PRESENTED BY 生活クラブ

地方創生で注目の山形・庄内地域。「産地で暮らす魅力」を移住者と生活クラブに聞いた

50年前から、庄内の生産者らと組合員が交流してきた「生活クラブ」。移住や地域交流の新拠点をオープンし、ローカルSDGsの全国発信を目指す。

人気ホテルやベンチャー企業が集まり、地方創生の成功例として注目される山形県北西部・庄内地域。同地の酒田市に、2023年6月、移住・交流拠点「TOCHiTO(とちと)」がオープンした。移住者たちの素顔や独自の取り組みをレポートする。

「TOCHiTO」 が目指す“地域コミュニティづくり”

居住棟、交流棟、中庭の3エリアからなる「TOCHiTO」。当初は高齢者向け住宅を計画していたが、話し合いにより、多世代が暮らし、交流する拠点に。
居住棟、交流棟、中庭の3エリアからなる「TOCHiTO」。当初は高齢者向け住宅を計画していたが、話し合いにより、多世代が暮らし、交流する拠点に。

「TOCHiTO」の名の由来は、“土地と暮らす”。酒田市、食材宅配の生協「生活クラブ」、生活クラブの庄内の提携生産者、地元の企業、大学などが持続可能な地域づくりを目指し、2016年から計画を進めてきた。

施設は、賃貸で入居できる居住棟「TOCO」、パブリックスペースやレンタルオフィスがある交流棟「COTO」、家庭菜園やイベントができる中庭「CHiTO」からなる。

「TOCHiTO」のエントランスと居住棟「TOCO」。18戸(1K〜2LDK、家賃5万3000円〜7万8000円、共益費8000円)に16世帯が移住。1部屋はお試し宿泊用、もう1部屋はキャンセルが出たため入居者募集中(取材時)。
「TOCHiTO」のエントランスと居住棟「TOCO」。18戸(1K〜2LDK、家賃5万3000円〜7万8000円、共益費8000円)に16世帯が移住。1部屋はお試し宿泊用、もう1部屋はキャンセルが出たため入居者募集中(取材時)。
Photo:Kaori Nishida

移住者たちは、援農やビジネス開発、地域交流などを通じて地域コミュニティへの参加を始めている。常駐のコーディネーターが、就職や日々の暮らしをサポートしていく。

「新しいことに挑戦したかった」消費者から生産者に

2023年4月に単身移住した代田佳子さん。「庄内のシンボル『鳥海山』の美しさ、おいしいご飯、伝統文化…。移住の魅力はたくさんあります」と語る。

代田佳子さん:埼玉県から移住し、生活クラブの豚肉の生産者である平田牧場に就職。仕事後や休日は、趣味のバドミントンや登山などアクティブに活動する。
代田佳子さん:埼玉県から移住し、生活クラブの豚肉の生産者である平田牧場に就職。仕事後や休日は、趣味のバドミントンや登山などアクティブに活動する。
Photo:Kaori Nishida

「登山が趣味なこともあり、以前から地方移住に興味を抱いていました。でも、管理の難しい古民家や、生活しづらい立地はピンと来なくて」

「『TOCHiTO』は、鳥海山や海が近いこと、私自身、長年利用してきた生活クラブの生産者がいる地域であること、そして生活しやすい市街地の新築住居に住めることが移住の決め手。ここだ!と思って、募集開始日に申し込みました」

明るい日差しが差し込む居住棟の一室。
明るい日差しが差し込む居住棟の一室。
Photo:Kaori Nishida

代田さんは、酒田市役所のUIJターン人材バンクの紹介により、現在、「平田牧場」に勤務。週5日、母豚と生後間もない子豚の世話に勤しむ。


この仕事を選んだ理由を尋ねると、「農業やドラッグストア勤務の経験もありました。でも、新しいことに挑戦したかったんです」と笑顔で答えてくれた。

平田牧場は、豚がストレスを抱えにくい環境づくりを重視。エサに飼料用米を与えるのが特長だ。生活クラブは、飼料用米の開発を米の生産者と共に取り組み、地域資源の循環や水田保全などを進めている。
平田牧場は、豚がストレスを抱えにくい環境づくりを重視。エサに飼料用米を与えるのが特長だ。生活クラブは、飼料用米の開発を米の生産者と共に取り組み、地域資源の循環や水田保全などを進めている。

