『FACTFULNESS』はうまく読み飛ばせ。年間700冊を読む書店員の私がベストセラーから得たもの

《本屋さんの「推し本」 未来屋書店・宮田直樹の場合》

「世界は、あなたが思っているほど悪くはないのかもしれない」

『FACTFULNESS』との出会いは、何百冊とあるビジネスコーナーのなかで、この本が輝いて見えたからだ。…と言えたらカッコよかったのだけれど、実際は「ビル・ゲイツ大絶賛」と帯に書いてあるのが見えて、とくに何も考えずにレジに持っていったのだった。

購入後に「100万部超え」や「ベストセラー」といった文言が帯に書かれているのに気付いたが、私にとってはビル・ゲイツ氏が大絶賛していることのほうが魅力的だった。

読書家として知られるビル・ゲイツ氏は自身のブログ「ゲイツ・ノート」で、読んだ本を定期的に紹介している。仕事のインスピレーションを本から得ているという彼が、『FACTFULNESS』のどこに魅力を感じたのか、知りたくなったのだ。

この本に書かれているのは、ざっくり言えば、我々は世界に対して誤った認識を持っているから、正しく見るスキルを身につけましょう、ということだ。

著者曰く、人間には、例えば“富裕層VS貧困層”、“保守VSリベラル”といった具合に世界を分断して見てしまう「分断本能」がある。あるいは、世界はどんどん悪くなっていると感じてしまう「ネガティブ本能」。

私自身は「単純化本能」を知ることで、物事の見方は1つではなく、人の数だけあるということを実感した。

というのも、自分で企画・展開したフェアで、私が伝えたかったものがお客様にうまく伝わらないということがあった。もちろん私の力不足も原因の1つなのだけれど、それ以前に、「人の数だけ見方がある」というラディカルな問題を無視してしまっていたことに気づいた。

つまり、独りよがりのフェアになってしまっていたのだ。

急いでPOPやら何やらを練り直し、なんとか以前よりも多くのお客様に伝わるものが出来上がった(と思う)が、「単純化本能」について知らなければ、いまでもあのフェアは誰にも伝わることがなかったかもしれない。

このように、人々が世界を「正しく」見ることを妨げている10個の思い込みが紹介されている。

読み終わるころにはきっと、いや絶対、世界の見え方がガラッと変わっているはずだ。 

ハンス・ロスリングほか『FACTFULNESS ファクトフルネス』(日経BP)

100万部超えのベストセラーで、全国の書店のビジネス書ランキングで1位を飾る本書。年間700冊の本を読む自称・読書家である書店員の私が、『FACTFULNESS』をどう読み、何を感じたか、その魅力について書いてみようと思う。

まず、この本を読む上での最大のポイントをお伝えしたい。

私は本書を全部読んではいないのだ。

これは、この本に限らずたくさんの本を読みかじるための私の日常的な戦略でもある。

私はいつも、どれだけ速く読むかではなく、どれだけ“読まないか”を重視している。読むべきポイントを見極め、読まなくていい箇所は徹底的にはぶくのだ。

本書ではイントロダクションと第1章、第2章は精読、以降は流し読みし、各章末のまとめだけを読んで本を閉じた。

しかし、ポイントはきっちりと拾えているはずだ。本書に限らず、小説以外の本は基本的にすべて読む必要はない。自分にとって必要な箇所だけ読むようにしよう。まったく理解できないページ、つまらない行を読んでいる時間はあなたにはないはずだ。

少し話が脱線してしまったが、私が感じた魅力は2つある。

1つ目は、筆者の熱い思いが伝わってきたことだ。私たちがあまりにも多くの物事を悲観的に捉えている事実に著者は我慢ならなかった。そして、正しく見るスキルを教えるべく立ち上がり、本書が生まれた。その熱い思いは、国境を越えて多くの読者の心に届いた。もちろん私の心にも。

2つ目は本の構造(組み立て)だ。本書では難しい経済用語や統計用語はまったく出てこない。誰にでも、直感的に内容を理解できるように書かれている。ここはかなり重要なポイントだ。

誰にでも読むことができれば、より多くの人が世界を正しく見るきっかけになるからだ。

ついでに、私が紹介した「全部読まない読書術」も併せて試していただけると嬉しい。分厚い本を横目に気負って“積ん読”せずとも、イントロと数章でエッセンスは掴める。

FACTFULNESSの入り口にたち、世界を正しく見る力を身につけてもらいたい。それが著者と、世界の希望だから。

連載コラム:本屋さんの「推し本」

本屋さんが好き。

便利なネット書店もいいけれど、本がズラリと並ぶ、あの空間が大好き。

そんな人のために、本好きによる、本好きのための、連載をはじめました。

誰よりも本を熟知している本屋さんが、こっそり胸の内に温めている「コレ!」という一冊を紹介してもらう連載です。

あなたも「#推し本」「#推し本を言いたい」でオススメの本を教えてください。

推し本を紹介するコラムもお待ちしています!宛先:book@huffingtonpost.jp

今週紹介した本

ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド『FACTFULNESS ファクトフルネス』(日経BP)

今週の「本屋さん」

宮田直樹(みやた・なおき)さん/未来屋書店レイクタウン店(埼玉県越谷市)

どんな本屋さん?

未来屋書店イオンレイクタウン店は、国内最大級のショッピングモール、越谷レイクタウンの専門店街にある本屋さんです。広い店内と見やすいレイアウトで、いつも老若男女のお客さまで賑わっています。見どころは、今回原稿を寄せてくれた新書文庫担当・宮田さんの、思い切った仕掛けの数々。その時々で、おすすめの商品が多面展開されていて、きっと何か面白い本に出会うことができます。

撮影:庄司知世(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

(企画協力:ディスカヴァー・トゥエンティワン 編集:ハフポスト日本版)

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