WORLD
2020年01月31日 05時49分 JST

そして、ゴーン被告の顔色は白くなった。保釈中に面会したアメリカ人記者が伝えたこととは

2019年7月末 グランド ハイアットのレストランで保釈中のゴーン被告に会った、エーデルスタイン氏。日本に詳しい調査報道記者である彼は、ゴーン被告に何を伝えたのか。

Getty Images
日産元会長 カルロス・ゴーン被告 レバノンでの記者会見場にて 2020年1月8日

保釈中に日本から逃亡し、1月8日にベイルートで記者会見を開いた日産自動車の元会長、カルロス・ゴーン被告。年末年始にも関わらず、日本中の注目を集め、世界でも大きく報じられた。

2019年4月末の保釈から12月末の逃亡まで、ゴーン被告は何をしていたのか?どんな様子だったのかーー? 保釈中のゴーン被告と会ったアメリカ人ジャーナリストのジェイク・エーデルスタイン氏に、ハフポスト日本版は話を聞いた。

エーデルスタイン氏は日本の大手新聞社で長年記者として勤務し、現在はフリーランスで国内外メディアに執筆している。また、これまでのゴーン被告の事件を詳しく取材してきた1人でもある。

 

2019年7月末 グランド ハイアット「フレンチ キッチン」

Jun Tsuboike / HuffPost Japan
エーデルスタイン記者とゴーン被告が面会した「フレンチ キッチン」

※以下の記述はエーデルスタイン氏がハフポスト日本版に共有してくださった描写や情報に基づくものです。

エーデルスタイン氏がゴーン被告と会うきっかけとなったのは、ビジネス誌「キャピタル」での解説記事企画。その記事の執筆の為に、編集長から「ゴーン被告の現在の生活」についての取材を求められ、第三者を通じて面会が実現した。 

エーデルスタイン氏は過去に、マウントゴックス事件で逮捕された、同社元CEOのマルク・カルプレス氏について取材をしていた。カルプレス氏もまた、日本の司法に問われた外国人経営者であり、ゴーン被告も興味があったのだろう。第三者によると、ゴーン被告はカルプレス氏についての話も聞きたがっており、喜んで会う、と承諾したという。

ゴーン被告と会う約束をしたのは7月18日。しかし当日、京アニ放火事件が発生した。記者であるエーデルスタイン氏はその取材のため約束をキャンセルせざるを得なかったが、再度スケジュールを調整し、同月末に面会が実現した。 

2019年7月末、グランド ハイアット2階のレストラン『フレンチ キッチン』で、ついにゴーン被告と会った。同席したのは、彼と保釈中のゴーン被告、ゴーン被告の妻ではない家族の1人、合計3人だった。

その時のゴーン被告の説明によると、この面会は条件付きであり、検察に事前に報告しなくてはならないという。

面会条件は2つ。

1:日本国内で裁判が控えている期間中のため、公式インタビューではない。

2:ゴーン被告の言葉を直接引用してはいけない。

その為、あくまでも活字にする目的のあるインタビューではなく、カルプレス事件についての話し合い、ということでの面会だった。

人目を気にせずに話せるよう、タバコは吸わなかったが仕切られた喫煙席に座った。

以下は、エーデルスタイン氏が見て感じたゴーン被告の様子だ。

現れたゴーン被告はラフな服装をしており、髪の毛には白髪も目立つ。 一方で、保釈された時の映像と比べると少し元気が出て、顔色が良くなっていた。実際、パーソナルトレーナーをつけて体力づくりをしているそうだ。

会話の最初は落ち着きなく、苛立ち、貧乏ゆすりもしていた。彼は尾行されており、それを気にしていたようだ。尾行しているのは警察なのか、警備会社なのか、ゴーン被告もわからなかったという。しかし、面会が監視されていないことが分かると、少し安心したようだった。 

Jun Tsuboike / HuffPost Japan
ジェイク・エーデルスタイン氏(左)と、彼がマウントゴックス事件について書いた「J’ai vendu mon âme en bitcoins」(邦題:「地獄の沙汰もビットコイン次第」)

記者会見では「日本が好きだ」と話していたゴーン被告だが、国内ではゴーン被告が「反日だ」「日本を嫌っている」というようなイメージを持った人もいるがー。

「日本を恨んでいるということは言わず、人生をかけて育てた会社がこんなにダメになるなんて信じられない、と今後の日産や社員、株価がどうなるかなど、会社について心配していた」とエーデルスタイン氏は語る。

また、ゴーン被告は自分が嵌められたと思っており、それに関与した政治家や、ベイルートでの会見で挙げられなかった日産内の人の名前も口にした。それについてエーデルスタイン氏は「私はそれについていう立場にないし、ゴーン被告もレバノン政府を気にして言えない」と話した。

ゴーン被告に無罪を勝ち取る可能性について聞かれた彼は、「皆無に近いでしょう」と答えた。そしてマウントゴックス事件で逮捕されたカルプレス氏の裁判や類似事件について話し、日本の検察がメンツを守るための「勝利至上主義」の性質であることを説明した。「検事は正義よりも勝ち負けが重要。不利な証拠はあっても見たくない」と話すと、ゴーン被告は少し顔色が白くなり、恐れていた事に確信を得たかのような反応をした。そして勉強熱心なゴーン被告に、エーデルスタイン氏がマウントゴックス事件について書いた著書J’ai vendu mon âme en bitcoins (英訳:「I Sold My Soul in Bitcoins」)と、元検事が冤罪を作り出した懺悔を書いた「検事失格」という本を参考に渡した。

別れ際、コーヒー代を支払ったのはゴーン被告だった。

ジェイク・エーデルスタイン氏 プロフィール

アメリカ出身の調査報道記者。1988年に19歳で来日。上智大学にて日本文学専攻。外国人初の読売新聞記者となり、10年以上勤務した。2006年から2008年にかけてアメリカ国務省主催による、「日本における人身売買実態調査」を担当。現在、アメリカのニュースサイトThe Daily Beast、国内のThe Japan TimesやZAITEN(財界展望)などに寄稿している。