「今は、新しいことを覚えるのに精一杯。一生懸命世話をしても、生まれてすぐに命を落とす子豚がいることも知りました…。これまではいち消費者でしたが、生産者のリアルを学んでいるところです」

職場では、地方ならではの喜びもある。同僚が、郷土料理の「孟宗汁(もうそうじる:孟宗竹のたけのこを使った郷土料理)」を昼休みに振る舞ってくれたことも。敷地内で山菜のワラビ採り、という贅沢も経験した。

鳥海山は、庄内地域のシンボル的存在。
鳥海山は、庄内地域のシンボル的存在。

今日は夕陽がきれいそうだなと思ったら、仕事帰りに山や海へ立ち寄ることも。趣味の登山、地域のサークルでのバドミントン、伝統工芸の『槇島ほうき』づくり…。毎日、楽しく過ごしています」(代田さん)

「TOCHiTO」の向かいには、国指定史跡「山居倉庫」がある。1893(明治26)年に建てられた米保管用の倉庫で、観光スポットとして賑わう。周辺には大学やスーパーマーケット、平田牧場の飲食店なども。
「TOCHiTO」の向かいには、国指定史跡「山居倉庫」がある。1893(明治26)年に建てられた米保管用の倉庫で、観光スポットとして賑わう。周辺には大学やスーパーマーケット、平田牧場の飲食店なども。
Photo:Kaori Nishida

今後も、移住者や地域の人たちとの手巻き寿司づくり、海釣り、じゅんさい採りなど、プランが目白押しだという代田さん。最後に、「移住に興味がある人には、難しく考えず、交流会などに参加してみてほしい」と話してくれた。

二拠点生活、農業への参加…多様な移住者たち

そのほかの移住者たちも、それぞれのスタイルで移住生活を楽しんでいる。

フリーランスとして二拠点生活を送る人。ルームシェアを始めた2人…。

生活クラブ主催の「庄内での暮らしを検討する会」などで知り合い、意気投合したことがきっかけでルームシェアを始めた藤田篤子さん(左)、奥田美奈子さん(右)。藤田さんは約16年間、会社員として介護士やケアマネジャーに従事。フリーランスの介護士として約4年経て、より自分らしい暮らしにシフトするため、移住を決意。奥田さんはフリーランスで産学連携事業に従事し、二拠点生活を送る。
生活クラブ主催の「庄内での暮らしを検討する会」などで知り合い、意気投合したことがきっかけでルームシェアを始めた藤田篤子さん(左)、奥田美奈子さん(右)。藤田さんは約16年間、会社員として介護士やケアマネジャーに従事。フリーランスの介護士として約4年経て、より自分らしい暮らしにシフトするため、移住を決意。奥田さんはフリーランスで産学連携事業に従事し、二拠点生活を送る。
Photo:Kaori Nishida

小学校教員を定年退職後に移住し、パプリカなどの収穫手伝いを始めた人も。

週3日、パプリカの収穫など、産地での農作業に励む朝倉深太郎さん、富士子さん。深太郎さんは、東京都で小学校教員をしていた。「庄内は能や歌舞伎といった伝統芸能も魅力。地域の人との文化交流も楽しみ」と語る。
週3日、パプリカの収穫など、産地での農作業に励む朝倉深太郎さん、富士子さん。深太郎さんは、東京都で小学校教員をしていた。「庄内は能や歌舞伎といった伝統芸能も魅力。地域の人との文化交流も楽しみ」と語る。
Photo:Kaori Nishida

生活クラブの担当者は、「移住者たちが、地域の人と共に自分らしい暮らしを実現する手伝いをできれば」と話す。

猫と暮らしたい人のためにペット飼育OKにしたり、障がいのある方も来訪しやすいようエレベーターを設置したり。TOCHiTOプロジェクトを実現するにあたり、地域事業者と共に試行錯誤を繰り返しながら皆さんの思いを、できる限り形にしてきました」

