家族の形が37種類あるデンマーク。家族が目まぐるしく変化する日常と人々の心

子どもの心のケアや“ボーナスママ”の複雑な心境。──家族のかたちが多様化した社会でも、まだまだタブーや、向き合うことが難しい問題は存在している。
Olha Khorimarko via Getty Images

「家族」というものを思い浮かべるとき、どんな形をイメージしますか。

デンマークでは、家族といえば核家族が中心です。でも、二人の親とその子どもで構成される家族はたった55%。その他は、一人親と子どもの家族、一人親が子どもを連れて再婚した家族、夫婦それぞれが子どもを連れて再婚した家族…。更に、二人の親の中には、男女だけではなく、同性の婚姻カップルや事実婚なども含まれています。

少し、混乱してきたでしょうか。別の言い方をすると、デンマークには37種類の家族(核家族)があると言われています。

それを理解するために、まず、デンマークで子どもをもつカップルが離婚をした場合、一般的に子どもたちがどのような暮らしをしているかを説明をした方が良いかもしれません。

詳細はもちろん各家庭によって異なりますが、デンマークでは、離婚後も共同親権であることが一般的です。つまり、カップルが事実婚や婚姻関係を解消しても、両親とも親であることは変わらないのです。

そして例えば離婚後も、双方の親の住所と連絡先が学校のイントラネットには登録されますし、行事や面談等の連絡も全て両親に届きます。

子どもたちは、一週間ごとに両親の家を交代で訪問することになります。子どもの住所は片方の親の住所であることが多いですが(これは昨年法改正され複数登録が可能に)、現実としては、双方の親の家に住んでいることになります。

一週間ごとに両親の家を行き来する形を7/7と呼ぶとすれば、2/12、4/10、5/9という日数配分で暮らしている子どももいます。年齢が上がるとともにこの配分も変わっていき、最終的には片方の親のところのみで暮らす子どももいます。

デンマークでは離婚は珍しい話ではありません。80年代から常に婚姻関係の40%以上が解消しています。2012年には初めて50%を超えた離婚率ですが、昨年はなぜか36%まで下がりました。筆者の職場や子どもたちの保護者を見ても、離婚や再婚は珍しいことではなく、とてもよくある話です。 

この家族の多様性は様々な場面で考慮されています。それは例えば、子どものための絵本や児童書でもよく見られます。本の中に片親しか登場しないもの(住居の作りや登場人物から明らかに一方の親しかいない描き方)、双方の親の家を行き来することが前提となっている子どもの話、自分の親に恋人ができる話、その人と、その子どもも同居するという状況、そして新しい兄弟姉妹が生まれる話など。

家族がいったん解体しても、新しい家族ができ、その形がまた変わっていく、これはデンマークの子どもたちの日常ではよくあることとはいえ、とても大きな変化でもあります。それを物語に反映し、彼らの生活や心の動きに寄り添う作品は数多くあります。

また、家族や親の状況が目まぐるしく変化するなかで、心がついていかない子どもたちのために、子ども同士で語り合える場を提供している自治体もあります。同じ境遇の子どもたちが定期的に集まり、対話やイベントを通じて、互いに気持ちを共有できる場で、当事者である子どもたちだけでなく、親からもとても評価されています。

大人が向き合う課題もあります。デンマークは共同親権であることから、大人も男女ともに、子どものいるパートナーと同居をしたり、結婚することもあります。

34歳のトリーネは、2歳と5歳の子どもがいる男性と同居することになり、子どもたちのボーナスママになりました。ボーナスママとは、子どものいる男性と一緒に暮らす場合の女性の呼称のひとつです。

男性の子どもたちは母親の家でも暮らすので、その子たちと年中共に生活しているわけではありませんが、子どもたちが父親と暮らす期間は、ボーナスママとしての役割があります。でも彼女は子どもたちにとって、血のつながった母親ではない。その人は他のところにいて、子どもたちとつながりがある。

だから、トリーネは母親として、子どもたちをしつけたり、叱ったりすることはないけれど、生活上で必要な役割はしなければならないと語ります。そして、子どもたちはかわいいけれど、自分の子どもではないし、気持ちの上でも、時に子どもたちとどういう距離感を保ったら良いのか難しかったと語ります。

白雪姫やシンデレラなどのおとぎ話に出てくる継母は、得てして性格が悪く、意地悪な女性として描かれることが多いですが、ボーナスママのこういった複雑な気持ちは、女性として愛情が欠けているわけでも、他人の子どもを受け止める母性本能が欠けているわけでもない、と断言するのは、心理カウンセラーのシア・ホルム。

彼女は再婚子連れ家庭で育ち、自身も離婚後、子どもとともに新しいパートナーシップを築いた立場として、新しい家族構築に関するカウンセリングをしている女性です。ホルムによると、女性は、女性というだけで、誰の子どもであっても愛情をもって受け入れられるのが当然だ、という社会的期待が存在すると指摘します。

人類学者のドーテ・ダウゴーも、パートナーの子どもに対し、女性側が複雑な思いを持つこと、そしてそれを言葉にすることが、社会の中でタブー化されていると指摘します。彼女はボーナス親の視点から見た新しい家族の構築について、一切の調査や研究がなされていなかったことにも驚きを隠せなかったと語ります。そして自身もボーナスママとなった彼女は、同じ境遇の女性たちが語り合える場を作りました。

「まず言っておきたいことは、この会に不機嫌でヒステリックな女性たちを集めて、被害者の会を結成したいっていうことではないんです。そうではなくて、新しく築いた子どものいる家庭が向き合う困難について、具体的に取り上げて話し合える場を作りたかったということです。

一般的な核家族ではないからこそ、どういう家族でありたいか、ボーナスママがどんな役割をするかについて、自分達で言葉にして話せる場です。もしそれが、その女性だけの問題であれば、彼女だけがカウンセリングでも受ければ良いんです。でもこれは家族として、パートナーとともに向き合うべき課題と理解してほしい」とダウゴーは語ります。

そして彼女は、この会を夫婦で互いの役割や課題についてオープンに話せる場としても使ってほしいと語ります。

自分が生まれた家族、大人になって築いた家族が永遠のものではないことがここまで一般化している社会でも、まだまだタブーや、向き合うことが難しい問題は存在しています。それでも、人々が少しずつ声を出して、幸せに生きていくために行動する姿はとても力強いものです。

どんな生き方であっても、子どもたちとパートナーとの新たな生活を幸せなものにしたいと願い、行動する人々の生き方があります。

 (2020年02月24日のさわひろあやさんnote掲載記事「37種類の家族より転載)

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