット知事は5月初めに、テキサス州と同じ、胎児の心臓音が聞こえた後(妊娠約6週間)の中絶を禁止する法案に署名した。

さらに、2022年夏に施行される予定の法案では、中絶が犯罪とされ、手術した人に最大10年の懲役が科される。この法案はレイプや近親相姦の例外はない。

アメリカでは5月2日に、連邦最高裁がロー対ウェイド判決を覆す見通しであることを示した草案が流出した。

最高裁は、草案は「最終的な立場を表すものではない」としつつも本物だと認めており、中絶の権利が奪われる危機感が高まっている。

ロー対ウェイドが覆された場合、複数の州で中絶が全面的に禁止されるとみられている。

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