移住者たちのために採用されたシェアカー。環境に配慮し、電気自動車を採用。
移住者たちのために採用されたシェアカー。環境に配慮し、電気自動車を採用。
Photo:Kaori Nishida

「移住者たちが、フードロスの解決など、地域の資源を有効活用するコミュニティビジネスを始めようとしています。よい事例として発信していければ」と意気込みを語ってくれた。

環境省グッドライフアワード受賞。注目を集めるワケ

1965年設立、組合員数約42万人。安全や環境に配慮した品物の共同購入を続けてきた生活クラブが、今、ここまで地域でのコミュニティづくりに注力する理由はなんだろうか。そこには、「つながるローカルSDGs」というビジョンがある。

つながるローカルSDGsは、食(Food)、エネルギー(Energy)、福祉(Care)を自給し、地域同士の資源をつなげてさらに循環させていくことで、持続可能な産地づくりを目指す構想。その実践のさきがけになっているのが、ここ庄内地域だ。

2019年には、生活クラブと提携生産者、地元の有志の人々が山形県遊佐町に「庄内・遊佐太陽光発電所」を建設。その収益の一部を地元自治体に寄附することで、「庄内自然エネルギー発電基金」を酒田市や遊佐町など、5つの団体と共に運営している。この基金の一部から庄内地域のコミュニティづくりや第一次産業での技術導入のチャレンジなど、持続可能な地域づくりのための事業に助成を行なっている。

遊休地を活用した、庄内・遊佐太陽光発電所。
遊休地を活用した、庄内・遊佐太陽光発電所。

そのほかにも、水田の維持、畜産の飼料自給力アップのための飼料用米開発地域生協づくりなども進めてきた。今回オープンした「TOCHiTO」は、地元の企業などが入るシェアオフィスや交流スペースも併設されており、庄内地域の食や産業を通じ、地域の人と県外から訪れる人をつなぐための新たな地域コミュニティ拠点となる。

2022年、庄内地域での一連の取り組みは、環境省グッドライフアワードで「環境大臣賞 優秀賞」を受賞。全国の注目を集めている

庄内・遊佐町で減農薬・無農薬米を生産する今野修さん。「アイガモロボ」を使った生産者の負担軽減、飼料用米の品種改良なども試みる。アイガモロボの導入実験にかかる費用なども、「庄内自然エネルギー発電基金」からの助成が行なわれている。
庄内・遊佐町で減農薬・無農薬米を生産する今野修さん。「アイガモロボ」を使った生産者の負担軽減、飼料用米の品種改良なども試みる。アイガモロボの導入実験にかかる費用なども、「庄内自然エネルギー発電基金」からの助成が行なわれている。

“消費者”“生産者”という一次的な関係性を超えて、地域づくりを実践してきた生活クラブと庄内地域。今後は、「TOCHiTO」が移住・交流の新たな拠点となることで、移住者たちや地域の住民たち、産地での暮らしや新しい働き方に興味をもつ様々な地域の人たちによる庄内地域での新たなコミュニティの形成が見込まれる。そして、地域のコミュニティがにぎわうことで、持続可能な産地づくりをめざす。このような地域資源の循環の輪が庄内地域を越えて広がり、さらに日本の各地域同士をつないでいく。そんな未来を生活クラブは描いている。

交流会やお試し宿泊も

今回、移住者や生産者たちの話を聞く中で特に印象に残ったのは、「自分らしさ」や「挑戦」を、皆が当たり前に重視し、持続可能な社会づくりに参加していることだ。年齢や経験は関係ない。

もう1つ心に残ったのが、「生活クラブの組合員との交流を通じて、自分の米づくりが誇れる仕事だと気づいた」という米生産者・今野さんの言葉。庄内では、人々の思いや情熱こそが、サステナイブルな好循環を生み出していると感じた。

お試し住宅(イメージ)
お試し住宅(イメージ)

今後は、「現地見学会」「交流会」、シェアハウスに興味のある人向けのイベントなどが、8月、11月に開催予定(一部オンラインあり)。「TOCHiTO」内にある、お試し住宅への宿泊も受け付けているので、興味を持った人は、ぜひ参加してみてほしい。

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